
6月28日(日)の放送は「村上RADIO~アナログ・レコードで、ジャズのちょっとこのあたりを… vol.2~」をオンエア。今回の放送は「ジャズのちょっとこのあたりを…」の第2弾です。村上さんが長年愛好してきた知られざる実力派のジャズ・ピアニストの演奏をオリジナルの原盤でお届けしました。
その独特の演奏スタイルでハービー・ハンコックに多大なる影響を与えた全盲のピアニスト、クリス・アンダーソン。また、本職が精神科医という異色の経歴を持つデニー・ザイトリンなど、個性的な実力派ピアニストたちを紹介しました。
この記事では、後半2曲について語ったパートを紹介します。
「村上RADIO」
◆Ahmad Jamal Trio「Billy Boy」
アーマッド・ジャマルのピアノを聴いてください。ジャマルは1930年生まれ、1950年代から主にピアノ・トリオのフォーマットで、シカゴを本拠地として活躍し、2023年に92歳で亡くなっています。僕は2000年前後に一度、ボストンのジャズ・クラブで彼の演奏を聴いたことがあります。生で聴くとけっこうスケールの大きな演奏なんだなと感心したことを覚えています。
ジャマルは1960年代に入って四年ばかり演奏活動を中断しますが、そのあとジャズ・シーンに復帰したとき、その演奏スタイルはかなり大きく変化を遂げていました。モダンになったというかね。ビル・エヴァンズやらハービー・ハンコックといった新しく台頭してきたピアニストたちの影響をしっかり受けとめたんですね。この変化を遂げたあとのジャマルもなかなか聴きごたえがあるんですけど、今日は1950年代の彼の演奏を聴いてください。
とてもシンプルな音遣いの、独特のスタイルの演奏です。マイルズ・デイヴィスはジャマルの熱烈なファンでした。マイルズは音を節約して使う演奏家が好みで、オスカー・ピーターソンのような音の多いピアニストは苦手だったみたいです。実際に共演したこともないみたいだしね。
それではアーマッド・ジャマル・トリオの演奏を聴いてください。「ビリー・ボーイ」、1958年7月、シカゴのジャズ・クラブでのライブ録音です。
◆Denny Zeitlin「Carole's Waltz」
次はデニー・ザイトリンです。今日はなんか白人ピアニストが多いですね。すみません。わざとじゃなくて、マイナー方面っていうか、渋めのピアノ弾きを中心に集めてみたら、結果的に白人が多くなっちゃったんです。
デニー・ザイトリンさんは本職が精神科医でして、傍(かたわ)らにジャズ・ピアニストをやっておられたんですが、精神科医としてもずいぶん優秀だったようで、カリフォルニア大学サンフランシスコ校で教授をつとめておられました。ジャズマンか精神科医か、どっちが本職かよくわかりません。そんな経歴からしてもソウルフルな黒っぽいピアノ、とはいきませんが、インテリジェントで、それでいて鋭いジャズ・スピリットに溢れた、生きの良い演奏を聴かせてくれます。この方も現在88歳でご健在のようです。
僕はこの『Shining Hour - Live At The Trident』という、コロンビア・レコードから1966年にリリースされたライブ・アルバムを高校時代に買い求めまして、愛聴しました。彼の作曲した美しいオリジナル曲「キャロルズ・ワルツ」を聴いてください。10代の僕はこの曲でこの人のファンになりました。
<番組概要>
番組名:村上RADIO~アナログ・レコードで、ジャズのちょっとこのあたりを… vol.2~
放送日時:6月28日(日)19:00~19:55
パーソナリティ:村上春樹
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/murakamiradio/