高校生が企業の課題に挑む「マイナビキャリア甲子園」。第12回大会で、過去最多1万人超の頂点を目指し、コスモスイニシア代表として決勝の舞台に立ったのが、渋谷教育学園渋谷高等学校のチーム「いのへっだー」だ。
「いのへっだー」のメンバーらは6月1日、東京・港区にあるコスモスイニシア本社を表敬訪問。髙智亮大朗代表取締役社長らが設けた慰労会に参加し、「マイナビキャリア甲子園」の決勝大会で得た経験や感想について、改めて語り合った。
「いのへっだー」がコスモスイニシアを表敬訪問
「マイナビキャリア甲子園」は、企業が出題する社会課題に対し、高校生がチームを組んで解決策を提案する国内最大規模の学生ビジネスコンテストだ。第12回となる今回は、全国から過去最多となる3,151チーム、1万1,668名が参加した。
コスモスイニシアが提示したテーマは、「『住まう』『働く』『遊ぶ』の領域における社会の変化をとらえ、“10年後の新しいあたりまえ”となるアイデアを提案せよ」。この難題に対して「いのへっだー」が提案したのは、「セレンディ」というビジネスモデルだった。
街中に設置された体験型ガチャを通じ、地域の名店への訪問や特定の行動(クエスト)を促すことで、日常に「偶然の出会い」と「物語」を創出。街全体の活性化と人間らしさの回復を狙ったこのアイデアは優勝にこそ届かなかったが、審査員からは高い評価を受けることとなった。
慰労会では、髙智代表取締役社長が「いのへっだー」のメンバーらにしたためた手紙を音読。
「10年後のあたりまえを考えるという問いに唯一の正解はありません。にもかかわらず、自ら仮説を立て、社会を観察し、他者と議論しながら自分なりの答えを導き出す。このプロセスは、社会に出てから求められる力そのものです。皆さんはすでにその入り口に立っていると感じました」と「いのへっだー」が歩んだ軌跡を絶賛した。
さらに、「今回の提案には、経営に携わる立場から見ても重要な視点が3つありました」とプレゼン内容についても言及する。
「1つは『前提を疑う力』です。住宅は所有するものなのか、日常はなぜ単調なのか。こうしたあたりまえを問い直すところから新しい発想が生まれていました。2つ目は『人の本質を捉える視点』。人の行動や心理の本質を捉え、それをシンプルな仕組みに落とし込む力が際立っていました。
そして3つ目は『不動産や空間の価値を広げる発想』。皆さんは空間を単なる場所ではなく、体験や関係性、挑戦の起点として捉えていました。これらは、私たちがこれから向き合うべき極めて重要な視点です」(髙智代表取締役社長)
そのうえで髙智代表取締役社長は、「今回の結果に関わらず、自分の頭で考え、違和感を言語化し、形にする力をこれからも大切にしてください。その積み重ねが、やがて社会を動かす力になります」と前を向くよう訴えた。
表敬訪問には、大会期間中に「いのへっだー」を支え続けた社員たちも出席した。
取締役専務執行役員の岡村さゆり氏は、「どのチームもプレゼンが上手でしたが、『いのへっだー』が一番上手かった」と称賛。「なんでこんなに上手いんだろうと考えたのですが、企画の内容もプレゼンの仕方も、すごく率直に話し合っていたんだと思いました。その姿勢は仕事をするうえでも、生きていくうえでもすごく大事。すでに実践できているというのは、すごく素敵なことだと思います」と称えた。
また、経営管理本部 経営企画部門 経営企画部 総合企画課 担当課長の三木美和氏は「社内の子育て中の社員が、皆さんの提案を見て『絶対こういうのあったら使う』と感動していました。皆さんの発想は、プロの私たちにも非常に参考になりました」と、現場の視点からエールを送った。
そして、この日欠席となったメンターの日置拓磨氏からも代読メッセージが届いた。
「提案のレベルは高かったと客観的に思います。伝わりやすさというプロモーションの観点で、私の実力不足でした。正解のない社会で、自分の選択を正解にするまで粘り強く改善し続ける姿勢を、これからも大切にしてください」(日置氏)
会の終盤、「いのへっだー」のメンバーら一人ひとりがコスモスイニシアの社員らに感謝の言葉を述べた。
「自分にできるのはチームを良くすることだと思って、フラットに話し合える状況を作ることに注力しました」と振り返ったのは渡辺温大さん。「結果発表の時、自分は泣かないタイプだと思っていたのに、人生で一番ってくらい泣いてしまって。悔しいのか悲しいのかわからない複雑な感情だったんですけど、あんなに悩んで壁にぶつかった時間は、一生忘れられない貴重な記憶になりました」と素直な思いを口にした。
板橋幸志さんは「今までの人生でそこまで熱量を持って取り組んだことがあんまりなかった」と話しつつ、「(キャリア甲子園も)最初は適当にやっちゃうのかな、と思っていたけど、みんなの熱量を見ているうちに『自分は何ができるんだろう』と考えるようになって。気づいたらどんどん熱が出てきて、最後は泣いちゃうくらい全力になれました。優勝よりも、かけがえのないものを学べた気がします」と語った。
昨年も大会にエントリーした佐伯亮治さんは「去年も出場して準決勝で敗退して、今年は絶対優勝したいと思ってやってきました。この大会を通して、自分がどういう人間なのか、自分の弱みや自我について深く対話する機会がありました。今後の人生を生きていく上での糧になると思います。コスモスイニシアの皆さん、本当にありがとうございました」と謝意を述べた。
リーダーを務めた宮﨑遼太郎さんは「僕も去年、悔しい思いをして。去年は自分一人で進めてしまうようなチームを作ってしまっていたんです。今年はそれを直そうとして、チームで向き合おうとしたけど、ちゃんとできていたかはわかりません」と回想する。
そのうえで宮﨑さんは、「決勝に向けて納得のいくものを作ったけど、負けてしまって……。でも、その後の4人での話し合いも含めて、自分の弱みを知ることができました。コスモスイニシアのテーマを選んだのは、僕自身が将来興味がある領域だったから。去年超えられなかった壁を超えられたのは素直に嬉しいし、本当によくしていただいてありがとうございました」と感謝を伝えた。
最後に、司会の後藤瑠那氏から嬉しい報告が。なんと「いのへっだー」が提案したガチャ「セレンディ」について、社内で実現に向けた本格的な検討が始まっているのだという。9月か10月頃には、検証の第1段階が報告できる見通しだ。
最後に、髙智代表取締役社長からサプライズのプレゼントが贈られた。同社が運営するアパートメントホテル「MIMARU」の宿泊券と、旅行ギフト券だ。「“新しいあたりまえ”を作ったホテルをぜひ体験してほしい。みんなで振り返り、将来を語り合う場に使ってください」と髙智社長は話す。
「いのへっだー」は今なお悔しさを抱えているようだが、決勝大会に駒を進めただけでも快挙。そもそも年々ハードルは高くなっており、相対的に見ても「いのへっだー」は着実に進化を遂げている。
来年には大学進学を控えるメンバーたち、次はどんな挑戦に臨むのか。卒業旅行の夜、MIMARUの一室でまた新たな夢を語り合う4人の姿が目に浮かぶ。










