
日本代表は5月31日のキリンチャレンジカップ2026 アイスランド代表戦を小川航基の決勝弾で1−0と勝ち切り、国内での一次合宿を打ち上げた。6月2日には事前合宿地であり、第2戦・チュニジア代表戦の会場でもあるメキシコ・モンテレイへ移動。3日から現地で調整を行っている。
このタイミングで満を持してチームに合流したのが、“日本の頭脳”とも言うべき男・鎌田大地だ。5月27日のUEFAカンファレンスリーグ決勝でラージョ・バジェカーノに1−0で勝利し、頂点に立ったばかりの男がついに日本代表に加わったのである。
「カンファレンスリーグで優勝したので、練習前の円陣で喋ってくれと。彼は人前で全然喋らないんで、僕が一言、鎌田が一言という流れになりました。鎌田が喋ると本当に笑顔になりますよ。珍しいんで」と同じ愛媛県出身の先輩・長友佑都は鎌田の初日集合時の円陣の様子を冗談交じりに説明。栄冠を得て評価をさらに引き上げた“ラストピース”が参戦したことで、日本代表はようやく本番モードに突入したと言っていい。
モンテレイで公開された3・4日のトレーニングを見ても、鎌田の存在感はやはり絶大だ。特に印象的だったのが、3日ラストの3対3対3+GK+フリーマンという変則的なゲーム。この時はグループ分けが年齢順で、鎌田は長友や谷口彰悟、伊東純也らと年長組に入ってプレーしたが、的確な立ち位置とリズミカルなボールタッチで瞬く間に流れを引き寄せた。フリーマン役を担った長谷部誠コーチとの“元フランクフルトコンビ”の連携も絶妙で、「鎌田がいるだけ全然違う」という印象を見る者に与えたのは確かだ。
鎌田が欠場したアイスランド戦に目を向けても、遠藤航・田中碧のボランチを組んだ前半はやや停滞。後半から登場した瀬古歩夢はまずまずのプレーを見せたが「鎌田がいないと中盤が機能しない」という声が、あちこちから聞こえてきた。中盤の躍動感を向上させられる背番号15は、今の森保ジャパンに必要不可欠な存在なのである。
14日の初戦・オランダ代表戦まで残り約10日。準備期間は短いが、鎌田にはタフな連戦を乗り切れる強靭な肉体を作り上げてもらうしかない。もちろんケガは御法度。すでに遠藤がモンテレイ合宿スタートから2日間連続で欠席しているため、鎌田に何らかのアクシデントが起きたら、ボランチ陣が成り立たなくなる恐れも否定できない。自分がより大きなものを背負っているという自覚を前向きなエネルギーにして、残された1日1日を大切に過ごしてほしい。さらに注文するなら、欧州4度目のカップ戦タイトル獲得の勢いと経験もチームにもたらしてほしいところ。実際、鎌田のビッグゲームでの勝負強さは文句のつけようがない。
「僕自身が沢山点を取って勝っているわけではないし、ビッグクラブにいるわけでもないのに、そういう大きな舞台に勝ち進めている。そこは本当に“持っている”ということ以外、何もないと思う」と本人はしみじみ言う。「そういう中で、以前よりもカウンターに対してのリスク管理だったり、チームが勝てるようにプレーしているのも大きいのかなと感じます」ともコメント。年齢が上がるにつれて献身性やフォア・ザ・チーム精神を前面に押し出すようになり、好結果を手にできるようになったという。
こうした姿勢は日本代表にも通じるところ。一つの象徴と言えるのが、3月のイングランド戦で三笘薫と協力してボールを奪い、ショートカウンターにつなげたシーンだろう。鎌田の守備力とチーム全体を後押しするパワーから値千金の決勝点が生まれ、日本は歴史的金星を挙げた。いい感触をW杯にも持ち込めれば理想的だ。そのうえで、「あまり怖がらずにボールを受けに行ったり、思い切って自分が仕掛けたタイミングで一ついいことができると、一気に気持ち的にも楽になる」と本人は語る。守備を比重を置きつつも、攻撃で確実に違いを作れる選手というのは、世界中を見渡してもそれほど多くない。それを自然体でやってのけてしまう鎌田というプレーヤーは、敵にとって非常に嫌な選手に他ならないだろう。
「今回のW杯は2度目になりますけど、自分もいい年齢だし、いいキャリアの進め方をしているとも思うんで、積み上げてきたものをしっかりと表現できたらいいなと思っています。今回が最後(のW杯)になるかもしれないですし、そういう意味でもすごく大事な大会になるかなと思います」
4日の練習後、FIFAワールドカップ2026への並々ならぬ覚悟をにじませた鎌田。29歳であれば、まだまだ2030年大会も目指せるだろうが、鎌田が見据えるのは目の前の大舞台だけだ。オランダ、チュニジア、スウェーデンを撃破し、決勝トーナメントでも勝ち進み、最高の景色を見るべく、日本屈指の技巧派MFは持てる力の全てを注ぎ込んでいく。
取材・文=元川悦子
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