キリンビールは5月27日、「2026年下期 ビール成長戦略発表会」を開催し、10月に予定される酒税一本化を見据えた下期戦略を発表した。
フラッグシップブランド「キリン一番搾り生ビール」のリニューアルに加え、「本麒麟」を麦100%の生ビールへ刷新。多様化するビールニーズに対応しながら、ビール市場の活性化を目指す戦略を打ち出した。
酒税一本化で変わるビール市場
2026年10月に予定される酒税一本化により、ビール類市場は大きな転換点を迎える。
キリンビールでは、今後の市場について「高価格」「スタンダード」「エコノミー」「オフ・ゼロ系」の4カテゴリーに分化していくと予測。
その中でも特に、スタンダードカテゴリーは継続して成長していくと見込んでいる一方で、エコノミーカテゴリーについても、直近の物価高や節約志向を背景に、一定の需要を維持していくと考えているという。
キリンビール 執行役員マーケティング部長の今村恵三氏は、こうした市場変化に対し、「酒税一本化が決定された2016年から10年間にわたり、お客様の変化を捉えながら商品開発とブランド育成を進めてきた」と説明。
2018年の「本麒麟」、2020年の「一番搾り 糖質ゼロ」、2024年の「晴れ風」、2025年の「一番搾り ホワイトビール」「グッドエール」などを挙げ、「ビールの魅力化に取り組んできた」と語った。
また、近年のビール顧客の傾向として、「食事と一緒に楽しみたい」「リラックスしたい、リフレッシュしたい」といった需要に加え、「お酒の味わいを楽しみたい」「一人時間を楽しみたい」といったニーズも増加しているという。
今村氏は、「ビールを飲みたい気持ちやシチュエーションが多様化し、複数ブランドを購入するお客様が増えている」とした上で、「お客様の多様なニーズに応える複数ブランドをしっかり強化していきたい」と述べた。
最後に今村氏は、「いよいよ迎える酒税一本化の最終局面では、過去最大規模の全社活動とマーケティング投資で、ビールのさらなる魅力化に取り組みたい」と語った。
「一番搾り」は“飲みやすく飲み飽きない”をさらに追求
続いて、キリンビール マーケティング部 ビール類カテゴリー戦略担当 カテゴリーマネージャーの木村正一氏が、下期マーケティングプランについて説明した。
木村氏は、「高価格、スタンダード、エコノミー、オフ・ゼロ系を含めた4つのカテゴリーそれぞれで、主力ブランドの活性化を図っていく」と説明。今回の発表会では、主力ブランドである「一番搾り」と「本麒麟」の大型リニューアルが紹介された。
「一番搾り」については、酒税改正によってスタンダードビールの税額が下がることで、「お客様にとって、スタンダードビールをより求めやすくなる機会」と位置付ける。その上で、酒税一本化でビールへの注目が集まるタイミングにあわせ、リニューアルを実施する。
具体的には、「一番搾り」は中身・パッケージともに進化。8月製造品から順次リニューアルし、ザーツホップやヘルスブルッカーホップの配合を最適化するとともに、糖化法を「インフュージョン法」に変更することで、“より飲みやすく、飲み飽きない味わい”へ進化させた。
また、「一番搾り」では7月からブランドアクションも開始。日本各地で“新しいおいしさづくり”に挑戦する生産者を支援する取り組みを進める。
具体例として、気候変動に対応した「暑さに強い米」の生産支援を紹介。近年の猛暑により、従来品種では安定した生産が難しくなっていることにも触れ、「新しい品種開発や生産に取り組む生産者を支援することで、日本の食文化を未来につなげたい」と語った。売上本数に連動した寄付を通じて支援を行い、2026年の寄付額は約5,500万円を見込んでいるという。
さらに、このリニューアルにあわせ、13年かけて開発した「極みの泡タップ」を活用した「極みの泡 一番搾り」も展開する。空気中の窒素を利用することで、窒素ガスボンベなしできめ細かい泡を生成できる技術で、10月からキリンビール全国9工場の工場見学で提供開始を予定している。
木村氏は「圧倒的にきめ細やかで、もっちりとなめらかな口当たりになる」と説明。「泡と液の境目に第三層ができ、グラデーションのような見た目も楽しめる」と語った。
「本麒麟」は麦100%の生ビールへ
一方、「本麒麟」は11月4日にリニューアルし、従来の新ジャンル(発泡酒2)から、ビールへと製法を変更する。
木村氏は、酒税改正後はスタンダードとエコノミーの価格差が縮小する一方、物価上昇による節約志向を背景に、「エコノミーカテゴリーの需要は今後も底堅く推移する」と分析。
その上で、「10月の酒税改正前に発生する仮需のピークを経て、その後、お客様の購買行動が回復する11月に、本麒麟のビール製法化リニューアルを行う」と説明した。
今回の刷新では、麦100%の生ビールとなり、アルコール度数も従来の6%から5%へ変更。「飲みごたえがありながら飲み飽きない」味わいを実現したという。
木村氏は、「本当は我慢せず、おいしいビールを毎日飲みたいというお客様の声に、真正面から応えるブランドとして開発してきた」と振り返る。
さらに、「今回のビール製法化は、2018年の発売当初から構想していた」と明かし、「8年かけて磨き続けてきた“8年越しの大型リニューアル”」と位置付けた。
また味わいの変化について、キリンビール マスターブリュワーの田山智広氏は、「お客様の嗜好が変わり、ビールも“味で選ぶ時代”になっている」と説明。その上で、「キリンビールの各ブランドも、時代に合わせて進化していく必要がある」と語った。
質疑応答では、本麒麟を“一言で表現するとどのようなビールか”という質問に対し、田山氏は「令和のデイリーラガー」と表現。本麒麟はキリンのラガービールのDNAを最も色濃く受け継いでいるブランドだと説明した。
パッケージ面でも赤色の質感を高め、「麦100%」「生ビール」を強調。“本格感”を打ち出すデザインへ刷新する。
キリンビールでは、酒税一本化を単なる制度変更ではなく、“ビールが再び身近になる転換点”と位置付ける。
「一番搾り」でスタンダードビールの魅力をさらに広げつつ、「本麒麟」では“令和のデイリーラガー”という新たな立ち位置を提示することで、多様化するビール市場への対応を進めていく考えだ。








