Smart相談室は2026年5月26日、直近3年以内(緩和条件:5年以内)にメンタル面の不調が主な原因で休職または退職した経験がある会社員を対象に実施した「メンタル不調による休職・退職の分岐点に関する実態調査」の結果を発表した。調査期間は2026年3月24日〜26日で、インターネット調査により413名から有効回答を得た。

  • メンタル不調による休職・退職の分岐点に関する実態調査

    メンタル不調による休職・退職の分岐点に関する実態調査

休職・退職経験者のメンタル不調の原因、最多は「仕事のプレッシャー・難しさ」

  • メンタル不調の主な原因として、最も当てはまるもの

    メンタル不調の主な原因として、最も当てはまるもの

あなたのメンタル不調の主な原因として最も当てはまるものを質問したところ、全体の半数以上が「仕事のプレッシャー・難しさ」(32.2%)と「上司との関係・ハラスメント」(23.5%)の2点に集中する結果となった。特に「上司との関係・ハラスメント」や「同僚との関係・ハラスメント」(9.4%)など、人間関係が仕事そのものに次ぐ大きな要因となっていることから、職場環境の改善には業務負荷だけでなく人間関係のケアが不可欠と考えられる。

半数以上が心身の異変を自覚しながら「3か月以上」勤務を継続

  • 心身の異変を感じ始めてから、実際に休職または退職に至るまでの期間

    心身の異変を感じ始めてから、実際に休職または退職に至るまでの期間

休職または退職に至る前に心身の異変を感じ始めてから、実際に休職または退職に至るまでの期間を質問したところ、「3〜6か月程度」(21.8%)や「1〜3か月程度」(24.5%)が上位となった。全体の半数以上が症状を自覚しながら3か月〜1年以上にわたり勤務を継続しており、企業には不調の長期化を防ぐための継続的なサポート体制が必要と言える。

初期段階では周囲に助けを求められず3割超が「我慢」を選択

  • 心身の異変を感じた初期段階でとった行動

    心身の異変を感じた初期段階でとった行動

心身の異変を感じた初期段階であなたがとった行動を質問したところ、「特に何もせず、我慢して働き続けた」(34.8%)が最多となり、初期段階では周囲に助けを求めづらい状況が見て取れる結果となった。

「限界」を迎えても2割強が我慢を続け社内相談は機能不全に

  • 症状が深刻化し、「このままでは限界だ」と感じるようになった段階でとった行動

    症状が深刻化し、「このままでは限界だ」と感じるようになった段階でとった行動

症状が深刻化し、「このままでは限界だ」と感じるようになった段階でとった行動を質問した。「社外の医療機関(心療内科・メンタルクリニック等)を受診した」(34.0%)が最多となった一方で、限界を感じてもなお「それでも何もせず、我慢して働き続けた」(24.7%)という回答も多く、不調者が行動を起こす際の心理的なハードルの高さが浮き彫りになっている。また、社内の上司や人事ではなく社外の医療機関や家族に頼る人が多く、社内相談が機能しづらい実態がうかがえる。

不調者の8割以上が休職・退職に至る前に「パフォーマンス低下」を実感

  • 心身の異変を感じ始めてから休職または退職に至るまでの間、仕事のパフォーマンスに影響があったと感じるか

    心身の異変を感じ始めてから休職または退職に至るまでの間、仕事のパフォーマンスに影響があったと感じるか

心身の異変を感じ始めてから休職または退職に至るまでの間、仕事のパフォーマンスに影響があったと感じるかを質問した。「ややそう感じる」(42.9%)と「非常にそう感じる」(41.3%)を合わせ、8割以上の従業員が影響を実感している。なお、「あまりそう感じない」(9.8%)、「全くそう感じない」(2.7%)、「わからない/答えられない」(3.3%)という回答にとどまった。

具体的な悪影響は「集中力の低下による業務遅延」と「ミスの増加」

  • パフォーマンス低下の具体的な影響

    パフォーマンス低下の具体的な影響

パフォーマンスへの影響として当てはまる具体的な内容を聞いたところ、「集中力が低下し、業務に時間がかかるようになった」(48.1%)や「ミスや確認漏れが増えた」(44.5%)が上位となった。精神的な不調が思考力の低下や注意散漫を招き、結果として業務遂行能力そのものが損なわれている状態を示しており、業務の質と安全性を確保するためにも早急な対応が求められる。

過半数が職場への相談・報告に高い心理的抵抗感を抱く

  • 職場にメンタル面の不調を相談・報告することに心理的な抵抗感があったか

    職場にメンタル面の不調を相談・報告することに心理的な抵抗感があったか

当時を振り返って、職場にメンタル面の不調を相談・報告することに心理的な抵抗感があったかを質問したところ、「やや抵抗感があった」(33.4%)と「とても抵抗感があった」(32.4%)を合わせ、過半数を超える人が職場への相談・報告に躊躇しており、相談の心理的ハードルの高さがうかがえる結果となった。

相談しない理由は「状況が変わらない」という諦めと「評価への悪影響」

  • 職場への相談・報告に抵抗感があった理由

    職場への相談・報告に抵抗感があった理由

職場への相談・報告に抵抗感があった理由を聞いたところ、「相談しても状況が変わらないと思ったから」(49.6%)が最多となり、諦めを感じられる結果となった。また、「評価やキャリアに悪影響が出ると思ったから」(39.3%)と、職場が相談内容を不当に扱い、不利益を被るのではという懸念もうかがえる。

避けるために必要だった支援は「早い段階での業務量や配置の調整」

  • どの段階でどのような支援や環境があれば休職または退職を避けられた可能性があるか

    どの段階でどのような支援や環境があれば休職または退職を避けられた可能性があるか

振り返って、どの段階でどのような支援や環境があれば休職または退職を避けられた可能性があるかを聞いた。「業務量や配置転換の調整が早い段階で行われている環境」(34.4%)や、「異変の初期段階で、上司や同僚が変化に気づいてくれる環境」(31.5%)が上位を占めた。早期に会社や上司が察知し、環境整備を行うことに加え、不調の初期段階に気軽に安心して相談できる利害関係のない社外の相談窓口の必要性が高まっている。

離職を防ぐ最大の決定的分岐点は「初期段階で気軽に相談できる窓口」

  • 休職または退職を防ぐ上で最も重要だったと思うもの

    休職または退職を防ぐ上で最も重要だったと思うもの

上記の支援の中で、休職または退職を防ぐ上で最も重要だったと思うものを1つだけ選んでもらったところ、「異変の初期段階で、気軽に相談できる窓口」(24.1%)が最多となった。メンタル不調によって離職や休職を経験した人の多くが、不調の初期段階で抵抗感なく専門的な意見を聞ける、または状況を整理できる場所があることが、最も決定的な分岐点となり得たと認識していると考えられる。

心理的障壁となる「我慢の連鎖」を断つ3つの組織的対策

Smart相談室カウンセラーの大塚利江は、本調査について相談そのものに対する根強い抵抗感が確認できたと言及した。心身の異変を感じても我慢を選択する背景には、評価への悪影響や弱みを見せたくないといった組織への心理的障壁が存在すると指摘している。

また、我慢の連鎖を断ち心理的安全性を底上げするための具体的対策として、第三者相談窓口の周知と活用、「気づき」の文化醸成、個別最適化した対話スキルの習得の3点を挙げた。深刻な不調に陥る前の段階でスムーズな支援へつなげることは、大切な財産である人を活かし守ることにもつながると解説している。