初めて人を愛するという行為を知り、戸惑いながら自分の気持ちと向き合いはじめる優香。どこまでもピュアな優香に愛おしさが芽生えはじめる沢渡。さらに優香は「難しい話や学校の勉強についていけない」「周囲に心配され、守られてばかり」、沢渡は「事件により両親を失った」という孤独や生きづらさをそれぞれ抱えていた。
『GIFT』で堤が演じる伍鉄も「周囲から孤立し、誰ともぶつかることも向き合うこともなく、難問を見つけ答えを導き出すことだけを生きがいとしてきた」という孤独と生きづらさを抱える主人公。また、「天才すぎる頭脳と知識を持ち合わせているがゆえに悪意なく思ったことを発言してしまう」という点は優香に似ているところが面白い。
『ピュア』は優香の温かさで沢渡の凍てついた心が溶かされていく一方、『GIFT』は伍鉄が障害を抱える選手たちの孤独や生きづらさを知って心を開き、自分のそれと向き合っていく様子が描かれている。『ピュア』からちょうど30年の今、堤が似た要素を持つ『GIFT』に出演しているのは偶然なのか。それとも多少の狙いはあるのか。いずれにしても、堤が演じる人物、障害を持つ人と周囲、孤独と生きづらさなどの描写を見比べてみる価値はありそうだ。
『ピュア』という作品の世界観にふれると、センシティブなテーマを扱いながら「ほのぼの」「ほっこり」としたシーンも多く、優香を演じる和久井の透明感もあってどこか癒やしムードが感じられる。ひと儲けしようとする出版社の人々や恋の邪魔をする女性も登場するが、優香の圧倒的な純粋さを前に引き立て役のモブキャラという域を出ない。重い世界観を嫌い避けたがる令和の視聴者にも見やすいのではないか。
まさかの「設定かぶり」で連続放送
知的障害のある人物が主人公のドラマは多い一方、恋愛メインの作品は少ない。しかし、同じ96年1月期に鈴木京香と大沢たかおの『オンリーユー~愛されて~』(読売テレビ・日本テレビ系)が放送されていた。しかも『ピュア』は月曜21時台、『オンリー・ユー』は月曜22時台であり、初回放送日は同じ1月8日。レアな設定のドラマが連続放送されていたことに驚かされる。
当時の和久井映見は『愛しあってるかい!』(89年)、『すてきな片想い』(90年)で名前を売ったあと、『妹よ』(94年)、『ピュア』(96年)、『バージンロード』(97年)の3作で主演を務めた月9のシンボル。それぞれ大企業御曹司との格差恋愛、知的障害者の恋愛、未婚母の恋愛という難しいテーマを見事に演じ切ったが、最も記憶に残る作品としては『ピュア』をあげる人が多いのではないか。
和久井と堤以外では、やはり母性あふれる優香の母・孝子を演じた風吹ジュンの存在感は抜群。また、元気で優しすぎる高橋克典、毛量の多い高橋克実、クールな沢渡に甘える篠原涼子などの現在とは異なる意外な姿も見どころの1つだ。
主題歌のMr.Children「名もなき詩」も含め、平均世帯視聴率23.5%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)の高さ以上に印象的な作品だった。
日本では地上波だけで季節ごとに約40作、衛星波や配信を含めると年間200作前後のドラマが制作されている。それだけに「あまり見られていないけど面白い」という作品は多い。また、動画配信サービスの発達で増え続けるアーカイブを見るハードルは下がっている。「令和の今ならこんな見方ができる」「現在の季節や世相にフィットする」というおすすめの過去作をドラマ解説者・木村隆志が随時紹介していく。