先代を否定するところがないのが悩み!? トヨタ新型RAV4のデザイン進化を聞く

2025年12月の発売以降、好調な販売を続ける新型RAV4。その理由のひとつが力強く洗練されたスタイリングであることは間違いないようです。では、6代目となる新型のデザイン開発はどのような意図で行われたのか? 今回は、デザインを統括した神山氏にエクステリアに関する話を聞いてみました。

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■先代を否定しないモデルチェンジ

ーーはじめに、今回デザイン開発を行うに当たって、先代や歴代のスタイリングをどうのように総括したのかを教えてください

「先代はある意味『変化点』でした。初代はオフロードを強く意識していましたが、北米市場を意識した3~4代目では乗用車ライクなスタイルとなり、似たようなライバル車の中で埋没してしまった。そこで原点回帰したのが先代です。今回の開発テーマでも『どこへでも行けそう』と掲げていますが、そういう気分を取り戻したのが先代なんですね(株式会社豊田自動織機 自動車事業部 製品企画部 デザイン室/トヨタ自動車株式会社 MSデザイン部(開発当時) RAV4のプロジェクト・チーフ・デザイナーを担当した神山秀夫さん(以下同)」

ーーでは、新型はいわゆるキープコンセプト的な考えで開発を進めたということですか?

「はい。一般的にモデルチェンジには先代を否定する傾向がありますが、先代はお客様にも好評で、逆に否定するところがないのが悩みでした(笑)。じゃあ、今回はすべて肯定する。変えること自体を目的にするのは止めようと…」

ーープラットフォームは流用でホイールベースも先代と同一ですが、そのなかで掲げた「Big Foot」「Lift-up」「Utility」というキーワードでは具体的にどのようなパッケージを行ったのですか?

「じつはホイールベースだけじゃなく、全長やフロントウインドウの位置、角度も同一なんです(笑)。そのなかで『Lift-up』ではドア下のクラッディングモールやボディ下部の造形により『アップ感』を演出し、『Utility』では『荷物が積めそう』に見えるようバックドアアングルの角度を立てています。ただ、それではキャビンが四角くミニバン的になってしまうので、新型はリヤフェンダーを上下に圧縮することで『上面』を作り、特に真後ろから見たときの強い踏ん張り感を生み出しました。これと大径タイヤにより『Big Foot』を表現したワケです」

ーー新型は「多様化」をテーマとして3つのスタイルが設定されましたが、Zシリーズではクラウンエステートにも似たメッシュ状のグリルが特徴です

「先代は開発の途中でAdventureを作ったので、標準モデルとの差が近かった。そこを今回は大きく変えようと考えました。Zのグリルは単なる金網的なメッシュ形状ではなく、じつはかなり立体的な造形としています。実際には2~3ミリ厚の樹脂パネルですが、凹凸を付けることで非常に剛性が上がっているんですね」

ーーそれに対して、Adventureシリーズではシンプルで大きな面が特徴的です

「シリーズ全体としてカタマリ感のある造形を目指しているので、開口部は最小限の表現としています。で、先代のAdventureではグリルのエンブレムを『TOYOTA』のロゴにするなど、カスタマイズするユーザーが多かった。先代のエンブレム部分にはミリ派レーダーが付いていたのですが、今回はそれを移設してカバーのみとし、カスタマイズしやすいグリルとしました。その上で縦型グリルとし、重心の高さを表現しています」

ーーGRシリーズのグリルは他車種と同様のイメージになっていますね

「はい。ただ、単に見た目ではなくあくまで機能重視ですね。私たちはファンクションマトリクスグリルと呼んでいるのですが、センターのメッシュ部分と外側を囲むアンダーグリルを組み合わせた造形になっていて、クロスしている部分に大きな「エクストラ開口」を設けています。低速域では空気を取り込み冷却性能に使い、高速域では空力性能に効果があります」

■カタマリを削り出したようなボディが狙い

ーーボディ全体は、フロントからのカタマリとリアフェンダーのカタマリが合体した造形に見えますが、その中でドア下部の曲線がかつてのC-HRのようなユニークさを感じさせます

「先代は『クロスオクタゴン』として、8角形の前後のカタマリがぶつかったイメージとしていました。基本的には同じ考え方ですが、先代の前部がウエッジしていたのに対し、新型は水平に流して視界がよく運転しやすい造形にしています。お話のドア面ですが、これは前後のカタマリの断面が出ているところで、線ではなくあくまで大きなカタマリを切ったところにラインが出た・・・ということですね」

ーーリヤのテールランプはガラスと一体にすることで、フロントやサイドに比べると滑らかなイメージですね

「ボディ全体もそうですが、シンプルモダンな表現として過剰に要素を持たせたくない。イメージとしては、ボディのカタマリを削り出したら内包していたランプが出てきた・・・というもので、後付けじゃないということです。ただ、個人的に横一文字の表現はそろそろいいかなと感じていまして(笑)、ランプにはあえて縦型のグラフィックを施しているんです」

ーーボディカラーでは3つのスタイルごとにメインカラーを設けました

「はい。Zは『アバンギャルドブロンズメタリック』で、高い品質感やボディ面の美しさが狙いですね。Adventureは新規開発した専用色の『アーバンロック』です。先代の『アーバンカーキ』はかなり評判がよかったのですが、現在は他車種にも展開しているので新たな提案をしたいと。赤味を加えつつ少しだけメタリックを入れることで、美しい陰影を出しています。GRはもちろん定番のパールホワイトですね」

ーーでは最後に。今回デザインを統括されてどのような感想を持たれましたか?

「RAV4はおよそ180カ国で売られるグローバルカーです。当然それぞれの国のニーズは違っていて、例えば北米なら子供の送り迎え、欧州ではDセグメントの高級車、中国ではEVなどハイテクカーとの競争とまちまちです。もちろん法規も異なる。これを満たすためにはどのようなバランスが必要なのか、そこが非常に勉強になりましたね」

ーーなるほど。その点は先代を肯定した中で見えてきたバランスなのかもしれませんね。本日はありがとうございました。

〈文=すきもとたかよし〉