4月7日、国立波方海上技術短期大学校 第41期生の入学式が挙行された。"海の難所"来島海峡で実習を行い、2年間で四級海技士航海・機関の両方の資格を持つ船員を養成する同校。造船、海運、船用工業といった海事産業が集積した日本最大の海事都市・愛媛県今治市波方町に立地し、直近3ヶ年の海上就職率は平均99.6%と高い水準が維持されている。

このほど執り行われた入学式には、今治市長や四国運輸局 今治海事事務所長らが来賓として出席。新たな船乗りを志す学生たちの入学を祝福した。

実習環境に恵まれた国内有数の船員教育機関

国立波方海上技術短期大学校は、高等学校卒業者を対象として、主に内航船舶を運航する航海士や機関士を養成する国土交通省所管の学校。宮古(岩手)、清水(静岡)と波方(愛媛)の3校がある中でも規模が大きく、入学希望者が年々増えているという。

航海と機関の両方の知識と技術を学びながら船舶職員としての総合的な実務能力を養い、卒業生は航海士や船長になるための四級海技士(航海)と、機関士や機関長になるための内燃機関四級海技士(機関)両方の免状が取得可能。

近年は内航海運界から多数の求人があることなどから、卒業生のほとんどが国内航路の貨物船、客船、タグボートの乗組員として活躍しており、海上就職希望者の就職率は直近3ヶ年の平均で99.6%となっている。

同校の特徴のひとつは、海上交通の要衝である愛媛県・来島海峡を実習海域とし、実践的で効果的な海上実習を行えること。内航海運の航路の中でも難所の海峡と言われている来島海峡航路では、世界的にも特殊な「順中逆西」という海上交通ルール・航法が採用されており、船員教育の環境として恵まれた立地にある。

波方海技短大 海技士教育科海技課程専修科 第41期生の入学者は88名。週2回の海上実習に加えて、1月〜3月、4月〜6月、10月〜12月の練習船航海実習を通して9ヶ月間の乗船履歴がつき、航海士・機関士の四級の海技免状の取得を目指す。

この春に高校を卒業したばかりの新卒者が中心のようだが、同校の学生の経歴や出身地などは多様で、校内には学生寮が備えられている。船内生活に準じた団体生活の経験によって、協調性や規律など、船員に必要な資質を養う方針とのことで、学生の多くは最大172名が入寮できる学生寮「若草寮」で学校生活を送ることになる。経済的な負担も少なく、学習に専念しやすい環境が整備されていると言えそうだ(寮設備は男子用のみ、41期生88名には4名の女子学生を含む)。

日本最大の海事都市・今治で学ぶ意義

「相部屋での共同生活で色々と大変なところもあるかもしれないんですが、船員としてコミュニケーションがしっかり取れるように。まずは挨拶と掃除がしっかりできるように学校で指導していきたいと思っています」とは、波方海技短大 校長の切江淳二氏。

カリキュラム上の特徴としては航海と機関の勉強を並行して行い、両方の免許も取れる点も挙げられる。船員の教育機関では入学時から航海士と機関士でコースが分かれていることも一般的で、基礎領域を共通で学び職種別のコースに分かれることが少なくない。

船乗り=航海士というイメージは世間一般にも同校の入学者にも強いようだが、機関の勉強を通じて、その仕事のおもしろさや魅力に目覚める学生も少なくないとのこと。適性などに応じて航海士から機関士へ、機関士から航海士へと職種の選択肢を持てる点は、就職後の大きな利点と言える。

入学式の式辞では「ご来賓の皆様をお迎えして、本校教職員とともに皆さんの入学を心よりお祝い申し上げるとともに、これまでの皆さんの努力に敬意を表します。愛媛県・今治市には外航海運会社が約70社、内航海運会社が約180社あり、約1430隻の船舶を所有しています。さらに今治市は14の造船所があり、国内シェアの20%を占める日本最大の海事クラスター都市です」と語り、最も船員教育にふさわしい場所として今治を紹介。新たな学校生活に臨む入学者たちへ、次のようにエールを送った。

「座学教育や海上実習、寮生活と初めてのことばかり経験する中で、戸惑いや苦しい思いを経験することもきっとあるでしょう。しかし、そうした経験の一つ一つが皆さんを大きく成長させてくれます。楽しいことばかりではないからこそ、この2年間はかけがえのない時間になるはずです。仲間とお互いに支え合い、信頼し合える関係を築いていってほしいと思います」

変革期の海運業界を支える船員人材を

「本校で努力を重ね、夢を手繰り寄せる。そんな学生生活の中で今治・波方という地域を存分に満喫いただけたらとも思っています。私は皆さま方の先輩といろいろな行事でお会いすることがありますが、皆様にも今治を第二のふるさとに感じていただけたら幸いです」と、祝辞を送ったのは、今治市長の徳永繁樹氏。

愛媛大学が連携し、地域課題の解決と次世代人材の育成を目的とした新たな拠点となる「愛媛大学今治サテライト」を開設したことなどに触れ、海事産業の集積地である今治市のさまざまな取り組みを紹介した。

「今年4月から同大学の工学部に新設された『海事産業特別コース』の拠点として、『愛媛大学今治サテライト』では3年生の学生がサテライトで実践的な教育を受けています。今後は波方海技短大の皆様との連携などもあるかもしれません。さまざまな良いご縁が皆様にもたらされることを私から祈念申し上げます」

続いて登壇した四国運輸局 今治海事事務所長・出海博史氏は、「四方を海に囲まれ、多数の島から成る我が国において、海上輸送を担う海運は貨物や人の輸送に欠くことのできない重要な役割を担っています。国内における貨物輸送は海運が約4割を担い、フェリーや旅客船は生活航路として、また、観光面においても観光立国日本を支える不可欠な移動手段です」と挨拶。

「省力化・自動化に向けた新技術の普及、新燃料船の導入など、人手不足が深刻な海運業界ではさまざまな環境変化が想定されています。こうした新技術の新たな知見を吸収しながら、何事にも果敢にチャレンジすることで、皆様がご自身の未来と海運業界の未来を切り拓いていかれることを心から願っております」と述べ、入学者たちの成長と業界の新たな発展に期待を寄せた。

式の最後には入学生宣誓も行われた。日本の海上物流を支える担い手として、約90名の新入生たちの2年間にわたるチャレンジが、今治の地でスタートを切った。