千葉県館山市に位置する、国立館山海上技術学校は、2026年3月13日、海技士教育科海技課程 本科第39期生の卒業証書授与式を執り行なった。
船員を目指す29名の学生が卒業
同校は、高等普通教育および船員となるために必要な専門教育を行い、優秀な海上技術者(船舶職員)を養成し社会的要請に応えることを目的とした学校だ。3年間の課程を通して、高等学校卒業同等資格の取得が可能。また、四級海技士(航海)および内燃機関四級海技士(機関)の筆記試験が免除されるほか、卒業後に6カ月間の乗船実習科に進学することで、口述試験を経て、四級海技士(航海)と内燃機関四級海技士(機関)の資格が取得できる。
船員養成のための学科教育と練習船による航海訓練を通じた一貫教育を実施する海技教育機構(JMETS)において、高等学校卒業同等資格が取得できる海上技術学校は、国立館山海上技術学校と国立口之津海上技術学校(長崎県南島原市)の2校のみとなっているが、国立館山海上技術学校は、残念ながら来年度以降の入学生の募集を停止。2028年9月末をもって廃校となることが決定している。すなわち、1年生から3年生までが揃う卒業式は今回が最後となる。
本年度の卒業生は29名。ひとりひとりが壇上に上がり、切江淳二校長より卒業証書が授与された。なお、卒業生のほとんどが、そのまま乗船実習科に進学し、内航船の船員を目指す一方で、外航船も視野に入れつつ大学などへの進学を予定している生徒もいるという。
卒業証書の授与に続いては、優等賞や皆勤賞などの賞状および賞品の授与が行われ、日本内航海運組合総連合会会長賞の授与では、日本内航海運組合総連合会 総務部の林広之部長が登壇し、2名に賞状と賞品を授与した。
校長式辞で、切江校長は「未来の海運界の担い手である諸君が、本校の授業、実習で学んだ海技士としての船舶を運航する知識や技術は、過去の世界中の国々の何世代もの人たちが危険を顧みず航海をし、その安全のために数々の技術を突き詰めて生み出されたもの」と卒業生に語りかける。「諸君がこの素晴らしい先人の成果を手にする意義は、諸君自身でそれをさらに磨き上げ、いつか次の世代へ伝承するためでもあります。各世代で海技の伝承が行われ、船舶の安全運航とより効率的な航海を実現することが人類の発展にもつながっていきます」と、さらなる向上に期待を寄せた。
また、現一年生の卒業、修了をもって、国立館山海上技術学校が長い歴史に幕を下ろすことにも触れ、「しかし、この学校で学び、ここで育まれてきた思い出や伝統は決して消えるものではありません」と断言。巣立っていく卒業生ひとりひとりの心の中に生き続け、未来へと受け継がれていくものであり、「諸君こそが、この学校の歴史を未来へとつないでいく存在です。どうか館山で過ごした日々を誇りに、それぞれの道を強く歩んでください」との言葉を贈った。
来賓祝辞では、国土交通省 関東運輸局 藤田礼子局長の祝辞を、関東運輸局 海事振興部 船員労政課の長谷川行宏課長が代読。四面を海に囲まれた日本における海上輸送の重要性を紹介するとともに、物流の2024年問題や少子高齢化などの課題にも言及しつつ、船員を養成する海上技術学校の教育を受けた卒業生は、「日本のライフラインである海運の担い手として社会から大きく期待されている」と高く評価。「本日卒業される皆さんは、三年間暮らしたこの学び舎を巣立ち、それぞれの新しい航路へと歩み出されます。これからの新しい生活の中では、時には社会の厳しさを実感する場面もあるかと思いますが、皆さんが本校で学んだシーマンシップを発揮し、ひとつひとつの困難を乗り越えていただけることを期待しております」と、今後の活躍に向けてのエールを贈った。
切江校長「日本の物流を支える存在になってほしい」
「入学した当初は本当に幼かったのに、年々成長し、最終学年を迎えた今年度は、リーダーシップを発揮し、後輩たちの面倒もしっかり見ることができる頼もしい存在になってくれました」と、卒業生たちとの生活を振り返る切江淳二校長。「本校は、四級海技士の養成施設ですが、今年は三級海技士の筆記試験を11名も合格するなど、勉強の面でも優れたメンバーだと思います」と目を細める。なお、11名という合格者数は同校における最多記録だという。
卒業生に対して、「日本の物流を支える存在になってほしい」と、その活躍に期待を寄せる切江校長。島国日本においては、船がやはり物流の基本。「どこも人手不足で大変だとは思いますが、船員として日本を支える存在になってもらいたい」と熱い期待をかける。
国立館山海上技術学校では、来年度以降の入学生の募集を停止。その理由は「教員不足」であると切江校長は説明。「基本的に、我が校の教員(専門教官)は、内航船の船員の方に来ていただくことになっているのですが、内航船の船員も不足しているという現状では、教員になっていただける方がいない」という現状を打ち明ける。
しかし、船員不足による教員不足が、さらなる船員不足に繋がるという悪循環については、明確に否定した。「本校の養成定員は40名ですが、海技教育機構全体としての養成規模は維持しつつ、見直しの検討が進められています。教員不足は大きな課題ではありますが、学校自体を集約化することによって、未来の船員はしっかりと育てていくことができます」と今後のビジョンを披露する。
「単純に教員の数が不足すると、どうしても忙しくなって、教育の質自体が低下してしまう可能性があります。やはり10年、20年という長い目で見た場合、しっかりと集約化することで、教育の質を維持していかないといけない」と、学校の集約化は、養成定員の維持だけでなく、教育の質の維持にも大きく貢献するという。
「集約化の波は船に限らず、どの業界でも起こっていることであり、決してネガティブなものではない」という切江校長。「人手不足はもはや日本全体の問題ですし、少子化も進んでいく中、いかに船員の数をキープできるかが重要であり、そのためには集約化は不可避」と力を込める。
その一方で、「やはり、館山の地で育てられなくなるのは正直なところ、すごく寂しいです」との本音を明かしつつ、「とにかく、日本の物流を支える海運を盛り上げるためにも、我々としては定員を確実に確保していかないといけない。そのためには、海運、そして船員の重要性をあらためてPRして、日本国中にあらためて知らせていかなければいけないし、我々も頑張らないといけない」、今後への意気込みを明かした。









