
ゴールデンウィーク目前の週末となった4月25日、冬季大会としては初となるミラノ・コルティナ2026冬季オリンピック・パラリンピックTEAM JAPAN応援感謝パレードが行われた。応援への感謝を伝えようと、オリンピアンとともに45人のパラリンピック日本代表選手団が東京・日本橋の中心街を練り歩いた。
スタート前から熱気に包まれる9時10分スタートにもかかわらず、7時半にはすでにパレードのルートである日本橋の中央通りに人垣ができ始めていた。アスリートの到着を待ち望む人たちの静かな熱気に満ちた会場の中で、両親と一緒に車いす観覧エリアでパレードの開始を待っていた小学3年生もその中の一人だ。
「普段はチェアスキーを中心に、車いすマラソンやハンドバイクに乗ったり、車いすバスケットボールを楽しんだりしています。チェアスキーを教えていただいたことがきっかけでパラアルペンスキーの森井大輝選手を応援していて、ミラノ・コルティナ大会も観ました」(母親)
「(森井選手は)やさしいです」と、はにかみながら教えてくれた小学3年生。「ミラノ・コルティナ大会を観て、将来はパラリンピックに出たいと言い出しました。いつかこんなパレードにも出られたらいいですよね」と、両親もうれしそうだ。

未来のパラリンピアンにも夢を与えるこのパレード、冬季大会としては初開催となった。
日本パラリンピック委員会の森和之会長は、「感謝をお伝えするパレードに多くの皆さまにご参加いただき、ありがたく思う。大会期間中にいただいた温かいメッセージは選手にしっかりと届いていた。最後の瞬間まで皆さまの応援が大きなチカラになった」と、集まった観客や支援者に感謝の気持ちを伝えた。

また、日本オリンピック委員会の橋本聖子会長も、「(初開催を)うれしく思っている。最高の笑顔をお届けしたい。そして、2028年のロサンゼルス大会へ一歩を踏み出す勇気をいただきたい」とあいさつした。
続いて、日本橋中学校吹奏楽部や早稲田大学応援部吹奏楽団らがオリンピックファンファーレを演奏。これを合図に、8グループに分かれたオリンピック・パラリンピック混合の選手団が、エスコート・レポーターキッズとともにパレードに出発した。
大歓声を浴び、決意新たに選手団を待ち構えていたのは、約5万人の観衆だ。オリンピックが終わってから約2ヵ月、パラリンピックからは約1ヵ月経ったにもかかわらず大観衆が詰めかけたことに、選手たちの感激もひとしおといった様子。会場で無料配布された「ありがとう‼」と書かれた小旗を振りながら、選手の名前とともに「お疲れさま!」「ありがとう!」という声をかけられると、選手たちも笑顔で手を振り返し、「ありがとうございました!」と応える。選手団も、嶋田悠二ガイド(パラクロスカントリースキー)が自作のピンク色のニット帽をかぶって記念撮影をするなど、終始リラックスムードだ。

選手団にとっては、改めて多くの人に支えられていることを全身で体感する機会となったが、応援する側にとってもアスリートの輝きを目の当たりにする貴重な機会となったようだ。ミラノ・コルティナ大会のキャラクター「フロ」のぬいぐるみを振りながら選手たちに声援を送っていた小学3年生は、「車いすカーリングの選手が気づいて手を振ってくれた。楽しかった」と、目を輝かせていた。
ルートの途中に設けられたミニステージでは、エスコート・レポーターキッズからの質問にアスリートが答えるインタビュートークも行われた。
自身12年ぶりのメダルとなる銅メダルを獲得した鈴木猛史(パラアルペンスキー)は、「パラリンピックで見えた景色は?」と聞かれ、「今みたいに人がいっぱいいて、キラキラしていて。でも、プレッシャーで怖かった」と答え、画面越しでは分からない選手の心理を率直に語った。

また、新田佳浩(パラクロスカントリースキー)は、「パラリンピックは楽しかったですか?」という質問に、次のように回答。
「みんなとお話したり、文化交流するのが楽しかったです。イランの選手は戦争があって来られなくなり、残念でした。イランの選手はすごくパラリンピックに出たいというのを感じた印象的な大会でした」と、世界情勢と無縁ではいられないスポーツの現実を語った。
ひときわ大きな歓声が上がったのは、ミラノ・コルティナ2026オリンピックフィギュアスケートペア金メダルの“りくりゅう”こと三浦璃来&木原龍一がリフトを披露したときだ。

三浦が「私は身長がちっちゃいので、奥の方まで皆さまに観ていただけたらうれしいなと思って」と語れば、木原も「もっとペアを知っていただきたいという思いがあるので、今日が一つの入り口になったらという思いでリフトをさせていただいた」と、その意図を明かした。
今回のパレードを今後の活動へのパワーにした選手も多かったようだ。
銀メダル2個の村岡桃佳(パラアルペンスキー)は、次のように語った。
「昨年大ケガを2度したが、心が折れずにパラリンピックを目指し続けられたのは応援のおかげ。今回はとくに応援の声のありがたさを感じたので私も返していきたいし、これからも応援の声を糧に競技に取り組んでいきたい」

鈴木はスポーツの枠を超えた取り組みに意欲を見せた。
「(パレードは)メダルを獲ったときと同じぐらい感動した。パラスポーツ、そして障がい者を多くの人たちに知ってもらえるよう活動していきたい」
また、銀メダルの小栗大地(パラスノーボード)は、パラスノーボード日本代表チームのキャプテンとして、次の大会に向けての決意を語った。
「チームとして一つでも多くのメダルを獲るという目標を掲げていたが、結果、一つのメダルしか穫れず、悔しい思いをみんなしている。(ミラノ・コルティナ大会で目標として掲げていた)チームで誰かがメダルを獲るという考え方ではダメで、ここから4年はチーム全員でメダルを獲るという目標でやっていきたい」

沿道からの大歓声を受け、メダルを獲った選手はもちろん、思うような結果が出なかった選手や今大会で第一線から退く選手も、これまでの道のりを肯定できる時間になったのではないだろうか。また、今大会は広域分散開催だったため、総合スポーツ大会の雰囲気を感じにくい選手もいたかもしれないが、競技やオリンピック・パラリンピックの枠を越えてグループを作り、一緒にパレードしたことで、改めてオリンピック・パラリンピックのTEAM JAPANの一員だったのだ、という実感が得られたようにも見えた。このパレードを一つの区切りに、それぞれが新たな挑戦に向かう姿を引き続き見守りたい。

text by TEAM A
photo by AFLO SPORT