「人生終わった」と思ったその日から、すべてが始まった――。

俳優の松坂桃李が、カンテレのドキュメンタリー番組『ザ・ドキュメント 氷の上で、生きていく~ミラノへの11年~』(22日16:00~ ※関西ローカル)でナレーションを担当。パラアイスホッケー日本代表のエース・伊藤樹選手(20)の歩みに触れ、「親子愛が本当に胸を打つ」「自分の抱えている問題がちっぽけに感じるくらいの魅力がある」と語った。

本作は、8歳のときの交通事故で脊髄を損傷し、車いす生活となった伊藤選手が、ミラノ・コルティナパラリンピックの舞台に立つまでの11年間を追ったドキュメンタリー。競技人生の軌跡とともに、ともに傷つきながら夢を追い続けた母・紅子さんとの葛藤と絆を描く。

  • 伊藤樹選手

    伊藤樹選手

事故で絶望…母子で見つけた「もう一つの夢」

2015年、当時8歳だった伊藤選手は、母が運転する車で練習に向かう途中に事故に遭い、下半身不随となった。母も大けがを負い、一時は親子ともに車いす生活を余儀なくされる。事故をきっかけに、オリンピック出場の夢を断念した。

しかしその後、9歳で出会ったパラアイスホッケーが転機となる。「パラリンピックに出場する」という新たな夢を見つけ、その夢は母の夢にもなった。事故のトラウマを抱えながらも、母は自らハンドルを握り続け、息子の競技生活を支え続けた。

カンテレは約11年間にわたり伊藤選手に密着。前作では年齢制限によりパラリンピック予選に出場できず、チームも敗退する悔しさを記録した。

その後、伊藤選手は高校卒業後に単身アメリカへ渡り、競技力向上に挑む。そして2025年、ミラノ・コルティナパラリンピック出場をかけた最終予選で劇的な逆転を果たし、出場権を獲得。「人生終わったと思ったところから俺の人生が始まってる」と語る姿に、これまでの歩みが重なる。

松坂桃李「母の思いに強く胸を打たれた」

ナレーションを務めた松坂は、本作への参加理由について「樹選手という人を純粋に知りたいという思いがあった」と明かす。映像を見た印象として、「アイスホッケーに対する愛や熱量に、こちらが逆に勇気づけられた」と語った。

また、母・紅子さんについても「自分の恐怖心を犠牲にしてでも息子を支えたいという思いに強く胸を打たれた」とコメント。「自分も子どもを持つ身なので、お母さまを見るだけで泣けてきた」と、その献身的な姿に心を動かされたことを明かした。

『パーフェクトワールド』からつながる“樹”の縁

松坂は2019年のカンテレ制作ドラマ『パーフェクトワールド』で、事故により車いす生活となった主人公・鮎川樹を演じている。伊藤選手が同作を見て「これ俺やん」と共感していたことを知り、「縁を感じた」と語ったという。

役を通じて知った車いすユーザーの葛藤が、今回のナレーションにも影響したといい、「自分にできることがあればという思いがあった」と振り返る。

最後に松坂は、「樹選手の魅力全開で、お母さまもすごくチャーミング。何より親子の絆が胸を打つ」と強調。「この11年間のドキュメントには、自分の問題がちっぽけに感じるほどの力がある」と語り、作品への自信をにじませた。

【編集部MEMO】
松坂桃李は、『パーフェクトワールド』最終回にあたって伝えたいこととして、「“ひとりで頑張りすぎない”っていうこと。頼れるところは頼って。そうするともっとうまく、自分自身の気持ちが、互いのストレスになることもなく、いろいろなことが豊かになっていって、いい人生が送れるのではないかなと思います」と語っていた。