広島市・基町エリアの街づくりを進めているNTTアーバンソリューションズは、1月23日より3月29日にかけ、音声AIを用いた街めぐりデジタルラリー「The Unknown City」を開催している。ボイスモデルである声優の春日望さんがコンテンツを体験した様子を追ってみよう。
インバウンドで賑わいを見せる広島市
広島の原爆ドーム、宮島の厳島神社と、2つの世界文化遺産を持つ広島県。牡蠣やあなご飯、お好み焼きに広島菜漬けと食文化でも魅力的な同県は、日本でも有数の観光地だ。近年はインバウンドも非常に多く、外国人を見かけない日はない。
県庁所在地である広島市の中心街・基町エリアでは、NTTグループで不動産分野を担当しているNTTアーバンソリューションズが、NTT都市開発を通じて新たな街づくりを主導している。
同エリアでは、2023年3月に「ひろしまゲートパーク」、2024年8月に「ひろしまスタジアムパーク」、2025年3月に「広島城三の丸 第1期商業施設」「県庁前SHOP&CAFE」が開業。2025年10月には基町クレドの商業施設「パセーラ」がリニューアルされ、より一層の賑わいを見せている。
そんな広島市で、NTTグループのテクノロジーを活用した新たなイベントが1月23日よりスタートしている。NTTアーバンソリューションズが仕掛けた街めぐりデジタルラリー「The Unknown City~時を超える広島の記憶とスパイミッション~」だ。
「The Unknown City」は、NTT西日本が進めている音声AI事業「VOICENCE」と、モッチハックが開発したイマーシブ3Dサウンド技術「imavo」を用いた、ARG(代替現実ゲーム)型のコンテンツ。AIクライアントとともに、基町エリアでさまざまな謎を解きながら、観光スポットを巡る内容になっている。
開催期間は3月29日までとなり、参加費は無料。日本語と英語に対応しており、QRコードなどからブラウザでアクセスするだけでコンテンツを開始できる。
声優・春日望さんが「The Unknown City」を体験
「The Unknown City」のAIクライアントに使われている「VOICENCE」は、わずかな音声から本人の特徴をとらえた声色を再現し、その声色そのままに多言語で出力できるという、NTT西日本の音声AI技術だ。
ブロックチェーンを活用した真正性証明「トラスト技術」によって、公認AIの声である証明書データを付与することで声の権利を保護し、音声AIの健全な活用を促進するという取り組みも行われている。
今回は、バーチャルYouTuber「キズナアイ」のボイスモデルで知られる声優の春日望さんの公認AIモデルを採用。春日さんが新たに音声を収録するようなことはなく、春日さん自身もその完成度について知らない状態だ。
2月20日、そんな春日さんが、広島市で実際に「The Unknown City」を体験した。広島市内にあるポスターからQRコードを読み込み、サイトにアクセスするところからスタート。AIクライアント「VOIX(ボア)」に導かれながら最初の謎解きをクリアし、広島市都心部を巡った。
体験を追えた春日さんは、「私は今回、収録をしていないので、すごくワクワクしながら楽しめました! 英語にも切り替えられるということで、海外から観光に来ている方にも楽しんでもらえるのがすごく嬉しいです」とコメント。
また、「謎を解きながら広島のいろいろなところを案内してくれて、とても楽しかったです。広島の歴史は小・中学校で学んではいるんですけど、忘れていたところ、観光ではなかなか訪れないところも巡りながら学べるのがすごく良いと思いました」と、広島の歴史について知るコンテンツとしての魅力にも触れた。
広島市の観光課題と音声AIの親和性とは?
音声AIを活用し、広島市外の周遊を楽しんでもらうという「The Unknown City」。NTTアーバンソリューションズ 街づくり推進本部 企画部 企画担当 担当部長の石黒暁久氏、NTT西日本 VOICENCEカンパニー マーケティング・セールスマネージャー / CMO兼CROの大西祐佳氏に、このプロジェクトの狙いについて伺ってみよう。
――「The Unknown City」を始められた経緯についてお聞かせください。
石黒氏:広島の観光業には“通過型観光”という課題があります。原爆ドーム・厳島神社という世界的に有名なスポットがありますので、その2カ所で広島の観光が済んだ気分になってしまうのです。また大阪から新幹線で約1時間20~30分で到着するという距離的な近さもあり、その間で宿泊することなく次の観光地に向かうという形になっているんですね。
やはり広島の街をもう少し巡ってもらいたい、滞在時間を増やしもう1泊してもらいたい、“滞在型観光”に近づけたいということで、新たな提案として取り組みを始めました。
――開催して1カ月ほど経過しましたが、これまでの反応はいかがですか?
石黒氏:3週間目の時点で約1,000人にご参加いただいています。そのうち15%ぐらいの方が英語を選択されているので、インバウンドにも利用されていると推察されます。目標としては全体の数がもうちょっと増えるといいなと思いますが、海外の方も参加されているのは良い傾向かなと感じます。
――コンテンツに音声AIを採用されたのはなぜですか?
石黒氏:周遊の施策について考えていたときに、ちょうどVOICENCEカンパニー長/CEOの花城高志氏と接点があり、事業の話を聞いて『これは広島にピッタリなんじゃないか』と声をかけました。提案された内容もすごくフィットしましたので、『ぜひやろう!』となったんです。
大西氏:私も広島市に住んでいたことがありましたので、通過型観光という課題は肌で感じていました。VOICENCEを使ってデスティネーション(旅行目的地)になるようなコンテンツを創り出す、NTTグループ全体で広島の体験価値を向上させるというのは、本当にワクワクするチャレンジだなと思いました。
――日本語のボイスモデルを元に英語に変換という技術について教えてください。
大西氏:本人の声の特徴はそのまま残したまま、言語を変えることができるというVOICENCEならではの技術となります。NTTグループが長年研究を続けていたデータソースがありまして、本人の口調や声色を抽出したソースと、他言語それぞれのエッセンスを組み合わせて発声させる……そんなイメージになりますね。現在、日本語、英語、中国語、韓国語、フランス語、スペイン語の6言語に対応しています。
――ボイスモデルとして春日望さんの声を採用された理由は?
大西氏:ジャパンコンテンツのパワーってものすごいんですよ。アーティストさんやタレントさん、ゲームやアニメのキャラクターといったさまざまな日本のIP(Intellectual Property:知的財産)は、日本に観光に来る理由のひとつになっています。そのうえで、今回のコンテンツには、人間ではなくキャラクターを選定したほうが興味を持ってもらいやすいと考えたのが一段階目です。
石黒氏:タレントさんを採用することも考えたんですけど、やはりその人のイメージで固まってしまうので、新しくイメージを作れるキャラクターの方がいいんじゃないかなと考えたんですよね。
大西氏:次に、二段階目としてキャラクター設定を考えました。そして、我々が権利をお預かりしている声の中では、春日望さんがAIクライアント「VOIX(ボア)」に一番フィットしていると感じたのです。春日さんはバーチャルYouTuber・キズナアイちゃんのボイスモデルもされていますので、海外の人にも認知のある声を英語で聞くことができます。これらを加味して、今回は春日さんにお願いする形になりました。
――「The Unknown City」は広島の観光にどのような影響を与えると考えていますか?
石黒氏:今回のプロジェクトはNTTグループ独自の施策であり、広島市さんからも高く評価をいただいています。「The Unknown City」の謎を解いていくことで広島市について知っていただけるだけでなく、移動中に例えばカフェに立ち寄ってもらったり、おいしいものを食べてもらったりといった形で経済効果も生まれると良いなと思っています。
――今回のプロジェクトを経て、今後の抱負についてお聞かせください。
石黒氏:今回は広島市の中心街である基町エリア付近の周遊を狙いましたが、次は広島駅周辺も含めて街全体が盛り上げるプロジェクトにしたいと思っています。広島駅から中心街に来てもらったり、逆に広島駅にも行ってもらったりして、エリアをちょっとずつ広げていきたいですね。広島市はこのふたつのエリアを軸に街づくりを進めていますので、両方が発展していくように貢献したいと思います。
大西氏:NTT西日本はもともと地域通信事業者であり、地域に対してコミットする会社です。広島市のみならず、地域課題を抱えている自治体のみなさまの課題解決に我々の技術や事業がお力になれることがあれば、ぜひお声がけをいただきたいです。「AI技術とは、体験を拡張していくためのもの」と、我々は考えています。日本の持つコンテンツのパワーを広げ、日本を元気にするお手伝いができればいいなと思っています。
日本ならではの魅力の掛け合わせで集客を生む
「人気の観光地同士の距離が近く、滞在してもらえない」という観光課題を抱える広島市。これに対してNTT西日本は、ジャパンコンテンツとテクノロジーの力で観光客をつなぎ止めるという施策を提案した。ユニークな魅力を持つ日本の観光地とジャパンコンテンツの組み合わせは、今後ますます増えていきそうだ。













