北海道登別市の「のぼりべつクマ牧場」で、2025年に生まれた子グマがデビューした。

  • 子グマ牧場を見学中の登別市初代ナビゲーター姫子さん

    子グマ牧場を見学中の登別市初代ナビゲーター姫子さん

子グマたちが第2牧場デビュー

登別温泉の山あいにある同牧場は、北海道を代表する野生動物・エゾヒグマに出会える観光施設。牧場は通称「クマ山」と呼ばれる標高約550メートルの四方嶺の山頂にあり、現在約70頭のヒグマが暮らしている。敷地内からは、透明度の高い倶多楽(クッタラ)湖を望む雄大な景色も楽しめる。

2025年には5頭の子グマが生まれ、すくすくと成長。子グマ牧場を卒業して第2牧場でのデビューが決定し、3月は週に2回ほどのペースでお披露目が予定されている。

  • 2025年誕生の子グマ

    2025年誕生の子グマ

  • 1歳群の登場予定スケジュール

    1歳群の登場予定スケジュール

登別市初代ナビゲーターが牧場を訪問

エゾヒグマは北海道にのみ生息する日本最大級の陸上動物。成獣のオスになると体長が2メートルを超え、体重も400キログラムに達することがある。近年、日本各地で人間とクマの共生、その境界線について注目が集まっている。人間とクマは共生できるのか。その答えを探るため、登別市初代ナビゲーターの姫子さんが、同牧場を訪れた。

  • 登別市初代ナビゲーター姫子さん

    登別市初代ナビゲーター姫子さん

ロープウェイで向かう"クマたちの世界"

クマ牧場へはロープウェイで向かう。山麓駅から山頂までは全長1,260メートル、高低差およそ300メートル。ロープウェイは約7分で一気に駆け上がる。眼下に広がる山々の景色を楽しみながら、クマたちが暮らす場所へと向かう。

  • ロープウェイで向かう"クマたちの世界"

    ロープウェイで向かう"クマたちの世界"

クマに惹かれて登別へ - 飼育員・濵口さん

案内を担当したのは、飼育係の濵口華穂さん。高校卒業後、動物専門学校で2年間学び、大阪から登別へやってきた。専門学校1年の18歳のときに、同牧場のクマに出会い、その姿に一目惚れしたことがきっかけだという。

「ほかの動物園は考えていなかったんですか?」という質問に対し、濵口さんは「のぼりべつクマ牧場一択でした。ここのクマを見た時にしっかりと餌も貰っていて痩せてもいないし、おやつを投げてもらうために必死でアピールをしているわけでもない、そののんびりした雰囲気に惹かれたんです。クマをとても大事にしているという方針が、遊びに来た側でもわかったんです」と話す。

小さい頃から動物園によく連れて行ってもらっていたこともあり、動物と一緒に働きたいという思いを抱いていたという。

  • のぼりべつクマ牧場 アトラクション部 動物飼育係の濵口華穂さん

    のぼりべつクマ牧場 アトラクション部 動物飼育係の濵口華穂さん

穏やかさは、偶然ではない

同牧場で暮らすクマが穏やかに見える理由について、濵口さんは、性格だけではなく飼育方針も大きいと説明する。

餌やり体験は人気だが、空腹にさせて反応を良くする、というやり方はしていない。健康管理やストレスのことを考え、「常に満腹ではないけれど、ちゃんと食べている」状態のバランスを大切にしているという。

  • のぼりべつクマ牧場の穏やかなクマたち

    のぼりべつクマ牧場の穏やかなクマたち

穏やかさを支える「クマ同士の関係」

相性の悪いクマ同士が同じ空間にいる状態でおやつを投げると、喧嘩をしながら取り合うことがある。おやつや餌がなくても、出会った瞬間に取っ組み合いの喧嘩になることもあるという。

同牧場では、クマにストレスがかからないことを最優先にしている。そのため、相性の良くないクマ同士は分けて管理するよう気を付けているという。

  • 穏やかさを支える「クマ同士の関係」

    穏やかさを支える「クマ同士の関係」

濵口さんは、「一頭の性格や特徴まで、しっかり把握しています!」と語る。入社当初は分からなかったものの、先輩や上司に教えてもらいながら次第にクマの様子が分かるようになっていったという。

「色々な個性の子たちがいますので、"推しクマ"を見つけていただくのも面白いかもしれません」(濵口さん)

  • 掲示された個体情報には、それぞれの性格や特徴が整理されている

    掲示された個体情報には、それぞれの性格や特徴が整理されている

クマとの距離を体感する餌やり体験

第1牧場と第2牧場にいるクマには、おやつをあげることができる。おやつは10個入りが200円、30個入りは500円で購入できる。

  • 餌やり体験

    餌やり体験

  • 餌やり体験

    餌やり体験

子グマ牧場の命を見守る仕事

子グマ牧場では、子グマたちが遊ぶ様子を見ることができる。濵口さんによると、2024年は2頭、2025年は5頭の子グマが生まれたという。

生まれるのは大体1月から2月。クマは冬ごもりをしている時に出産する。まれに3月に生まれることもあるが、珍しいケースだそう。

また、クマの出産には人が立ち会うことができない。冬ごもりをしている場所から聞こえてくる鳴き声などで生まれたかどうか判断し、生まれた直後の様子も産室の中を覗かずに耳だけ当てて、母グマや子グマの状態を確認しているという。

  • 子グマ牧場

    子グマ牧場

芸ではなく、理解のための展示

同牧場では「クマのアスレチック」を見ることができる。クマが芸をするのではなく、クマの優れた能力や知能、嗅覚、手先の器用さなどを理解してもらうことを目的としたイベントだという。

  • クマのアスレチック

    クマのアスレチック

クマたちの歴史を知る

施設内には、歴代の「ボス」グマたちを紹介するコーナーもある。クマ同士の関係や群れの変化などを知ることができる。

  • ボス紹介コーナー

    ボス紹介コーナー

クマと人間の共栄共存の歴史

北海道ではもともとアイヌの人々が暮らし、"神と自然と人との共存共栄によって、幸せな暮らしができる"という考えのもと、生活してきた。太陽や火などの自然、動物、植物、船や櫂などの物などを崇め、尊ぶ気持ちをもって全ての命やモノに接していた。

特に北海道の陸上動物の王者であるヒグマは山の神として格別の敬意が払われてきた。。クマ崇拝を最も象徴するのが「イオマンテ」。幼熊を育て、1~2年ほど飼育した後、たくさんのお土産を持たせてその魂を神(カムイ)の世界へ送り返す儀礼が行われていた。この儀礼をとおしてカムイの再訪を願い、食料の安定供給をもたらすものと信仰されていた。

  • クマと人間の共栄共存の歴史

    クマと人間の共栄共存の歴史

近年はクマ被害のニュースも多く報じられているが、濵口さんは「胸が痛みます。難しいことも沢山ありますが、私は共生して欲しいと願っています。ここにいるクマを見てもらえれば、クマは愛しくて、賢くて、素晴らしい生き物であることが分かってもらえると思っています。」と話す。

「クマがどんなに鋭い嗅覚を持っているか、そして意外にも手先が器用なことを知らないと、知らず知らずのうちに餌付けをしてしまって人のいる場所にやって来てしまう危険もあるんです。ぜひ今こそ、『のぼりべつクマ牧場』に来て、クマを知っていただきたいと思っています」(濵口さん)

  • 登別市初代ナビゲーター姫子さんと動物飼育係の濵口華穂さん

    登別市初代ナビゲーター姫子さんと動物飼育係の濵口華穂さん

同施設の営業時間は、10月21日~4月20日が09:30~16:30(最終入場時間15:50)、4月21日~10月20日が09:00~17:00(最終入場時間16:20)。駐車場料金は、普通自動車500円、大型車1,000円、二輪車200円となっている。最新の営業時間・料金・アクセス情報は、公式サイトで確認を。