
(左から)パーソナリティの住吉美紀、加藤昌則さん
◆落語とクラシック音楽の「未完成な」出会い
東京は、世界に誇る伝統芸能の宝庫です。能楽、日本舞踊、邦楽、雅楽、寄席芸能、民族芸能。こうした多彩な伝統文化をより身近に感じてもらうための祭典「江戸東京伝統芸能祭」が開催中です。その数あるプログラムの中でも、ひときわ異彩を放ち、私たちの想像力を刺激する試みがあります。それが「落語(寄席芸能)」と「クラシック音楽」の融合です。
このプロジェクト「落語×クラシック音楽!〜日本の歌と言葉 魅力再発見〜」をプロデュースするのは、オペラや管弦楽、合唱曲などを幅広く手がける音楽家の加藤昌則さん。一見、対極にあるように見える2つのジャンルを、加藤さんはどのように結びつけようとしているのでしょうか。
加藤さんはこれまで、能楽とクラシック音楽のコラボレーションを三度にわたって成功させてきました。しかし、落語との組み合わせは今回が初めての挑戦です。単にクラシック音楽の演奏の合間に落語を挟むといった単純な構成ではなく、加藤さんが目指すのは、双方が真にコラボレートする形。「クラシック音楽自体にお笑いの要素を感じる人は少ないかと思いますが、実はオペラには喜劇が溢れています。わざとギャグを取り入れて(観客を)笑わせる手法がクラシックの世界でもあるんです」と加藤さんは語ります。
既に完成されている2つの芸を、あえて「未完成な状態」で融合させることで何が生まれるのか。加藤さんは有名な落語の演目をベースに、音楽を切り貼りしながら、言葉と音の新たな物語を構築していったといいます。
加藤さんの話を受けて、住吉は日本人が生み出してきた「カレーライス」や「あんバター」を引き合いに出し、「日本の文化はそもそも掛け合わせの妙」と評すると、「日本の音楽文化も多様な影響を受けながら進化していきました。落語のギャグが西洋音楽の旋律と結びついたとき、思いがけない笑いや、あるいは涙が誘われる瞬間もあるかもしれません」と、加藤さんは未知なる化学反応に期待を込めます。
◆日本の心を紡ぐ、音と言葉の再発見
3月8日(日)に三越劇場でおこなわれる「落語×クラシック音楽!〜ニッポンの歌と言葉 魅力再発見〜」のステージには多彩な顔ぶれが揃います。
落語:柳亭市馬
尺八:藤原道山
バンドネオン:北村聡
ソプラノ:鵜木絵里
コントラバス:西嶋徹
三味線:太田その
加藤さんが「あえてごちゃ混ぜにした」と話すこの編成は、それだけでどんな音が奏でられるのかワクワクさせられます。
演目には、私たちの心に深く刻まれている曲も並びます。「花」「赤とんぼ」「ちいさい秋みつけた」といった日本の唱歌・童謡の数々。加藤さんによれば、1901年(明治34年)に滝廉太郎が発表した「荒城の月」と「花」こそが、日本のクラシック音楽の原点と言えるそうです。そこから生まれた「童謡」は、当時の音楽家たちが、子供たちに日本の心を伝えようと情熱を注いで書き上げたものでした。
今回の見どころのひとつは、落語家の柳亭市馬師匠の意外な一面です。実は日本歌手協会会員として活動するプロの歌手でもあり、昭和歌謡(懐メロ歌謡)の達人でもある市馬師匠に、童謡だけでなく歌謡曲も披露してもらう予定だといいます。
さらに、加藤さん自身の作品「旅のこころ」も演奏予定で、「台所詩人」と呼ばれた詩人・高田敏子さんが綴った詩に加藤さんが曲をつけたものです。「こうした日本の言葉と音が紡いできた伝統を、落語という話芸とともに紹介していきたい」と今回のプログラムに込めた思いを明かしました
最後に、加藤さんは「新しいことというのは、何をやるのか想像がつかないかもしれません。でも、そういうものこそ、生まれる瞬間をぜひ楽しんでいただけたらと思っています」とリスナーにメッセージを送りました。
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「落語×クラシック音楽!〜日本の歌と言葉 魅力再発見〜」公演の詳細は、「江戸東京伝統芸能祭」公式サイトをご確認ください。
<番組概要>
番組名:Blue Ocean
放送日時:毎週月曜~金曜9:00~11:00
パーソナリティ:住吉美紀
番組Webサイト: http://www.tfm.co.jp/bo/
番組公式X:@BlueOceanTFM