まったくもって鍋つゆ売り場というのは油断ならない。気を抜いていると、いつの間にか見知らぬ新顔がしれっと並んでいるからだ。この冬もまさにそうだった。ミツカンの「鍋THE WORLD」である。

……鍋で……世界? どういうことだ。目を凝らすと、ユッケジャンにブイヤベースとある。ほう、確かに国境を越えてきた感がある。いつもの白菜と長ねぎで世界旅行ができますよ、ということか? さすがに話がうますぎる。でも、味もうまい可能性がある。

気づけば条件反射的に買い物かごに入れ、しっかり具材まで買い揃えていたので、その冒険の結果を以下でお話したい。

ミツカン「鍋THE WORLD」を実食

ミツカンが昨夏あたりに発売していた「鍋THE WORLD」。その名のとおり、“世界”をテーマにした鍋つゆシリーズだという。

「海外の文化や空気感を、鍋に落とし込んでみたらどうなる?」というユルめの発想で作られているようで、ミツカン内では“妄想架空鍋スープ”と呼ばれているらしい。日頃から楽しんで仕事をしているんだな、という開発の裏側が垣間見えるようだ。

鍋つゆは年間1,000種類以上が流通する群雄割拠の世界だが、一方で、そろそろマンネリ感もある。マンネリ感というか、もうあらゆる鍋が出尽くした感が否めないのだ。

しかしこの「鍋THE WORLD」シリーズは、いつもの具材、いつもの鍋なのに、スープの切り口を変えるだけで海外気分に浸れるようだ。いいね。そういうチャレンジ、大好き。ということで、さっそく実食してまいりましょう!

「鍋THE WORLD 発酵唐辛子のユッケジャンテイスト」

まずは「鍋THE WORLD 発酵唐辛子のユッケジャンテイスト」から。はじめに鍋にスープをよく振って入れ、火にかける。

沸騰したら牛肉を入れ……

牛肉に火が通ったら、その後に白菜、長ねぎ、にんじん、えのきを投入。最後にもやしとにらを放り込み、軽く煮立てて完成!

基本的に、作り方はいつもの鍋とそう変わらない。しかし、立ち込めてくるこのエスニックな香りがいつもの鍋とはまるで違う! 唐辛子の刺激だけでなく、コク深い匂いが混ざっていて、めちゃくちゃ食欲を刺激してくるじゃないか……。

さっそく取り分けて……いただきます!

こっ、これは……!! 激ウマッッッ……!! 見た目どおりの辛さはあるが、それはむしろ入口に過ぎず、辛さ以上に牛骨の旨味がしっかり抽出されており、その濃厚な味わいとともに発酵唐辛子のコクが後から追いかけてくる。めちゃくちゃユッケジャンだわ!

もちろん、ユッケジャンは本来スープなのであくまで別物であるが、ユッケジャンを日本の鍋文化に違和感なくインストールすべく、きちんと手綱が握られているイメージである。

白菜は甘く、もやしとにらはシャキッと爽快。その触感がめちゃくちゃリズミカルで食べていて楽しい。牛肉は言うまでもなく優勝。肉の旨味がスープに合いすぎている。異国料理を味わっている喜びもあるし、鍋で身体を温めた満足感もしっかりある。これはいいぞ……!

個人的に、これまで「自宅で食べられる韓国風の鍋」と言えば“キムチ鍋”くらいしか選択肢がなかったのだが、これはまったく新たな一手。そうか、ユッケジャンを鍋にするという手があったかぁ。その発想にも美味しさにもハッとさせられる、ナイスな新提案である。

「鍋THE WORLD オマール海老の海賊ブイヤベーステイスト」

続いてブイヤベーステイスト。こちらも具材が違うだけで、作り方はあまり変わらない。

鍋にスープを入れて火にかけ、沸騰したら鶏肉から投入。火が通ってきたら野菜を次々と入れていく。お好みでエビやあさりを加えれば、気分は一気にマルセイユだ。

そして数分後……

完成〜! めっちゃウマそうなんですけど! 香りがめちゃくちゃいい〜!

濃厚な魚介の出汁にサフラン由来の異国感ある匂い……。正直、鍋売り場で嗅いだことのないオシャレな香りである。このオシャレさは、スープストックとかの感じに近い。

さっそくひと口食べてみると……

うっ、うめぇぇぇえええッッッ!! めちゃくちゃウマいんだが!? 香りは濃厚だが味は鍋らしく優しげで、オマール海老や貝類のクリアな旨味と風味が鍋の味わいを柔らかく支えている。トマト由来の酸味も控えめで、鶏肉やじゃがいもにもしっかり味が馴染んでいる。

うっすら弱火で火にかけたままにしているので、エビやあさりの旨味、そして野菜の甘みがスープに徐々に溶け出し、食べ進めるほどにスープの完成度が上がっていく感覚だ。鶏肉もめちゃくちゃ合うし、エビ、あさりの相性は超最高。これはフランスパンとかを浸して食べても美味しそうだ。

ブイヤベースの鍋か……。っていうか、こんなウマい鍋スープ、なんで元々なかったんだろう。誰かもっと早く作ってなきゃおかしくないか、と軽く感情が乱れるくらいクオリティが高い。

それにしても、鍋つゆ売り場は本当に油断ならない。うっかりすると、家でくつろぎながら韓国に行かされ、次の瞬間にはフランス南部に連れていかれるのだから。次はどこだろう。メキシコか、インドか、それとも中東か。

「鍋THE WORLD」には、どうかその調子で攻め続けてほしい。こちらは白菜と長ねぎを手荷物に入れ、出国を待つだけである。