
2月1日、球春到来――。NPB12球団がキャンプインすると同時に、多くの野球ファンはシーズンへの期待を膨らませるだろう。オープン戦を経てシーズン開幕を迎える各球団の選手たちは、春季キャンプでいかにアピールできるかが鍵となる。本稿では、読売ジャイアンツの春季キャンプ一軍・二軍の振り分けから、阿部慎之助監督の思惑を考察していきたい。(文・田中凌平)
期待のかかる新人6名が一軍スタート
今年の巨人は例年に増して面白い。なぜなら、レギュラーがほとんど決まっていないからだ。中継ぎ以降の投手陣はメンバーを想定できるが、先発投手と野手でレギュラー当確と言えるのは、山﨑伊織、泉口友汰、松本剛、トレイ・キャベッジのみだろう。
レギュラーの白紙が多い状況を象徴するかのように、阿部監督は竹丸和幸、田和廉、山城京平、皆川岳飛、小濱佑斗、そして育成の知念大成ら新人6名を一軍スタートとした。いずれも即戦力候補として名前の挙がるメンバーであり、阿部監督も自分の目で確かめたいのかもしれない。
竹丸、田和、山城の3人は先発ローテーションを狙える選手たちだ。巨人は今オフにフォレスト・ウィットリー、スペンサー・ハワード、ブライアン・マタと3人の外国人投手を補強したが、外国人枠の関係もあり、全員が一軍にいる可能性は低い。さらに、井上温大が故障班として三軍スタートということもあり、左投げの竹丸と山城はアピールのチャンスとなる。
皆川と知念には、外野の1枠を狙ってほしい。特に知念はイースタン・リーグで2024年の首位打者、2025年は2位と十分に期待できる成績を残している。これまで巨人の外野手の一角は丸佳浩が長く担ってきたが、近年は怪我の影響もあり、休みを挟みながらの起用が目立ってきた。皆川や知念が台頭し、巨人が丸を代打の切り札として起用できるのであれば、他球団にとって脅威となるだろう。
遊撃手をメインとする小濱は、泉口という大きな壁が存在する。しかし、チャンスが無いわけではない。あまり想像したくないが、門脇誠の成績が下降したことで泉口がレギュラーを掴んだように、小濱も泉口が思ったような成績を残せなかった際や負傷離脱の事態に備えておいてほしい。
浅野翔吾が離脱…高まる石塚裕惺への期待
今季、多くの巨人ファンが注目しているのが、一軍メンバーに抜擢された石塚裕惺ではないだろうか。
2024年ドラフト1位で花咲徳栄高校から加入した石塚は昨季、イースタン・リーグで打率.327を記録してシーズン終盤に一軍に昇格。一軍では9試合の出場で打率.111と限られたチャンスをものにできなかったが、この冬のオーストラリア・ウィンターリーグでは打率.318、3本塁打と存在感を発揮した。さらに、キャンプイン時の身体つきは確実に変わっており、期待が膨らむばかりだ。
この石塚を坂本勇人と重ねて見る人は多いかもしれない。巨人の絶対的な遊撃手として君臨してきた坂本も、プロ1年目は4試合の出場にとどまったが、プロ2年目は二岡智宏の負傷離脱があり、この年からレギュラーの座を掴んだ。
石塚の本来のポジションは遊撃手であるが、もしかするとレギュラーが未定の三塁手や、故障班の吉川尚輝に代わる二塁手として起用されるかもしれない。
浅野翔吾が春季キャンプで負傷離脱した今、石塚は貴重な高卒ドラフト1位の選手だ。プロ2年目を飛躍の年とし、長期的に巨人の中心となる選手になってほしい。阿部監督が一軍メンバーに選んだことからも期待がうかがえる。
キャベッジだけでは難しい?浮かび上がる“ポスト岡本候補”
今季の巨人で大きな鍵を握るのは、トロント・ブルージェイズへの移籍が決まった岡本和真の穴を埋める主砲の台頭だろう。
昨季、チームトップの17本塁打を放ったキャベッジは、その候補の1人となる。だが、2018年以降、6年連続で30本塁打以上を放った岡本の穴はキャベッジだけでは埋められない。
そこで阿部監督は、キャベッジと同様に主軸を期待できるリチャード、荒巻悠、ボビー・ダルベックを一軍メンバーに選んだのだろう。リチャードは三振数こそ多いものの、昨季は77試合で11本塁打を記録し、ダルベックはアメリカのマイナーリーグで105試合に出場して24本塁打を記録した。
もちろん、この2人には期待をしているが、個人的に注目しているのは荒巻だ。
2024年に上武大学からドラフト3位で入団し、プロ1年目の昨季は31試合の出場で1本塁打に終わった。数字だけ見れば物足りないものの、荒巻の豪快なフルスイングに夢を見ずにはいられない。
近年の巨人には、コンパクトな打撃を持ち味とする選手が多い印象がある。荒巻は久しぶりにスケールの大きさを感じさせる選手だ。この力強いスイングのまま、コンタクト率を高めていってほしい。
かつてないほどレギュラー争いが激しい阿部巨人。3月27日に阪神タイガースとの伝統の一戦で開幕スタメンを勝ち取るのは誰になるのか、今から目が離せない。
【著者プロフィール】
田中凌平(たなか・りょうへい)
1992年生まれ。ライター。年間でNPB12球団の本拠地を巡ることもあるほどの野球好き。巨人やMLBを中心に、陸上、水泳など多岐にわたる競技を執筆。五輪の取材経験も持つ。
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