民放連続ドラマ初主演。その肩書きだけを見れば、大きな節目に思えるが、勝地涼は意外なほど淡々としている。
読売テレビ・日本テレビ系ドラマ『身代金は誘拐です』(毎週木曜23:59〜24:54)で演じるのは、誘拐事件に巻き込まれていく一人の父親。複雑に入り組んだ物語の中で、勝地が大切にしているのは、役を作り込むことではなく「余白」を残すことだという。
「嘘を言いたくない」と語る彼の言葉からは、シリアスでもコメディでも変わらない、俳優としての一貫した姿勢が感じられた。
『身代金は誘拐です』の展開を予告
8年前に刑事を辞め、現在は防犯セキュリティ会社に勤務する鷲尾武尊(勝地涼)は、妻の美羽(瀧本美織)、娘の優香(畠桜子)、詩音(泉谷星奈)と共に、幸せな日常を送っていた。しかし、ある日、次女の詩音が8歳の誕生日を迎えた矢先、行方不明に。慌てて帰宅した武尊に、美羽が警察へ通報することを提案したそのとき、一本の電話が鳴る。
「娘さんを誘拐しました。もし警察に言った場合、娘さんを殺します」
その直後、犯人から拘束された詩音の画像が送られてくる。取り乱す武尊と美羽の元に次々と送られてくる犯人の指示。そして犯人から、娘を返してほしければ48時間以内に別の子どもを誘拐しろという要求を突きつけられる。犯人の要求に従い、指定の子どもを誘拐した武尊と美羽。不安と罪悪感にかられるなか、その子どもが姿を消すというまさかの事態に発展する。
さまざまな事情が入り組んだ複雑な物語。武尊を演じる勝地自身も、最初は話の展開に整理がつかなかったというが、全貌が見えた今は自信を持って、こう予告する。
「ずっと、犯人の指示通りに来てるじゃないですか。ただ、物語がだんだん進んでいくと、今度は自分たちも違う動きをしようとするんです。ずっと従ってるわけにもいかないから。毎話、チャレンジというか。回ごとに、これはこういう回だね、というのが分かるような展開になってると思います」
「5、6話からは裏をかくわけじゃないけど……向き合い方が変わっていく。今は動揺しているけど、武尊自身の8年前の事件も関与してるかもしれないということで、自分との戦いになる部分もあったりします」
俳優としての信念「嘘が嫌いなんですよ、僕は」
犯人は誰なのか。その目的は何なのか。ノンストップ考察ミステリーでありながら、「家族の話でもある」と勝地は言う。
「詩音が戻ってきたらそれでいいわけでもないという展開になっています。美羽との関係性。家族とは何なのか。そういうものが見えてくるんじゃないかと。点ではなくて、線。この事件が起きてることには理由があるわけで。そういうことがちゃんと描けたらなと思います」
物語が複雑。それはすなわち、登場人物を演じる俳優たちの役づくりにも影響があるのでは? そう尋ねると、勝地は「うーん」と考え込み、今回の撮影現場で自分がどのように役と向き合っているかを振り返った。
「台本に書かれていることが、実際に現場に行ってみて、どういうリアクションになるかというのはすごく難しくて。そこを大切にしていますね。ドラマ的にもっとこうやったほうがいいという部分があったりもすると思うけど、でも実際はこうじゃないだろうなっていう。そこは丁寧にやろうと思っていて、ちょっと時間をかけて撮らせてもらっています」
「やっぱり、いくらリアルを求めても、リアルではないわけじゃないですか。自分の身に起こっていることじゃないから、想像でしかなくて。想像で台本を読んでいても、現場の雰囲気だったり、それこそ瀧本さんのセリフの言い方一つでも全部変わってくる」
そう記憶を整理し終え、先ほどの問いへの答えを導き出してくれた。
「だから、余白は残すようにしていて、役をこういうふうにしようという作り方はあまりしてないです。どちらかというと、こういうセリフは言えないかもしれない、というような相談を現場でなるべくするようにしてます」
こういうセリフは言えないかもしれない――。そこには俳優としての信念がある。
「熱い部分は武尊と似ていて。やっぱり僕は現場の人たちと、俳優と、それこそ子役に対しても、ちゃんとぶつかりたい。ぶつかると言っても衝突するということじゃなくて、人間としてグッと近づかないといけないと思っています。大人同士でいうと、ちゃんと言いたいことは言う。嘘が嫌いなんですよ、僕は」
「嘘を言いたくないから、セリフに関してはあまり妥協したくない。塩梅ではあるんですけど、それは大事にしています。ドラマだから当然、ドラマティックに書かれているところもあって、ご都合主義になってしまうこともあるんですよ。物語の流れを作らないといけないので」
「でも、僕たち俳優はそのセリフを具現化しないといけないんですよね。その時に、人が発する言葉として無理が生じていないか。それは僕たち俳優が言うべきことだと思っているので、遠慮はあまりしたくない。熱く向き合いたいと思っています」



