「親近感を持って応援したくなるような選手であり続けたい」
映画の中で、大きな存在感を放っていたのは小久保監督だ。言葉で選手を導く姿は、映像を通して多くの人の心にも訴えかける。
「4月中はすごく苦しくて大変な部分がありましたが、そういう苦しい状況の中でも自分の芯を貫く監督だと感じました」
柳町自身も、大きな壁にぶつかった。交流戦で首位打者を獲得した直後に30打席ノーヒット。どん底の中で監督から贈られた言葉は、野球人生に大きな影響を与える。
「試合前の練習で、『苦しいときに助言を求めて参考にしたくなる気持ちはわかる。でも、苦しいときに誰かに助けてもらうと、次にまた同じ状況になったとき、自分で打破できなくなる。今はしっかり自分で乗り切れ。自分で考えて、自分で実行して、それを試合で披露できるプレーヤーになれ。そういう選手が突き抜けていく。苦しいときこそ、もっと苦しめ』と言っていただいて……。苦しい状況を自分で乗り越えられた人が、成功者になって結果を残せるようになると実感した言葉でした。僕自身、打てなくて苦しくて、いつ外されてもおかしくない状況の中で、監督からその言葉をいただけて気持ち的にも楽になりましたし、必ず乗り切ってみせると覚悟を決めることができました」
愛情をもって選手を名前で“呼び捨て”にする小久保監督のスタイルもまた、ファンの注目を集める。
「そうですね。最初からずっと“タツル”と呼ばれていました」
昨シーズン中、ネット上では「柳町」から「タツル」に変わったのではないかという声もあったが、「そうなんですか!?」と驚きをあらわにする。
「あれ? どうだったかな……あまり意識したことないですね(笑)。僕の記憶の中では、ずっと“タツル”呼びだったと思います」
そして、今では「わいのタツル」として、チームの象徴に。タオルが累計販売数1万枚を超えたことも話題になった。
「そうみたいですね! 詳しい金額は聞いてないですけど(笑)。もう僕のタオルといえばアレですよね。自分の名前のタオルよりも、“わいのタツル”の方が圧倒的に目にする機会が多い気がします(笑)」
彼の活躍とともに、Xでは「#わいのタツル」の輪が広がる。その愛称を通して繋がる“タツルの保護者”たちについて、本人はこう語る。
「ここまで流行るとは思わなかったですけど、今となってはすごく嬉しいですね。みなさんが僕に親近感を持ってくれて、応援したくなるような選手であり続けたいです」
柳町達にとっての「一度壊す」とは
昨シーズンにキャリアハイの成績を残し、一躍“主力”へと駆け上がった柳町達。迎える2026年、彼は“追われる側”になる。
「気持ち的には変わらずに。今シーズンは今シーズン、来シーズンは来シーズン。僕自身にとっても、新たな挑戦のシーズンになります。もう一回しっかり体を作って、悔いが残らないように挑みたいです」
新たなポジションへの挑戦も始まる。外野に加えて、一塁を守る可能性もあるという。
「ファーストは未知数です(笑)。しっかり準備をして、あとは監督に委ねます」
パ・リーグ3連覇、2年連続日本一に向けて、小久保監督が新たに掲げたテーマ「一度壊す」。選手として大きな転機を迎えた柳町もまた、その言葉をしっかりと受けとめている。
「タイトルホルダーになることはできたのですが、いったんは忘れて切り替えたいです。良かった部分を一回壊して、来シーズンは新たな気持ちで、レギュラーとして試合に出るための競争を勝ち抜くという強い思いを貫いて、これまでの成績は関係なく、“新たな自分”で挑みたいです」
インタビューの最後に、「ありがとうございました! がんばります!」と笑顔を見せた柳町達。だが、その表情の裏には、幾度となく味わった後悔、そしてそれを乗り越えてきた覚悟が刻まれていた。
スランプ時に小久保監督から授かった言葉「苦しいときこそ、もっと苦しめ」、親友でありライバルでもある郡司との関係性「全力でぶつかり合ったからこそ、お互いを称え合える」、そして柳町自身の強い信念「もうこれ以上、絶対に後悔はしたくない」――それらの積み重ねが、今の彼を形作っている。
そして、2026年。新たな頂に挑むその姿は、きっとファンだけでなく、同じ時代を生きる人々の励みにもなるはずだ。
「諦めなければ、自分の力で必ず乗り越えていける。だからこそ、もっと強くなれる」
後悔と友情と覚悟を胸に、“わいのタツル”はこれからもバットを振り続ける。





