明けましておめでとうございます。
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今年は『空想特撮シリーズ ウルトラQ』(1966年)および『ウルトラマン』(1966年)の60周年、そして『仮面ライダー』(1971年)の55周年と、日本を代表する特撮テレビシリーズが大きな節目を迎える年です。きっと、これらを記念する企画がいくつか出てくるに違いないでしょう。
しかし、昭和~平成~令和にまたがって長く続いている「人気シリーズ作品」以外にも、我が国にはユニークなキャラクター・奇抜なストーリー展開で世の子どもたちを熱中させた、創意工夫に満ちた特撮ヒーローが大勢生まれていた事実も決して忘れてはならないことですね。
特に、今から50年前となる「1976年」に放送された「東映特撮ヒーロー」各作品は、大ブームを巻き起こした『仮面ライダー』や仮面ライダーシリーズと味わいを変えるべく、さまざまに斬新なアイデアを盛り込んだ意欲作が続出しました。「仮面ライダー」や「スーパー戦隊」だけが東映ヒーローではない! とばかりに強烈な個性を主張する、1976年東映ヒーローたちの勇姿を50年目の今こそふりかえってみたいと思います。
絶好調『秘密戦隊ゴレンジャー』『がんばれ!!ロボコン』『アクマイザー3』
1976年のトップを飾った東映特撮ヒーローは、前年(1975年)暮れに最終回を迎えた『仮面ライダーストロンガー』の後日談的エピソードとなる1時間スペシャル『全員集合!7人の仮面ライダー!!』(1月3日放送)でした。歴代ライダーの育ての親というべき立花藤兵衛と7人の仮面ライダー(変身前)がそろい、それぞれの戦いの日々をふりかえるといった豪華な内容で、約5年もの長きにわたって子どもたちの人気を集めた「仮面ライダーシリーズ」をしめくくる、満足度の高い作品となりました。
人気の高かった仮面ライダーシリーズの終了は、子どもたちにとっても少なからず寂しい気持ちを与えましたが、同時期に放送していた『秘密戦隊ゴレンジャー』(1975年)『アクマイザー3』(1975年)という東映ヒーロー2作は、新しい年を迎えてますます絶好調。カラフルな5人のヒーローが痛快に立ち回り、チームワークで悪の黒十字軍と戦う痛快アクションドラマ『ゴレンジャー』、地底のダウンワールドから人間を襲うアクマ族を裏切り、正義のために戦う三銃士の活躍を描いた『アクマイザー3』は、ともに「シリアスにコミカル風味を加えた魅力的なキャラクター」「巨大メカを中心とした特撮シーンの充実」といった娯楽要素を打ち出し、新時代のヒーローとして多くの子どもたちから愛されました。
また、1974年に放送開始したロボット人情コメディドラマ『がんばれ!!ロボコン』も、まったく人気が落ちることなく2年目に突入。ロボコンの仲間であるロボット学校の生徒も一期生&二期生が活躍し、ポピーの「超合金ロボコンシリーズ」も大ヒットしました。
春に登場した3つの「個性派」ヒーローたち
ゴレンジャー、ロボコン、アクマイザー3が前年から引き続き人気を集める中、4月の新番組として、さらに3作の東映特撮ヒーローが生まれました。それが『宇宙鉄人キョーダイン』(4月2日開始)『ザ カゲスター』(4月5日開始)『忍者キャプター』(4月7日開始)です。
『宇宙鉄人キョーダイン』は、約5年間にもわたる『仮面ライダー』シリーズを終えた毎日放送と東映が、新たなるヒーロー路線を切り拓こうとした野心作です。ロボット工学の権威・葉山博士と譲治、竜治の兄弟がダダ星のロボット軍に誘拐されて1年、ひとり地球へ残された末弟・健治の前に、スカイゼル、グランゼルという2体のロボットが出現しました。それが「キョーダイン」です。彼らはダダ星へと連行された葉山博士が作ったサイバロイド(身代わりロボット)で、幼い健治を守るためにベース円盤に乗ってやってきたのです。人類征服を企むダダ星軍団はみなロボットで構成されており、集団で襲いかかるロボット兵をはじめ、毎回の侵略活動を担うダダロイド士官たちがさまざまな特殊能力を駆使して、キョーダインに挑戦します。
本作の特徴の一つとして「軽快なロボットアクション」が挙げられます。無機的に隊列を組んで行進し、全身のパーツがバラバラになっても平気なロボット兵の不気味な動きが、細かなカット割りや軽快な効果音によって巧みに表現されました。また、スカイゼルの頭部が破損して飛んで行き、首と胴体が分かれたまま動き続けるといった漫画的なロボットアクションがコミカルな風味をかもし出しました。そして、スカイゼルがスカイジェット&スカイミサイルに、グランゼルがグランカー&グランミサイルにそれぞれ変型・合体して戦うダイナミックな攻撃方法が初期の見せ場となり、スピード感あふれる大胆な特撮演出によって迫力の戦闘シーンを作り上げました。
『ザ カゲスター』は、NET(現:テレビ朝日)と東映が『がんばれ!!ロボコン』『秘密戦隊ゴレンジャー』『アクマイザー3』と同時期に制作・放映した4番目の実写キャラクター作品となりました。子どもにとって影絵や影ふみなど、「影」は生活に密着した愉快な仲間だという分析があり「人間の影が実体化してヒーローになる」というアイデアが生まれたそうです。正義感の強い青年・姿影夫と可憐な社長令嬢・風村鈴子は、高圧線に感電したことによって、カゲスター、ベルスターというそれぞれの「分身」を生み出す能力を身につけます。2人は警察が手を焼く凶悪犯罪者たちを独自に追いかけ、影を使ったさまざまな特殊能力を駆使して活躍します。
注目したいのはカゲスター、ベルスターの奇抜なコスチュームです。「影」のヒーローでありながら、とことんまで派手なカラーリングが施されており、まさに「逆転の発想」と言える個性豊かなキャラクターが創り上げられました。さらに、変身とは異なるニュアンスの「分身」という設定もユニーク。影夫が「分身ポーズ」をとると眼前の影がカゲスターになりますが、同時に影夫は魂の抜け殻のごとく活力を失ってしまうのです。元気まんまんのカゲスターとフラフラ状態の影夫が会話する場面も見られ、作品の独自性を打ち出しました。
初期エピソードでは特定の「悪の組織」が登場せず、毎回、個性豊かな人間の犯罪者が敵となり、犯罪・推理ドラマの趣も備えていました。中盤からはドクターサタン率いるサタン帝国がレギュラーとなり、動植物をモチーフにした不気味な怪人がぞくぞく登場。正統派・変身ヒーローの作風に近づいていきました。
『忍者キャプター』は、高層ビルが立ち並ぶ現代社会にあって、いささか古風ともいえる「忍者」たちが正義と悪に分かれて戦いを繰り広げるギャップの面白さを狙って企画されました。東西大学院生・出雲大介は戦国の世から代々受け継がれてきた忍者集団・風魔党の忍者でしたが、風魔烈風が日本征服の野望を明らかにしたことに反発し、抜け忍となりました。大介を救ったのは忍び世界の大物・天堂無人。大介はキャプターチームのチーフ=火忍キャプター7となり、6人の仲間と共に風魔と戦う道を選ぶ決意を固めます。
メイン脚本に、『隠密剣士』『仮面の忍者赤影』をはじめとする「少年向け時代活劇」の大家である伊上勝を起用した本作では、現代劇でありながら時代がかったノリが全体を支配して、独自性を打ち出しました。特に、日本支配を狙う風魔烈風(後半からは甲賀の暗闇忍堂が登場)が毎回見せるハイテンションで大仰な動きと、ドスのきいた大時代的なセリフ回しは、作品の名物と言ってよいほど強烈な印象を残しました。
妖怪退治! 怖くないオバケ! 魔法を使う少年たち!
『超神ビビューン』は、『アクマイザー3』の後番組として7月6日から放送を開始した作品です。『アクマイザー3』最終回で、アクマ族の強敵・総師団長ゲベルを倒すことに成功したザビタン、イビル、ガブラでしたが、その上に君臨する「大魔王ガルバー」の呪いを受けてカプセルに魂を封じ込められました。これを受けた本作では、アクマイザー3それぞれの魂が3人の若者に宿り「三超神」として転生。体操選手の月村圭はザビタンの魂を宿した超神ビビューンに、重量上げ選手の渡部剛はガブラの魂を宿した超神ズシーンに、水泳選手の菅一郎はイビルの魂を宿した超神バシャーンとなり、大魔王ガルバーの支配下にあるさまざまな「妖怪」たちと戦う宿命を授かるのです。
ビビューンは空、ズシーンは大地、バシャーンは水をモチーフとしたデザインで、JAC(現:JAE)によるアクションも3人の特性を活かし、工夫に満ちたものに仕上がっています。ビビューンは自ら火球となって敵に体当たりする「火の玉アタック」という豪快な必殺技を持っており、そのストレートな演出が強いインパクトを残しました。彼らが戦う敵である妖怪たちも個性豊かで、古来より土地に棲みつき人間の精気を奪い取るというオーソドックスな恐怖をもたらす妖怪が多く登場し、三超神を苦しめています。
『ぐるぐるメダマン』は7月10日に放送開始した作品です。『丸出だめ夫』(1966年)や『忍者ハットリくん』(1966年)の流れをくむ東映のキャラクターコメディドラマで、こわくないオバケ・メダマンと仲間たちが人間社会で巻き起こす珍事件を描く物語となりました。メダマンをはじめとするキャラクターデザインを人気ギャグ漫画家の吾妻ひでおが担当し、マンガの世界から飛び出たような奇想天外なキャラクターが画面せましと動き回りました。メダマンはマミの持っているネックレスの水晶玉を取り戻したいものの、神様から「人間のために良いことをしなければ水晶玉は返さない」と命じられたため、人間社会に留まっています。コミカルなストーリーの中で、メダマンとマミの種族を越えた友情が観る者の感動を呼びました。
『ザ カゲスター』の後番組として12月6日に放送開始した『5年3組魔法組』は前作と趣向を変えて、ファンタジックな少年ドラマが志向されました。5年3組の仲良し5人組はある日、魔女ベルバラから魔法の7つ道具が入った「MJバッグ」を貰います。しかし魔法が使えるといってすべてが便利になるわけでもなく、使い方次第でとんでもない災難がやってくることもありました。なにかと首をつっこみたがるイタズラ好きなベルバラに振り回されながら、5人は日常で起こる様々な事件を魔法で解決しようと奮闘します。
長所と短所のはっきりした仲間たちが、互いに助け合いながら難事件に挑んでいくストーリーの面白さや、巨大な飛行メカ・マジッカーに代表される7つ道具の魅力、子どもたちと一緒になって笑ったり泣いたり、感情表現の豊かな魔女ベルバラの存在感など、視聴者である子どもたちの夢と冒険心をはぐくむ良質の作品となりました。
1976年という時代
最後に、これまでご紹介してきたユニークな東映特撮ヒーローたちが活躍した「1976年」という時代をより身近に感じていただくべく、50年前の「子ども文化」を中心に、いくつかのできごとを時系列順に列挙してみましょう。
まず、日本じゅうを騒がせた天下の政治汚職事件が2月に勃発しました。それがいわゆる「ロッキード事件」です。大人の世界がこの事件で大騒ぎしている中、子どもたちは「ザ・ドリフターズ」加藤茶の影響もあって、渦中の人である田中角栄前総理大臣のモノマネで遊んでいたりしていました。
春休みとなる3月終盤。映画館では毎年恒例の「東宝チャンピオンまつり」と「東映まんがまつり」が競合し、子どもたちの興味を集めました。春の「東映まんがまつり」は劇場新作アニメーション映画『長靴をはいた猫・80日間世界一周』や『ロボコンの大冒険』『グレンダイザー対グレートマジンガー』など豪華5本立てとなり、高い注目を集めました。
5月には、元祖カップ焼きそばの「日清UFO」が発売開始。CMでは、「わかるかなぁ~、わかんねえだろうな~」という一風変わった漫談で人気者となった松鶴家千とせが起用され、大ヒット商品になりました。
6月の熱き話題は、プロレスラーのアントニオ猪木がボクシング世界王者モハメッド・アリに異種格闘技戦を挑んだこと。緊張感あふれる試合中継を、大勢の人々が固唾を飲んで見守りました。
7月には、4年に一度のスポーツの祭典・オリンピック(夏季)がカナダのモントリオールで開催。この年、ルーマニア代表の女子体操選手ナディア・コマネチが大活躍を見せています。その愛らしい容姿とユニフォーム姿は「白い妖精」と呼ばれ、世界にその名を知らしめました。
夏休みに入ると、またもや「東映まんがまつり」が催され『アリババと40匹の盗賊』『グレンダイザー・ゲッターロボG・グレートマジンガー決戦!大海獣』『秘密戦隊ゴレンジャー 爆弾ハリケーン(劇場用新作)』『ザ カゲスター(劇場用新作)』など、充実の7本が上映されました。
8月は、昭和の芸能史にその名を残すビッグアイドル「ピンクレディー」の2人がデビューした月でした。デビューシングル「ペッパー警部」を皮切りに「ウォンテッド」や「サウスポー」など、次々とヒット曲を飛ばす彼女たちの振り付けを、いち早く覚えようとする子どもたちが続出しました。
9月には、40年もの長期連載を成しとげた秋本治の人気漫画『こちら葛飾区亀有公園前派出所』が『週刊少年ジャンプ』誌上でスタート。秋本はデビュー当初「とにかく注目される名前を」という理由からペンネームを「山止たつひこ」としていました。それは『週刊少年チャンピオン』の大ヒット漫画『がきデカ』の作者・山上たつひこの名前をもじって付けた大胆な名前でしたが、早いうちに改名が行われています。
10月にはNET(現:テレビ朝日)で『欽ちゃんのどこまでやるの!』が放映開始。『欽どこ』の愛称で親しまれました。また同月には、同じくNETにて西田敏行、加山雄三、伊東四郎、小松政夫という豪華メンバーが出演の『みごろ!たべごろ!笑いごろ!』も放送開始され、いずれも老若男女を巻き込んで人気を博しました。
10月はまた、読売巨人軍の王貞治選手が、ベーブ・ルースの714本を破って世界第2位となる通算715号のホームランを打った月でした。王選手は翌年、さらにハンク・アーロンの保持する世界記録「755本」を破る756号ホームランを放ち、「世界の王」と呼ばれ称えられました。
50年前の娯楽の王者といえば、なんといっても「テレビ」でした。うつろいやすい子どもたちの興味をブラウン管にひきつけ、なんとか目をそらせないようにしてもらうため、作り手たちが知恵と努力をふりしぼりながらかたちにしていた数々のテレビ番組は、50年という時間を経てもなお、それぞれが強いエネルギーを発しているように思えます。







