世界的な半導体需要は今後も大きく伸びていく見通しで、金融市場でも関連株の動きが注目を集めている。しかし、日本だけは売上高が減少しており、エンジニア不足も顕著だという。こうした半導体について派遣事業・人材育成を行うUTエイムが11月20日、「セミコンダクター事業戦略に関する記者説明会」を開催した。本稿では、その内容を詳しく紹介する。

売上高減少で苦戦する日本の半導体産業

今回の説明会では、UTエイム 代表取締役 セミコンダクター事業部門 部門長の山岸建太郎氏より、UTグループの概要、セミコンダクター事業部門の展開と業界の現状、そして、半導体エンジニアの育成計画について解説があった。

1995年創業のUTグループは、製造業向け人材サービス事業を手掛け、2025年9月末時点で約3万5,000名を顧客企業に派遣している。グループ企業にはUTエイムのほか、富士通や東芝といったメーカーとの合弁会社なども含まれる。

キャリア形成支援としては、半導体エンジニアへ職種転換できる「One UT」や顧客企業への転籍が可能な「Next UT」など独自の制度を展開している。今回説明会を行ったUTエイムはUTグループの完全子会社であり、自動車業界と半導体業界を対象とした人材サービス事業を担う企業だ。

UTグループが人材を提供する製造業で働く人は、2024年時点で1,046万人。これは卸・小売業で働く人の数とほぼ同数であり、働く人全体に対する割合は15.4%となる。

しかし、「ここ30年で製造業で働く人は減少傾向にあり、2024年も前年比マイナス9万人となっています」と山岸氏は懸念する。ちなみに、半導体産業には約62万人が従事し、このうち外部人材となる派遣社員は約5万2,000人だ。半導体産業では、他の製造業に比べて外部人材の活用率が高いという。

UTエイムについては、半導体関連の拠点・職場数(顧客の工場や研究所)が全国に200カ所超存在する。

顧客は大きく、半導体デバイスそのものを作る「半導体製造」、半導体を作るための機械を製造する「半導体製造装置製造」、半導体の生産に必要な素材を扱う「半導体素材」、そして、できあがったデバイスが要求仕様通りになっているかをテストする「半導体テスト」の4つだ。

同社からこれらの顧客のもとに派遣される社員数(一部請負もあり)は、約6,200名にのぼる。

では、半導体産業そのものはどのような現状なのか。「現在、半導体産業は生活を支える基幹産業であり、世界的には市場規模を拡張しています」と山岸氏は切り出した。2025年9月の世界半導体売上高は、前年同月比25.1%増の695億米ドルだ。

ただ、日本だけは状況が違う。山岸氏は、「日本は唯一、売上が4ヶ月連続で落ちており、直近9月は前年同月比で10.2%減っています。6月から9月までずっと減少傾向で、9月が最も減少幅が大きかった。これが日本の半導体産業の現状です」と続けた。

現在の半導体産業の伸びは、もっぱら生成AIのデータセンターの需要によるものだ。しかし、日本で展開されている半導体顧客の主製品は、この生成AIとは直接関係ない企業が多い。さらに、EV市場が伸び悩んでいることもあり、国内生産は減少傾向なのだという。

今後の製造業における労働需給の予測も出ている。工場で働く「生産工程」職種については、2年後の2027年を境に供給不足が始まる見通しだ。山岸氏によると、需要については生産工程の自動化・ロボットも含めて横ばいだが、供給が下がり続けているという。その結果、2040年には需給に100万人以上のギャップが出ると予測されている。

半導体産業においても、特にエンジニアの人手不足が顕著だという。これについて山岸氏は、「お客様と話していても、10年前と比べて半導体の求人倍率は10倍以上悪化しています。人を取りたくてもなかなか取れない。これが半導体産業における人材の状況です」と不安を述べた。

UTエイムが注力する「半導体エンジニア育成計画」とは

半導体産業のこうした現状を受け、UTエイムでは半導体エンジニアの育成に力を入れる。

エンジニアといっても、半導体分野におけるエンジニアには多種多様な職種がある。山岸氏によると、UTエイムではエンジニアを「ハイエンド」「ミドルレンジ」「エントリー」と区分し、ミドルレンジからエントリー層の育成、供給を主に進めているという。

具体的には、「保守保全エンジニア」「フィールドエンジニア」「テスト開発エンジニア」に注力する。

保守保全エンジニアは、半導体工場にあるさまざまな生産機械の保守および保全を行うエンジニアだ。フィールドエンジニアは、生産機械を半導体装置メーカーに持って行き、調整を行い、トラブルが起きたら解決まで導く。そして、テスト開発エンジニアは、主にデバイスメーカーにおいて、作った製品が要求仕様通りにきちんと動くのか確認する業務を行う。

また、同社ではまず製造に関わる「オペレーター」という職種で業務に就く。ここで1〜3年の育成期間を経て、エンジニアとして巣立つという人材開発モデルを組み込んだ派遣事業を展開しているという。

この半導体エンジニア育成のための施設が、全国に点在する「テクノロジー能力開発センター」および「テスト技術者育成センター」だ。

テクノロジー能力開発センターでは、15日間の教育カリキュラムを提供している。このカリキュラムを受けることで、半導体製造や電気機械に関わる知識、工具の基本的な使い方から現場での仕事の進め方、社会人としての基礎知識まで幅広く学習できるのだ。なお、同センターでは保守保全およびフィールドエンジニアを育成し、3年で3,000人のエンジニア輩出を目指している。

一方、テスト技術者育成センターでは、テスト開発エンジニアの育成に専念する。テスト開発エンジニアは、顧客の試作から量産までの一連の流れに対し、ワンストップで受託開発する職種だ。たとえば、試作段階においてサンプル品を抜き出し、それが要求仕様通りに動くかどうか確認する。ただし、テストの方法は製品によって異なるため、顧客に合わせてテストを行う必要があるという。

なお、半導体エンジニアに関しては、「国や地方自治体、そして業界をあげての人材育成が強化されています」と山岸氏は強調する。UTエイムでもさまざまな機関と協力して人材育成を進めているが、その取り組みの中には、「VR・メタ空間」を活用した育成方法もある。

同社では、安全な工具の使い方やコミュニケーション、共同リーダー育成まで、現場で求められるスキルがVRのリアルな体験を通して習得できるのだ。

その他、半導体エンジニアとしての適性がある人材を約6200名の従業員の中から厳選するため、AIを用いた面談も取り入れている。

エンジニア不足を解消すべく転籍制度も推し進める

UTエイムでは、顧客企業に転籍できる「Next UT」への取り組みも活発だ。セミコンダクター事業においては、2024年は約140名がこの制度で転籍し、2025年はそれを大きく上回る250名を目標に掲げている。山岸氏は顧客企業においてもエンジニア不足を顕著に感じており、その解決策の1つとしてこの制度を推進しているという。

さらに、エンジニアの育成は1ヶ月単位ではできず、1年や2年、3年という時間をかけて計画的に行う必要がある。そのため、全国に約200カ所ある職場を計画的に異動し、最終的にエンジニアとなる異動育成プランも進めている。

「こうした異動と教育をセットにしたキャリアパスを具体化し、エンジニアを育て半導体産業に届ける施策を行っています」と山岸氏。それを実現するため、同社ではいわゆるタレントマネジメントシステムのデータベースも活用している。

日本の半導体産業は現在、厳しい状況が続いており、復活を目指す最中にある。山岸氏は最後に、エンジニア不足に加え、半導体産業そのものが学生にとって身近でない点も課題として挙げた。「だからこそ、早い段階で半導体の魅力を知ってもらい、学びの機会を持つことに力を入れたい。そのために本日のような場を設けています」と話を締めくくった。