義理の娘であるプリンセスさんが、母・テスさん亡き後、義妹のマリコさんの母親役を担い、働きながら平山さんを看病し、最後まで寄り添った姿も胸に迫るものがあった。
「プリンセスさんの真の胸中は知る由もありませんが、平山さんを放ってはおけなかったんだと思います。妹のマリコさんの面倒を見るプリンセスさんの言動が、在りし日のテスさんそっくりで…。血縁を超え、家族になれたということなんでしょうね」
平山さんがたどった数奇な人生を前にして、「『どうでしたか?』と言われても、誰かが送った人生に、良いも悪いもないから私には何も言えない」と、きっぱり語った尾野。
「“もしあの時、平山さんにお金があったら…”とか、“もし○○だったら…”みたいに“たられば”を言い出したらキリがない。平山さんが“こういう人”だったからこそ、“こういう人生”だったのだと思います。たとえ苦しい生活を送ろうとも、周りにいた人たちが口々に『あの人がいてくれて幸せだった』と言えるのは、平山さんが常に笑顔を絶やさない人だったから。だから私もナレーションをしながら涙してしまったんです」
「自分に正直に、ちゃんと生きる」をモットーに
取材の終わり、去る11月4日に44歳の誕生日を迎えたばかりの尾野に、今後の抱負を尋ねると、迷いのない言葉が返ってきた。
「また来年も、“女優になるために”頑張りますし、徐々に整いつつある今の生活や仕事を充実させていけたら…と。そうすればきっと幸せだろうし楽しいと思います」
とはいえ、具体的に「何かをやろう」と決めているわけではなく、あくまでも直感を大事にしているのだそう。
「“思い立ったが吉日”タイプなんです。前もって準備することはほとんどなくて、『楽しい!』と思ったらすぐ始めちゃう。仕事も遊びも、気持ちに正直にいたいんです」
最近も、そんな性格が表れた出来事があった。
「ある日ふと、“台湾に行きたい!”と思い立って、その翌日にはもう台湾にいましたから(笑)。そこに理由なんてなくて。“あっ、なんかいま台湾の匂いがした気がする!”とか。“暑いから”とか“寒いから”とか。本当にそんな感じで行き先が決まるんです。それこそ来年、フィリピンにいたりするかもしれないですし(笑)。人生何があるかわかりませんからね。そろそろ文化の異なる場所で、何かを得たいと思っているんです」
その自由さこそが、尾野真千子という人を形づくっている。
「どんな時も自分の気持ちに正直に生きていたら、きっとお芝居の幅も広がるだろうと思うんです。“自分に正直に、ちゃんと生きる”――。それが、私のモットーです」
●尾野真千子
1981年生まれ、奈良県出身。97年に映画『萌の朱雀』で主演デビューし、『火の魚』『Mother』『名前をなくした女神』『カーネーション』『最高の離婚』『ライオンの隠れ家』『阿修羅のごとく』などのドラマ、『クライマーズ・ハイ』『そして父になる』『茜色に焼かれる』『新幹線大爆破』などの映画に出演。NHK連続テレビ小説『虎に翼』では語りを担当した。2026年には映画『たしかにあった幻』『仏師』が全国公開予定。
