草なぎ剛が主演を務めるカンテレ・フジテレビ系ドラマ『終幕のロンド-もう二度と、会えないあなたに-』(毎週月曜22:00~ ※FODほかで配信)の第6話が、17日に放送された。

妻の死をきっかけに“遺品整理人”となったシングルファーザーの主人公が、遺品整理や生前整理を通じて、残された家族へのメッセージをひも解いていくというヒューマンドラマ。

今回は、物語の縦軸として描かれてきた、真琴(中村ゆり)の母・こはる(風吹ジュン)の生前整理にひとつの決着がついたエピソードだった。そしてその様子を、静かな余韻とともに美しく描いていたのだが、俯瞰してみると、今作が提示する“遺品整理人”という職業の哲学が、より鮮明になったようだった。

  • 若き日のこはるを演じた本間日陽 (C)カンテレ

    若き日のこはるを演じた本間日陽 (C)カンテレ

断罪されるテーマを純粋なものとして描く

ここ数年のテレビドラマにおける大きな潮流と言えば“不倫”だろう。恋愛ドラマとしての障壁が作りにくい現代において、不倫は劇的な感情の起伏を生みやすい設定であることから、多くの作品で扱われてきた。

そして不倫の物語は、視聴者の共感を得るために、その“罪”と“報い”が描かれるのが常である。誰かの犠牲の上に成り立つ幸福を美化してはならない。そんな価値観を前提にすることが条件にもなっているのだ。

では、今回のこはるの物語はどうだっただろうか。こはるは妻帯者の佐々木(加治将樹)と恋に落ち、駆け落ちをする。しかしその後、佐々木の妻が自殺未遂を起こし、彼は元の家へ戻り、2人は別れることとなる。表面的に見れば、大きな代償と引き換えに、形としては失われた恋。“罪”と“報い”が求められる、断罪されてもおかしくない物語だ。

だが今作は、その恋を断罪するどころか、こはるが語り残した過去の記憶を瑞々しく、純粋なものとして見せた。さらにラストで映し出されたのは、佐々木の残した“こはるの肖像”で、そこには美しさと静かな感動が宿っていた。不倫という題材を前にしながら、それらを堂々と、あえて言うなら“美化”してみせたのである。

誰にも侵害されてはならない“尊厳”

なぜだろうか。それは当然、この作品が“遺品整理人”の物語だからだ。

遺品整理とは、故人と向き合うことであり、生前整理とは、自らの過去と向き合う行為である。“不倫”というフィルターがかかっていたとしても、自分が確かに生きた時間までをも悪として断罪することを、誰ができるだろうか。人が自分の人生と向き合うとき、それはどうしても美しい記憶として浮かび上がってくるものだ。そしてそこにあるのは、誰にも侵害されてはならない“尊厳”なのではないか。これこそが、本作が“遺品整理人”を描く意味なのだ。

その哲学を強く印象づけたのは、“こはるの肖像”を前に娘の真琴が涙を流す一方で、こはる自身は一滴の涙も流さず、ただ静かに受け止めていた――という事実である。

不倫は、多くの視聴者が「自分だったら…」と簡単に想像できる題材だ。だからこそ断罪も共感もたやすい。しかし、こはるのあの静かな横顔を前にして、単純に“美化”だと切り捨てられるだろうか。むしろ、彼女が語った“覚悟”に、さらなるドラマチックを感じてしまった人のほうが多いのではないだろうか。

その複雑さ、答えのなさ。美しさと醜さが共存する感情の揺らぎこそが、『終幕のロンド』なのだ。

  • (C)カンテレ