どの局のテレビマンと話していても「今年の秋は凄いね」「こんなにそろうこともあるんだ」などとポジティブな声が返ってくる。実際、今秋は老若男女が好みの作品を選べるような期待感のあるラインナップがそろった。

主要作がそろったこのタイミングで「本当に質が高くて、今後期待できる作品」を唯一のドラマ解説者・木村隆志がピックアップ。俳優名や視聴率など「業界のしがらみを無視」したガチンコで2025年秋ドラマ主要20作の傾向とオススメ5作(第1弾)、後日掲載の第2弾では、目安の採点付き全作レビューを挙げていく。

2025年秋ドラマの主な傾向は、【[1]ドラマ史上最高レベルの豪華キャスト [2]新旧の脚本家が顔を合わせた異例の状況】の2つ。

  • 『ザ・ロイヤルファミリー』出演の妻夫木聡

    『ザ・ロイヤルファミリー』出演の妻夫木聡

傾向[1]ドラマ史上最高レベルの豪華キャスト

今秋は局を挙げた大作がそろった。TBSの『ザ・ロイヤルファミリー』(日曜21時)は、妻夫木聡、目黒蓮、松本若菜、小泉孝太郎、沢村一樹、佐藤浩市。

フジテレビの『もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう』(水曜22時、以下『もしがく』)は、菅田将暉、二階堂ふみ、神木隆之介、浜辺美波、菊地凛子、小池栄子、市原隼人。

テレビ朝日の『ちょっとだけエスパー』(火曜21時)は、大泉洋、宮崎あおい、ディーン・フジオカ、北村匠海、岡田将生。

それぞれ単独主演を務めてもおかしくない俳優が5~7人集結。「大河ドラマ級」とも、「『VIVANT』級」とも言いたくなる豪華さがあり、それが3作そろったことに驚かされる。

その他でも『絶対零度~情報犯罪緊急捜査~』(フジ系、月曜21時)の沢口靖子、『緊急取調室』(テレ朝系、木曜21時)の天海祐希、『コーチ』(テレビ東京系、金曜21時)の唐沢寿明、『終幕のロンド ―もう二度と、会えないあなたに―』(カンテレ・フジ系、月曜22時)の草なぎ剛ら大物主演俳優がそろい踏みしている。

1つ前の夏クールを振り返ると、無難なジャンルやリメイク、続編などの保守的な作品が大半を占めていた。「イベントや長期休暇などで継続視聴が難しい夏をグッと耐えて、秋に大勝負をかけよう」という戦略が見て取れる。

ただ、「『もしがく』は三谷幸喜の脚本、『ちょっとだけエスパー』は野木亜紀子の脚本、『ザ・ロイヤルファミリー』は塚原あゆ子の演出と早見和真の小説に主演級俳優が引きつけられた」と言っていいだろう。近年、地上波のドラマは有料動画配信サービスとの比較上、予算面などで難しさが指摘されているが、「この人の作品なら出たい」というオファーなら十分勝負できることが明らかになった。

しかし、豪華キャストが集まった分、見る側のハードルは高くなる。「面白くて当然」とみなされ、「キャストを集めただけ」と酷評されるリスクは上がっていく。事実そのためなのか、前述した3作は序盤、必ずしも期待感ほどの支持を得られていないようにも見える。中盤から終盤にかけての盛り上がりに期待したい。

  • 『すべての恋が終わるとしても』出演の神尾楓珠

    『すべての恋が終わるとしても』出演の神尾楓珠

傾向[2]新旧の脚本家が顔を合わせた異例の状況

前の項目で三谷幸喜と野木亜紀子の名前をあげたが、それ以外でも『緊急取調室』の井上由美子、『小さい頃は、神様がいて』(フジ系、木曜22時)の岡田惠和と、これまで業界を牽引してきたベテラン脚本家がそろった。いずれも名前だけで視聴者を集められる稀有な存在であり、局のプロデューサーや演出家との信頼関係という点でも強みが見られる。

特筆すべきは、同じクールのゴールデン・プライム帯に新人脚本家が名を連ねていること。

『フェイクマミー』(TBS系、金曜22時)の脚本家・園村三は、脚本家の発掘・育成プロジェクト「TBS NEXT WRITERS CHALLENGE 2023」の第1回大賞受賞者。さらに『ぼくたちん家』(日本テレビ系、日曜22時30分)の松本優紀も「日テレシナリオライターコンテスト」の2023年度審査員特別賞受賞者だった。

ちなみに『TBS NEXT WRITERS CHALLENGE』は過去6回行われた『TBS連ドラ・シナリオ大賞』をリニューアルする形で6年ぶりに復活した脚本家発掘のコンテスト。一方の『日テレシナリオライターコンテスト』は18年ぶりに開催されるなど、どちらも脚本家の発掘に力を入れはじめていることは確かだ。

これは「長年、脚本家発掘のコンテストを続けてきたフジテレビとテレビ朝日に頼らず自局でも発掘・育成していかなければいけない」という強い意志によるものだが、今回抜てきされたのはどちらも2023年度の受賞者。そのスピード感に驚かされるとともに、「百戦錬磨のプロデューサーとタッグを組ませて育成しよう」という方針がうかがえる。

思えば2022年に『silent』(フジ系)でデビューした生方美久は、前年の『フジテレビヤングシナリオ大賞』大賞受賞者だった。生方はその後も『いちばんすきな花』『海のはじまり』と順調なキャリアを歩んでおり、他局の新人脚本家抜てきに火をつけた感がある。

秋ドラマが終わる12月中旬、新旧の脚本家がどんな評価を受けているのか。その推移に注目している業界関係者は多い。


  • 『もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう』出演の菅田将暉

    『もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう』出演の菅田将暉

  • 『じゃあ、あんたが作ってみろよ』出演の竹内涼真

    『じゃあ、あんたが作ってみろよ』出演の竹内涼真

  • 『シナントロープ』出演の水上恒司

    『シナントロープ』出演の水上恒司

これらの傾向を踏まえた今クールのおすすめは、『ザ・ロイヤルファミリー』、『すべての恋が終わるとしても』(ABC・テレ朝系、日曜22時15分)、『もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう』の3作。

『ザ・ロイヤルファミリー』は、実質的なダブル主人公の生き様に加えて、馬たちの映像美が楽しめるハイブリッドなエンタメ作。熱さ・絆・逆転劇という『日曜劇場』のベースを兼ね備えた物語で同枠視聴者のニーズに応える姿勢は頭ひとつ抜けている。

『すべての恋が終わるとしても』は、今や絶滅危惧種となった“切なさ”を追求した恋愛ドラマ。不倫や略奪などの過激さに頼らず、どこにでもある一般人の恋に徹した物語は希少価値が高く10・20代に勧めたくなる。

『もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう』は、脚本を手がけた三谷幸喜の思い入れがたっぷり詰まった設定に賛否が分かれる作品。しかし、回を追うごとに登場人物への愛着が増し、小さな奇跡の積み重ねが心地よくなってきた。

さらに、『じゃあ、あんたが作ってみろよ』は竹内涼真の演技と自由度の高い演出が出色。このところ多発していた令和人の昭和人イジリがもう少し抑えられていたらイチオシにしたいところだった。『シナントロープ』はクリエイターのこだわりを凝縮させたアングラムードが漂う秀作。若手俳優が伸び伸びと演じている姿に癒される。あまり考えずに楽しめるライトファンタジーが好きな人は『ちょっとだけエスパー』もおすすめしたい。

「視聴率や先入観だけで判断して見ない」というのはもったいないだけに、TVerや各局の動画配信サービスなどでチェックしてみてはいかがだろうか。

2025年秋ドラマ オススメ5作

  • No.1 ザ・ロイヤルファミリー (TBS系 日曜21時)
  • No.2 すべての恋が終わるとしても (ABC・テレ朝系 日曜22時15分)
  • No.3 もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう (フジ系 水曜22時)
  • No.4 じゃあ、あんたが作ってみろよ (TBS系 火曜22時)
  • No.5 シナントロープ (テレ東系 月曜23時6分)