スコラ・コンサルトは10月30日、転職や働くことに関する意識についての調査結果を発表した。調査は2025年5月23日~5月26日、全国の社員100名以上の企業に勤める一般社員・管理職2,106名を対象に、インターネットで行われた。
仕事やキャリアについての考え方
仕事やキャリアの考え方について、あてはまる割合を性別に見ると、男性の方が「成長・成果志向」が高い、女性の方がやや「貢献志向」が高い、という傾向が見られる。女性は「プライベートを大事に」「仕事は収入を得る手段」と割り切る傾向が強くなる。性別役割意識が垣間見えるが、「やる気が下がった」割合、「割り当てられた業務以上のことはなるべくやらない」割合に男女差はみられなかった。
男性30代は他の年代や女性よりも「やる気が低下」
性別に年代を掛け合わせた。男性30代は「プライベート」重視や「仕事は収入を得る手段」の割合が他の年代や女性に比べて高くないにもかかわらず、「貢献志向」が低めで「やる気が下がった」割合が高いという特徴がある。男性20~30代には「割り当てられた業務以上のことはなるべくやらない」傾向が比較的見られる。男性20代の結果からは「会社やチーム」「顧客や取引先・仕事相手」への貢献よりも自身の「キャリアアップや成長」を重視していることもうかがえる。
女性では、20代で「キャリアアップや成長」を重視、30~50代で「成長・成果志向」が低めだった。女性20~40代は「割り切り志向」が高めで、特に20代では「割り当てられた業務以上のことはなるべくやらない」割合が高い。
女性の方が「やる気低下」の理由をたくさん挙げる
やる気が下がった理由を性年代別のグラフにした。女性40~50代は、「評価や報酬が見合わない」「昇給・昇進が期待できない」「問題が改善されない」「上司に不満」を挙げる割合が高い。女性30代もそれと似た傾向だが、「プライベートな理由で余裕が無い」「同じ作業の繰り返しでマンネリ化」が他の性年代に比べて高かった。また、男性よりも女性の方が高い項目が多かった。やる気低下原因を明確に意識しているのかもしれない。
男性が高めの項目は30~50代の「会社の体質や企業風土」、50代の「昇給・昇進が期待できない」だった。男性20代では「同じ作業の繰り返しでマンネリ化」が比較的多く3番目の理由になっているが、男女ともに20代は上の年代に比べて各項目の回答が少なく特有の不満があまり表れていない。
男女ともに30代以上で「会社の体質や企業風土」「問題が改善されない」「業務量が多すぎ」という組織的課題が多く挙がった。
前問でやる気低下傾向が比較的強かった男性30代は、「会社の体質や企業風土」の割合が高く、1番の理由となっているが、他の性年代以上にやる気を低下させるような、彼ら特有の原因は見当たらなかった。
職場の人とは「あまり関わりたくない」が54.4%
職場の人とプライベートや業務外でも交流するような関係を望むのは全体の45.7%。一方、「業務上の関係だけにとどめ、できるだけ個人的な関わりは持ちたくない」と「業務上でもなるべく関わりを持ちたくない」を合わせると、職場の人とは「あまり関わりたくない」と考える人は54.4%で過半数を占める。
性年代別に見ると、男性40代は比較的交流を望む傾向があるが、それ以外の性年代は全体値と同じような傾向だった。マネジメントする側は、統率するために部下に対してコミットメントを求めるかもしれないが、全体として見ると上の年代でも「あまり関わりたくない」人が半数程度という結果に。
所属する会社で満足していること
所属する会社で満足していることを性年代別のグラフにした。男女20代は「給与・賞与・福利厚生」の満足度が相対的に低めだが、「キャリアアップや成長ができる」環境に満足する傾向がみられる。女性20代は「上司・同僚・部下の人間関係」の満足度も高かった。
男性30代の「残業や休日出勤が少ない、休みがとりやすい」は男性の中では高めだが、その他には男性30~40代が他の性年代よりも際立って高い項目はない(低めの項目は「上司・同僚・部下の人間関係」「仕事内容が希望や興味に合う」「職場の環境(立地など)」)。
女性30代は、「残業や休日出勤が少ない、休みがとりやすい」が突出している。「給与・賞与・福利厚生」「上司・同僚・部下の人間関係」なども高かった。女性40代もそれに準じる。
男性50代は「上司・同僚・部下の人間関係」の満足度が他の性年代に比べて最も低い。女性50代は「給与・賞与・福利厚生」「キャリアアップや成長できる」が相対的に低い。
転職経験と転職意向
転職を経験した割合は上の年代ほど高く、男女ともに20代から40代まではその傾向が顕著だった。反対に、今後の転職意向は若年層ほど高い。「転職経験あり」と「転職意向あり」の割合は、各年代の中では、女性の方が男性よりも高い傾向がみられた。
転職理由、女性では「上司に不満」が上位に
転職理由を性年代別のグラフにし、上位項目を表にまとめた。人によっては20~30年前に転職していることもあるので、現職の勤務年数が10年未満の人に限定している(最近10年以内の転職理由となる)。
「給与・賞与・福利厚生」「会社の体質や企業風土」はほとんどの性年代で3位以内に挙がった。次いで「評価や人事が不透明」や「自分の評価に不満」が男性各年代と女性40~50代でランクインしている。
男性20代で「(自分の)成長が不十分」、男性30代以上で「将来性に不安」が上位に挙がった(男性40~50代は「方向性に疑問」も上位)。男性40代は「負荷が集中」「自分の評価に不満」が突出している。
女性は各年代で「上司に不満」が上位に挙がった(40代では1位)。その他には「残業や休日出勤の多さ・休みのとりづらさ」「プライベートな理由」というワークライフバランス関連も挙がった。男性でも30代で「プライベートな理由」、50代で「残業や休日出勤の多さ・休みのとりづらさ」がランクインしている。
転職して「今の会社の方が良い」割合は20~30代が高い
転職者が前職と現在所属する会社について各種項目を比較し、「今の(会社の)方が良い」と回答した割合を性別、性年代別にグラフにした。
性別に見ると、「人間関係」について「今の方が良い」割合は女性の方が5.6%高い。その他の項目には大きな差はみられなかった。
性年代別でみると、男性20代の「残業時間・休日出勤・柔軟な働き方」、女性20代の「給与や福利厚生」は、「今の方が良い」が5割前後と低いが、男女20代のその他の項目は比較的高い。
男女30代は、転職先の勤務条件、「成長できる環境・仕事のやりがい」を評価している。女性30代はそれに加えて「人間関係」「会社の体質や企業風土」の評価も高い。
男女40代では、「成長できる環境・仕事のやりがい」が若年層に比べて低い。女性40代はそれに加えて「会社の体質や企業風土」の評価も低かった。
男女50代では、「成長できる環境・仕事のやりがい」のほか、「人間関係」「会社の体質や企業風土」の評価も低い。特に男性50代の「人間関係」は30%台にとどまる。
「総合的な評価」について「今の(会社の)方が良い」と回答した割合は、男女50代が低く、40代以下と開きがあった。
性別・年代別分析から見える傾向
今回の調査結果から、次の傾向が明らかになった。
「20代男女」は、積極的に表明するのではなく、自分のキャリアアップや希望条件に合う転職に意識が向かっているのではないかと推察される。
「30代以上の女性」は、プライベートな理由による余裕のなさや人事評価、職場や上司への不満を抱えているが、転職の機会を柔軟に活かしつつ、休みのとりやすさや人間関係にはある程度満足しているようだ。特に30代はプライベートを大事にし、収入のためと割り切って仕事をしながらも、職場で満足できるポイントを見いだしている様子がうかがえる。
「30代男性」は、やる気が低下している背景は、一見わかりづらいが、転職理由には「自分に仕事の負荷が集中」や「経営や将来性に不信・不安を感じた」「プライベートな理由」が挙がる。転職経験者に関しては、それらの不具合を解消する転職ができているのかもしれないことが転職前後の比較分析から読み取れる。
「40代男性」は、仕事で成果を出すことを重視し、企業風土や職場の人との交流にも関心を払っているが、関係には満足できておらず、仕事の負荷も集中しているなど、孤軍奮闘している印象が見らえる。
「50代男性」は、仕事の成果や職場での貢献を重視しつつも、人事評価が今以上に高まることはあまり期待できずに、ワークライフバランスを重視する方向へ意識が移りつつあるとみられる。












