MM総研は10月9日、「ポイント/決済サービスの携帯キャリア別利用状況調査」の結果を発表した。調査は2025年8月7日~25日、15~79歳の男女2万6979人を対象にインターネットで行われた。

  • サービスごとのキャリア別クロスユース率(2025年8月時点)

    サービスごとのキャリア別クロスユース率(2025年8月時点)

ポイントのクロスユース率は楽天が7割超でトップ

携帯キャリア(グループ企業含む)が提供するポイントサービスのクロスユース率は、楽天モバイルユーザーによる「楽天スーパーポイント」が75.5%で最も高く、2019年の調査開始以来最高となった。2位はドコモの「dポイント」で39.6%、3位はソフトバンクの「PayPayポイント」で37.5%だった。

  • 携帯キャリアとポイントサービスのクロスユース率

    携帯キャリアとポイントサービスのクロスユース率

楽天はSPU(スーパーポイントアッププログラム)により、楽天モバイルの契約者は常に楽天市場で通常の4倍のポイント還元率が受けられる。契約者が楽天市場を使うメリットが大きい仕組みとなっており、クロスユース率の押し上げに寄与している。

前回調査時と比較して最も高い伸びをみせたのは、ドコモユーザーによる「dポイント」で、3.0ポイント上昇し39.6%となった。2024年12月にdカードやd払いの利用でポイント還元率が上がる「ahamoポイ活プラン」「eximoポイ活プラン」を始め、2025年6月には「ドコモポイ活MAX」「ドコモポイ活20」へと改定した。さらに、「爆上げセレクション」でNetflixやYouTube Premiumなどのサブスクリプション(定額課金)サービスの利用料金が最大25%ポイント還元される仕組みを導入し、dポイントを中心としたユーザーの囲い込みを強化している。これら一連の取り組みが、クロスユース率の押し上げに大きく寄与したと考えられる。

ソフトバンクは、新料金プラン「ペイトク」の提供により、ペイトク契約者はPayPay決済で1~10%のPayPayポイント還元が受けられるようにした。2022年3月末に「Tポイント」との提携を終了し、一時的に低下していたクロスユース率は2025年調査で37.5%まで上昇し、2020年時点のTポイント提携時の水準を超えた。PayPayを中核とした経済圏戦略が一定の成果を上げたとみられる。

auは、2024年12月に従来の「auマネ活プラン」を「auマネ活プラン+」に改定した。旧プランに比べてポイント還元率を大幅に強化し、au PAY特典を1%から最大5%に、au PAYゴールドカードの還元を1.5%から最大5%へ引き上げた。さらに、同時期に開始した「サブスクぷらすポイント」では、NetflixやYouTube Premiumなどの対象サービス利用料金が最大20%ポイント還元される仕組みを導入。こうした施策が奏功し、auユーザーのクロスユース率は2.6ポイント上昇し29.4%となった。

  • ポイントサービスのクロスユース率

    ポイントサービスのクロスユース率

QRコード決済はソフトバンクが57.3%で首位堅持

携帯キャリアが提供するQRコード決済のクロスユース率では、ソフトバンクユーザーによる「PayPay」が57.3%で最も高く、3年連続で半数超を維持した。次いで楽天「楽天ペイ」が35.0%、ドコモ「d払い」が33.1%、au「au PAY」が30.6%だった。

ソフトバンクはモバイルユーザー向けに「スーパーPayPayクーポン」を提供し、レストランやドラッグストアでPayPay利用時に使えるポイント還元クーポンを毎月配布しているほか、「ペイトク無制限」契約者にはPayPay(クレジット/残高/ポイント)の買い物で最初の3カ月10%、その後も5%還元を提供するなど、PayPayの利用メリットを強化している。また、「ソフトバンクプレミアム」の優待クーポンや、「1年間ずっとおこづかい増量キャンペーン」での送金額10~20%還元など、多面的な施策でユーザーの利用を促進している。

楽天は35.0%で前回調査比0.5ポイント低下したが、積極的なキャンペーンを継続。楽天ペイのバーコード・QRコード払いの利用で最大10万ポイントが当たるキャンペーンなどモバイルユーザー向けにポイント還元施策を展開し、利用定着を図っている。

ドコモは33.1%で同3.4ポイント上昇し、最も高い伸びをみせた。2025年6月に開始した「ドコモポイ活MAX」や「ドコモポイ活20」では、d払い決済利用時に通常より最大3~10%、1~5%のポイント還元を上乗せする仕組みを導入。利用メリットを明確化し、クロスユース率上昇につなげた。

auは30.6%(同2.4ポイント上昇)と堅調な伸びをみせた。「auマネ活プラン+ 5G/4G」や「auマネ活バリューリンクプラン」により、au PAY決済で毎月最大1500円相当のポイント還元(実質5%還元)を提供。決済特典の強化がクロスユース率押し上げの要因とみられる。

  • 携帯キャリアとQRコード決済のクロスユース率

    携帯キャリアとQRコード決済のクロスユース率

  • キャッシュレス決済のクロスユース率

    キャッシュレス決済のクロスユース率

クレジットカードは楽天カードが65.5%でトップ

携帯キャリアが提供するクレジットカードのクロスユース率では、楽天モバイルユーザーによる「楽天カード」が65.5%で最も高く、安定的に6割超を維持。次いでドコモユーザーによる「dカード」が25.5%(同2.6ポイント上昇)と大きく伸びた。ソフトバンクの「PayPayカード」は18.0%(同2.1ポイント上昇)、auの「au PAYカード」は15.8%(同1.9ポイント上昇)だった。

dカードが伸びた背景には、料金プランと連動したカード特典強化があるとみられる。ahamoを除く全プランで「dカードお支払割」が適用され、通常のdカード契約者には毎月220円、dカードゴールド以上では550円の割引が受けられる仕組みがある。加えて、ポイ活プランにおいては通常の1%還元率に1~5%が上乗せされるほか、終了日未定のキャンペーン期間中はさらに5%が還元される。これらの施策がユーザーの実質的な還元率を高め、クロスユース率の上昇を後押ししたとみられる。

ソフトバンクは2023年10月に始めた「PayPayカード割」により、PayPayカードで通信料金を支払うと毎月187円の割引が受けられる仕組みを導入。また「ペイトクプラン」では、PayPayでのPayPayカード決済(残高・ポイント払いも含む)に対し、3~10%のポイント還元が受けられる。こうした料金割引とポイント還元の二重施策がクロスユース率を押し上げたとみられる。

auは「auマネ活プラン+ 5G/4G」「auマネ活バリューリンクプラン」で、au PAYカードでの決済特典として毎月最大1500円相当のポイント還元(実質5%還元)が得られる仕組みを導入。さらに「au PAYカード特典」として、通信料金の支払い時に毎月300円割引が受けられる制度も継続している。こうした料金割引とポイント強化策がクロスユース率を底上げしている。

  • 携帯キャリアとクレジットカードのクロスユース率

    携帯キャリアとクレジットカードのクロスユース率

  • クレジットカードのクロスユース率

    クレジットカードのクロスユース率

ECサイトは楽天市場が61.4%で首位を堅持

携帯キャリアが提供するECサイトのクロスユース率では、楽天モバイルユーザーによる「楽天市場」が61.4%で最も高く、前回調査から1.7ポイント上昇した。2位はソフトバンクユーザーによる「Yahoo!ショッピング」で26.4%、3位はauユーザーの「au PAYマーケット」で6.7%、ドコモの「dショッピング」は1.7%にとどまった。

楽天市場は、楽天モバイル契約者に対して常時ポイントが4倍になるSPU特典を提供しており、モバイル利用とEC利用を強固に結びつけていることが高いクロスユース率維持につながっている。

ソフトバンクは「Yahoo!ショッピング」利用時に最大10%還元が受けられるSUPER PAYPAY COUPONを毎月発行しており、さらにヤフーとLINE、PayPayの3社の頭文字をとった特典「LYPプレミアム」で2%のポイント還元が加わる。こうした優待施策がクロスユース率の押し上げ要因とみられる。

auは「au PAYマーケット」で6.7%と小規模にとどまるが、「Pontaパス」加入者には最大39%還元が受けられるキャンペーンを展開しており、さらに最大1万円の割引クーポンが当たるガチャ施策などで利用促進を図っている。

ドコモは1.7%と低水準で推移しているが、dカード決済時に通常より多くのポイントが貯まる仕組みを導入しており、今後の利用拡大に向けた取り組みを進めている。また、ドコモユーザーの中でこれまで「楽天市場」に次ぐ2位だったAmazonが今回の調査では33.3%で1位となった。2024年4月からのAmazonとの協業により、Amazonでdポイントを使える仕組みを整備し、さらにドコモ回線契約者がドコモを通じてAmazonプライムに登録すると毎月120ポイントが還元される施策も導入したことが背景にある。これにより、ドコモユーザーのEC利用先としてAmazonの存在感が一気に拡大したとみられる。

  • 携帯キャリアとECサイトのクロスユース率

    携帯キャリアとECサイトのクロスユース率

  • 携帯キャリアとECサイトのクロスユース率

    携帯キャリアとECサイトのクロスユース率

各社の料金プラン刷新がクロスユース率上昇を牽引

楽天モバイルは前回調査時点 2024年8月のユーザー数(770万人)から1年間で100万回線以上ユーザー数を伸ばしており、ユーザー数は900 万回線規模へと拡大した。1年以内の新規ユーザー割合が高まる中でもクロスユース率は高水準を維持しており、楽天経済圏にいる既存ユーザーをモバイルに取り込む戦略が奏功していることがうかがえる。

QRコード決済に関しては、2019年時点でソフトバンクを除きクロスユース率が各キャリアで1割以下だったが、2025年調査ではいずれも3 割超に達し、各社が経済圏の拡大を着実に進めてきたことが確認できる。

クロスユース率そのものでは楽天が依然として圧倒的だが、この1年間でドコモ、au、ソフトバンクが相次いで独自の料金プランを刷新し、料金とポイント還元を組み合わせて経済圏への取り込みを進めている。これらの施策により、自社ユーザーの囲い込み強化と、ライトユーザーのヘビーユーザー化が進んでいる。今後も料金プランを起点とした経済圏戦略が深化し、クロスユース率を一段と高めることで、各社はより強固な経済圏の構築を目指すと考えられる。