8日にスタートする日本テレビ系ドラマ『ESCAPE それは誘拐のはずだった』(毎週水曜22:00~)の小室直子監督が、演出のこだわりや見どころなどを語った。
桜田ひよりと佐野勇斗がW主演を務める今作は、人質と誘拐犯の2人が逃避行を始めたことで思わぬ事態に巻き込まれていくノンストップヒューマンサスペンスドラマ。小室監督は『掟上今日子の備忘録』(15年)を皮切りに、『3年A組ー今から皆さんは、人質ですー』(19年)、『あなたの番です』(同)、『真犯人フラグ』(21~22年)、『恋は闇』(25年)などの演出を手がけてきた。
──これまでの経歴を簡単に教えてください。
入社当時は映画監督を志していたのですが、連続ドラマの魅力を知ってドラマを志望するようになりました。念願かなって27歳でドラマに異動したのですが、それまであまり日本テレビには女性監督がいなかったこともあり、最初はプロデューサーが向いているのではと言われたんです。「どうしても監督になりたいんです」と言ったら理解をしてくれ「まず1本撮ってやってみろ」とチャンスをもらいました。プレッシャーの中、『掟上今日子の備忘録』がGP帯初演出となりました。とにかく出演者と一緒にお芝居を構築していくことが楽しくて。この作品が今の自分につながっていると思います。
GP帯初チーフは32歳の時で『3年A組ー今から皆さんは、人質ですー』でした。あの作品は学園ものでしたので、菅田将暉さんはじめ生徒たちの熱量がすごく「その熱量に私も絶対負けないぞ」という気持ちで臨みました。これからさらにスターになっていくこの若い役者たちが集まるのは今しかない。その大事な 3カ月を任されたのだから「今しか撮れないものを撮るぞ!」という気持ちで演出しました。
──ご結婚されて母となってから変化はありましたか?
私はむしろ、母親になっても変わらないようにしようと意識しました。子どもが家にいると癒やされたり満たされたりするので、ヒリヒリした演出ができなくなるんじゃないか、100%自分自身が満たされない方が良い作品が撮れるのではないか、という気がしたんです。微妙な心の機微を繊細に描きたいと思っているので、そこに鈍感にならないようにと思っていたのですが、この前、今回のドラマのカメラマンから「母親になってから土台みたいなものができて、自信がついたみたい。成長したね」と言われたんです。いい方向に作用することもあるのだなと思いました。
──演出をする上で、一番大切にしていることを教えてください。
役者さんに気持ちよく演じていただくことだと思っています。現場の空気は絶対画面に載るので大切にしていますし、役者さんがその気持ちになって台本を忘れてお芝居された時って、すごいものが撮れるんです。それが演出のだいご味だし、私自身もテンションが満ち上がる瞬間です。
──今回のドラマの演出のお話がきたときの感想をお聞かせください。 v 「王道エンターテインメント」と聞いただけで、すごく楽しみになりました。さらに、主演は数々の作品で素敵なお芝居をされている桜田ひよりさんと、『真犯人フラグ』でご一緒した佐野勇斗さんだと聞いて、絶対この 2人の3カ月間のキラキラしたものをすべてすくい取って、作品にしたいと思いました。
──お2人の印象を教えてください。
桜田さんとは今回初めてご一緒したのですが、お会いしてみると柔らかい雰囲気なのに自分の意見をしっかり持っていて頼れる方だと思いました。実際現場でも普段は朗らかなのですが、お芝居に入ると、キリッとされる。結以というキャラクターをすごく考えていらっしゃるので、私が「たしかにそうだね」と言うことも多いですし、俯瞰で物を見ることもできる頭の良い方だと思います。佐野さんとは4年ぶりですが、まず「背伸びた?」って聞いてしまいました(笑)。それくらい大人の男性としての魅力が増していて、自信にみなぎっているように思いました。佐野さんも器用な方で、細かく考えられてお芝居を構築されるのですが、実はご自身の持っているくったくのなさや人懐っこさ、人の良さやピュアな部分が大介っぽくて、いろいろ考えて話し合った上で、それを全部手放して演じてくださり、そのお芝居がすごくいいと思っています。
──他の出演者の方の印象をお聞かせください。
北村一輝さんは、こちらが勉強になるくらい演出の目線を持っていらっしゃる方で、一緒に作らせていただいていてとても楽しいです。ファーストサマーウイカさんは、場を華やかにしてくださる空気感を作ってくださる方。このドラマは若い 2人の逃避行を周りの人が追うという話ですが、現場はそのままだと感じています。2人の座長の周りを魅力的で個性豊かな俳優陣が土台を固めて盛り上げてくださっています。
──今回は前作『恋は闇』とはまた違ったサスペンスの要素がありますが、演出するにあたって意識したことはありますか?
この作品はサスペンス要素と青春ロードムービーという二つの要素が混ざり合った作品だと思っています。『恋は闇』は連続殺人犯は誰だ? ということが大きなテーマでしたが、今回は何がミステリーなのか、誰がそれを解き明かすのか、それすら謎めいていて、完全オリジナルストーリーだから本当に先が読めない。そこがこの作品の魅力だと思っています。実は裏テーマで“アメリカ”を意識しています。アメリカのカラフルな色味や、ポップさ、いい意味でラフでフランクな感じを取り入れたいとスタッフとも話しました。特に主演 2人の周りを意識していて、衣装をカラフルにしたり、逃亡に使う車は赤いスポーツカーにしたり。劇中に出てくるインフルエンサーの家も、アメリカのペントハウスをイメージしています。その対比として追う側の北村さんの周りは、シックでモダン、重厚さを感じられるようにしました。
撮影ではカメラマンには三脚をつけてしっかり撮るよりも、手持ちで、お芝居を切らさずなるべく 1カットで撮ってもらったり、わざと揺らしたカットを撮ってもらっています。フィルムのようなざらざらした感じを表現したいと思って、フレームレートを粗くしています。曲もラップが入ったりレゲエが入ったり、多文化がミックスされている感じを出したいと作曲家と相談しました。編集ではテロップの使い方や色味をビビッドにしたり、大介が着ているオレンジのつなぎや逃亡に使う赤いスポーツカーには、色味を足して強調しています。
──初回の見どころをお聞かせください。
結以と大介の掛け合いです。本来なら絶対交わることのなかった2人が、誘拐を通して運命的に出会い、反発するはずが息が合ってしまう。2人の掛け合いが1話の中でもすでに変化していきますし、今後もこの2人がどうなっていくのかが一番の見どころだと思っています。桜田さんと佐野さんが衣装合わせでお会いしてからクランクインして、だんだんお互いの芝居や空気感がわかって、距離が近くなっていく感じと、結以と大介の関係性が見事にリンクしているので、楽しみにして見ていただきたいと思います。
【編集部MEMO】
秋元孝之プロデューサーは「数年前に別のドラマで桜田さんにお会いした時、その圧倒的な演技力に衝撃を受け、いつかガッツリご一緒したいと考えていました。『砂の塔』というドラマを見た時、佐野さんの圧倒的な存在感に衝撃を受け、いつかガッツリご一緒したいと考えていました。この度、そんな桜田さんと佐野さんとご一緒できることになりました。しかも、お二人とも地上波GP帯初主演となります。このタイミングでお二人同時にご一緒できるなんて、こんなにうれしいことはありません」と語っている。
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