9月26日に最終回を迎える連続テレビ小説『あんぱん』(NHK総合 毎週月~土曜8:00~ほか ※土曜は1週間の振り返り)。23日放送の第127回では、八木信之介(妻夫木聡)が戦争でのつらい思い出を涙ながらに蘭子(河合優実)に打ち明けるシーンが描かれた。視聴者の心を大きく揺さぶった同シーンに込めた思いを制作統括の倉崎憲チーフ・プロデューサーに聞いた。
112作目の朝ドラとなる『あんぱん』は、漫画家・やなせたかしさんと妻・暢さん夫婦をモデルに、何者でもなかった2人があらゆる荒波を乗り越え、“逆転しない正義”を体現した『アンパンマン』にたどり着くまでを描く愛と勇気の物語。小松暢さんがモデルのヒロイン・朝田(柳井)のぶ役を今田美桜、やなせたかしさんがモデルの柳井嵩を北村匠海が演じ、脚本は中園ミホ氏が手掛けた。
八木役・妻夫木聡の迫真の演技に「涙が止まらなかった」
第127回では、八木が蘭子に、これまで語ってこなかった戦争体験を打ち明けた。敵の待ち伏せを食らって仲間たちが次々と倒れる中、機銃で撃ちまくった八木。さらに夜襲を受けて敵と組み打ちになり、銃剣で敵を刺し殺したという。そして、「死体のポケットから財布が落ちた。そこには写真が……刺し殺した敵兵の妻と子の写真が……」と涙を流して告白。蘭子は震える八木の手を握り、抱きしめた。
戦後80年の節目であり、やなせさんの戦争体験もアンパンマン誕生につながったことから、『あんぱん』では戦争についても時間をかけて描いてきたが、最終週でついに八木の過去が明らかになった。
倉崎氏は「戦争を描き切りたい」という強い覚悟を明かす。
「『あんぱん』は戦後80年だからこそやるべき企画だと思って、採択までこぎつけたという経緯もあり、戦争からは逃げてはいけないという思いがありました。もちろん『アンパンマン』に向かっていくわけですが、それと同時に、戦争に対して、そして、戦争がもたらしたものを最後まで描くべきだと中園さんも我々も思っていました」
そして、「八木の過去を語れる相手は蘭子しかいない」と語る。
「第22週で八木が子供たちを抱きしめるのを見て、蘭子が『そういう八木さんを、誰か、抱きしめてくれる人……』と言って緊張した空気感になるシーンがあり、その時に抱きしめるという選択肢もあったのですが、チームで話してここではないとなった時に、26週で初めて八木が蘭子に抱きしめられるということに。我々にとってもあのシーンはとても大事なシーンになりました」
妻夫木の迫真の演技を現場で見て、倉崎氏は「涙が止まらなかった」と振り返る。
「映画のようですよね。想像を超えたというか、妻夫木さんの力もあって、言葉だけでは言い表せない深みのあるシーンになったなと。八木が登場するシーンは台本以上のものが生まれることが多く、戦争パートの第12週の八木と嵩のシーンも凄まじかったですし、最終週を見ても、八木を妻夫木さんに演じていただけてよかったなと改めて思いました」
蘭子役・河合優実の演技力も絶賛「唯一無二の存在」
また、最愛の豪(細田佳央太)を亡くした蘭子の「幸せな一歩」もすごく悩んだそうで、かなり前ではあるが当初、蘭子は健太郎(高橋文哉)と結ばれるプランもあったが、収録が始まってから健太郎の相手はメイコ(原菜乃華)にしようということになり、その後、蘭子と八木というストーリーが描かれることになったという。
「現場で見ていてもメイコと健太郎がとてもお似合いだったというのもありますし、高橋文哉さんが健太郎を演じてくれて、想像以上に明るく愛されるキャラクターになったので、お調子者の健太郎と蘭子の2ショットがあまり想像つかなくて。蘭子の心は明るさだけでは開かれないだろうなと思ったんです。最愛の人を亡くして一生恋愛はしないと覚悟を決めている中、どういう人が蘭子の心の扉を開けられるんだろうとなった時に、戦争で愛する人を失った者同士でしか蘭子の本当のつらさはわかってあげられないのではないかと。八木さんも戦争がきっかけで家族を亡くしているので、この2人ならあり得るのではないかということになりました」
第127回の八木と蘭子のシーンで、妻夫木のみならず河合の演技力も改めて感じたという。
倉崎氏は「蘭子のセリフはほぼないですが、河合さんの眼差しで。八木が涙した後に、隣に座って手を握って寄り添い抱きしめる、その表情や佇まいは、河合さんだからこそ滲み出てきたものだと思います。河合優実という女優はやはり唯一無二の存在だなと改めて思いました。誰に想いを寄せ、誰とどこまで描くのがベストなのか、台本と収録と放送を並行してやっていく中でみんなで手探りでしたが、あのシーンを見たときに、これでよかったんだなと思えました」と語っていた。
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