JTBは9月1日、『訪日インバウンドVISION 2030』を発表した。関係者は「訪日外国人旅行者に向けて“最高の訪日体験を提供”できる構造をつくり、業界をリードしていきます」と意気込んでいる。

  • JTBが、訪日インバウンドに向けた事業戦略を発表した。写真は、同社 代表取締役 社長執行役員の山北栄二郎氏

    JTBが、訪日インバウンドに向けた事業戦略を発表した。写真は、同社 代表取締役 社長執行役員の山北栄二郎氏

■インバウンドを活性化させる

冒頭、代表取締役 社長執行役員の山北栄二郎氏が「JTBが掲げるビジョン」について説明した。コロナ禍以降、訪日外国人旅行者の数は急激に増えており、昨年(2024年)には3,687万人を記録。今年は4,000万人を超えて“過去最高”を更新することが見込まれている。これを踏まえ、山北社長は「インバウンドは日本経済の立て直しに大きな効果をもたらすだけでなく、我が国の成長にとっても極めて重要な要素です」と説明する。

  • 訪日外国人旅行者の数は急増中

    訪日外国人旅行者の数は急増中

ここでJTBが注目するのは「人口に対する国際観光客数の割合」。スペインは176.1%、フランスは146.7%にもなるが、日本は20.1%と数値が小さい。なぜだろうか。この背景には、インバウンド客は東京、京都、大阪などの大都市に集中しており、地方都市にはあまり訪れていない、という実情があるという。

  • インバウンドは大都市に集中している

    インバウンドは大都市に集中している

ちなみにJTBグループでは現在、旅行会社の枠組みを超えた“交流創造事業”に注力している。デジタル基盤を活かし、ステークホルダーをつなぐ、地域や組織の価値を共につくる、人流や物流などを生み出して人と人、地域、組織をつなげる「つなぐ・つくる・つなげる」取り組みを進めている。

  • JTBは交流創造事業へ

    JTBは交流創造事業へ

そこで同社では交流創造事業の強みを活かし、インバウンドのもたらす効果を地方都市にも波及させていくことを考えている。山北社長は「当社では47都道府県に拠点を持ち、長い時間をかけて地域のステークホルダーの皆さまと信頼関係を築いてきました。これまでに様々な知見、インサイトも得ております。日本が世界トップレベルの観光立国になるためには、地域全体をしっかりと良くしていくことが大事。JTBグループで、そうした流れをつくっていきます」と説明する。

  • 世界トップレベルの観光立国に向けて

    世界トップレベルの観光立国に向けて

JTBでは、観光産業全体として“お客様に最高の訪日体験を提供”できる構造をつくり、業界をリードしていく『訪日インバウンドVISION 2030』を掲げる。本戦略では、地域共創やデータの戦略的な活用によって、持続可能な観光地域づくりを目指していくという。

  • 訪日インバウンドVISION 2030

    訪日インバウンドVISION 2030

■3つの改革とは?

訪日インバウンドビジネス担当の山田仁二(じんじ)氏は「地方自治体や観光事業者などとの共創により、訪日インバウンド市場を盛り上げていくために“3つの改革”と、それを支えるデータ基盤の構築、活用推進に取り組みます」と説明する。

  • 訪日インバウンド市場を強化する“3つの改革”

    訪日インバウンド市場を強化する“3つの改革”

1つめとして、JTBグループ全体で横断的に本戦略を推進するために「既存事業6領域」と「+1の新領域」を整理した。既存事業6領域とは、BtoC、提携販売、旅行会社・ランドオペレーター、BtoBコーポレート、プロモーション、BtoGのことで、+1の新領域として「訪日旅行者が“日本を訪問する目的”を創出できるサービスやコンテンツの開発・開拓・投資の実行」を設置。それぞれの領域で、創客を目指していく。

  • 組織を事業領域(6+1)に明確化

    組織を事業領域(6+1)に明確化

2つめとして、積極的な投資により課題解決力を強化していく。JTBでは国内における組織力と対応力を強化するため、グループ全体で本戦略を推進する組織体制を整備。国内営業拠点による地域における対応力をあげるとともに、海外拠点やグループ会社を通じて訪日外国人旅行者のニーズも捉え、発地(海外)と着地(日本)双方から訪日インバウンド事業に取り組んでいく。

  • ONE JTBで取り組む

    ONE JTBで取り組む

3つめとして、訪日旅行の目的となるサービス・コンテンツの創出を図る。このためパートナー企業との連携、積極的な投資による共同事業なども計画している。その一例として、アソビシステムと2025年2月に戦略的パートナーシップ契約を締結。ナイトタイムエコノミーの創出や、KAWAII MONSTER CAFEのIPを活用した共同事業開発などの検討・協議を進めている。

訪日インバウンド共創部長の寺本巧氏は、いま顕在化している各種課題をあらためて指摘。たとえば環境・市場では「大都市にてオーバーツーリズムが起こっている」「環境負荷が増大している」、日本人の旅行者にとっては「宿泊料金が高騰した」「ホテルの予約がとりにくい」、訪日外国人にとっては「言語対応が不足している」「通信環境が良くない」といった課題を抱えている、としたうえで「私たちJTBでは事業パートナー、地域の方々とも協力しながら、これらの解決に向けて取り組んでいきます」と説明する。

  • 常務執行役員 訪日インバウンドビジネス担当の山田仁二氏(左)と、訪日インバウンド共創部長の寺本巧氏(右)

    常務執行役員 訪日インバウンドビジネス担当の山田仁二氏(左)と、訪日インバウンド共創部長の寺本巧氏(右)

  • 顕在化している各種課題

    顕在化している各種課題

+1の新領域では、コンテンツの開発から海外での認知獲得、話題化、プロモーションまでをトータルプロデュースで取り組む。コンテンツ開発では、訪日外国人旅行者のニーズ・インサイトを追求したコンテンツ(寺院仏閣の非公開エリアを含めた特別拝観など)や、地域ごとに異なる課題・ニーズから創出するコンテンツ(地域の季節ごとの魅力発掘につながるコンテンツや、地域全域を盛り上げるエリア周遊、地域資産を活かしたコンテンツなど)など、課題とニーズを起点に新たな体験の創出を行う。

積極的な投資による課題解決力の強化については、首都圏、関西圏に加え、エリア毎(北海道、仙台、名古屋、広島、福岡、沖縄)に訪日インバウンド推進個所を新設。地域に根差した取り組みを強化する。また、これまで地域交流事業を推進してきた「47DMC」全国の拠点で、150名のインバウンド担当者が地方自治体や企業とともに訪日インバウンド市場に向けた課題に取り組み、持続的に経済を発展させていくことを目指す。

  • JTB Tourism HUBを開発

    JTB Tourism HUBを開発

JTBでは、訪日データプラットフォーム「JTB Tourism HUB」の構築+データ活用ソリューションの提供も考えている。JTB Tourism HUBは、「集客の仕組み」「システム」「コンテンツ」を整備し、ディストリビューターとして適切にコントロールしていく新たなデータプラットフォーム。これにより地方自治体・観光事業者にはオペレーションの整備・行動・購買データを基にしたコンサルティング、宿泊施設・飲食店・交通機関などには新たな流通チャネルの提供、国内外の提携販売チャネルには新たなソリューションの提供を行っていく。

  • JTB Tourism HUBを活用したサービス

    JTB Tourism HUBを活用したサービス

寺本巧氏は「JTB Tourism HUBは2026年度中の本格運用を目指し、構築を進めています。JTB Tourism HUBを活用することで、各地域で起きている課題の把握・分析・改善のPDCAを回していきます。また各地域において、訪日インバウンド事業の推進力を上げるきっかけにもつなげます」と説明する。

このほか、JTBが保有するデータと公的な外部データを掛け合わせて分析することで、訪日インバウンド市場における新たなターゲット開拓、新たなストーリーの開拓などをサポートするとともに、インバウンドトレンドの発信にもつなげていきたい、と話した。

  • JTBグループが、観光立国推進をリードしていく

    JTBグループが、観光立国推進をリードしていく