8月30~31日に生放送され、横山裕の105kmマラソン完走という熱気に包まれる中、今年も幕を下ろした日本テレビ系大型特番『24時間テレビ48-愛は地球を救う-』。「あなたのことを教えて」をテーマに様々な企画が展開されたが、例年に増してその趣旨が反映された番組になった印象を受けた。
放送前にインタビューした総合演出・前川瞳美氏の意図を改めて確認しながら、今年の『24時間テレビ』を振り返っていくと、“生きづらさ”や“見えない障がい”といった社会課題とより向き合う番組にアップデートされたことが浮かび上がってくる。
あのが語りかけた「今テレビの前にいる届くべきあなたに歌います」
「あなたのことを教えて」というテーマに込められたのは、「誰もが当たり前に自分や他人の尊厳を大切にする社会を実現したい」という思い。約半世紀におよぶ番組の歴史で、女性初の総合演出に抜てきされた前川氏は、昨年4月に『上田と女がDEEPに吠える夜』(毎週火曜23:59~)を立ち上げ、「不妊治療のリアル」「ジェンダーバイアス」「フェミニズム」など、今を生きる女性に刺さるテーマを取り上げていく中で、「誰もが生きやすい社会のために番組を作る」という意識が強くなったという。
そこで、「募金と直接つながることでなくても、もっと目を向けられるべき社会課題について、世の中の人に考えてもらうきっかけになるような企画にも取り組んでいく」(前川氏)方針を強化。これを、「上田と女が吠える夜プレゼンツ」と冠した企画で実現していった。
その一つを担ったのは、あの。『―DEEPに吠える夜』で不登校の経験を打ち明けた彼女は、不登校になった子どもたちが親元を離れて共同生活をする、離島のフリースクールを訪れ、自身の経験を語りながら交流した。
このVTRの後にメイン会場の両国国技館で、「目の前が真っ暗なとき誰かに誰でもいいです、手を伸ばせたり叫べたら、教科書には書いてない場所にも僕たちは行けるかもしれないです。僕は叫んで叫んで、今ここにいます。今テレビの前にいる届くべきあなたに歌います」と語りかけた、あの。そして、生きづらさを抱える子どもたちに向けて、自身の経験を重ねた楽曲「ハッピーラッキーチャッピー」を歌唱した。
その後、深夜の「上田と女が吠える夜インターナショナル~あなたの国のことを教えてSP~」には、世界各国の30人の女性が集結。電車のマナーやライフライン事情というテーマから入り、笑いを交えて互いの國の文化を尊重し合いながら、徐々にルッキズム、ジェンダーギャップ、分娩方法など、「女性の生きやすさ」にまつわる“DEEP”な話題に切り込んでいった。
発達障がいや自閉スペクトラム症を抱える人々が登場
第1回~2回のテーマが「寝たきり老人にお風呂を! 身障者にリフト付きバスと車椅子を!」と設定されたこともあり、身体面の障がいを持った人々への支援のイメージが強かった『24時間テレビ』。近年、精神面の障がいへの認識が進んできたことを踏まえ、それを抱える人たちに寄り添う企画も目立った。
「岩田剛典が挑むLIVEアート&オークション」では、水木しげるさんが『ゲゲゲの鬼太郎』を通して「他者を受け入れ、違う特性を持つ人々と共存する大切さ」を伝えていたことを踏まえ、発達障がいや自閉スペクトラム症の青少年画家が活躍していることを紹介。明石家さんまが発掘し、『ぽかぽか』(フジテレビ)のキャラクターデザインでも知られるアーティストの青山哲士氏は、自身がADHD(注意欠如・多動症)を抱えていることを明かした。
「氷川きよしと歌おう!『あなたのことを教えて』生合唱プロジェクト」は、生きづらさを抱える人に寄り添い、国技館でともに歌を届ける企画。一般応募で、自閉スペクトラム症、ADHD、場面緘黙(ばめんかんもく)症を抱えている人たちも参加し、氷川は「皆さんがステージに立って歌うことで、自分自身に自信が付くし、自分のことが肯定できるきっかけになる。それを見てくださる方も、“自分も頑張ろう”という気持ちになると思ってくれれば」と、この企画に込めた思いを語っていた。
ほかにも、毎年恒例のドラマスペシャルは「トットの欠落青春記」で、主人公の黒柳徹子が、幼少期から落ち着きがなく、大人の手に負えない問題児だった姿が描かれた。黒柳は、自身が発達障がいだったと公表している。
さらに、大阪・読売テレビのローカルパートでは、こっちのけんとが、双極性障がいで苦しんだ経験を元に完成させた楽曲「死ぬな!」を生披露。こうした、“見えづらい障がい”への理解を促進する企画は、まさに「あなたのことを教えて」というテーマを体現したものと言えるだろう。
