アウディの日本市場における今後の戦略変更は?|ブランド ディレクターのシェーパース氏にインタビュー

アウディ ジャパンは、2025年7月24日に東京・新宿にて「Audi New Models Special Debut Show in Tokyo」を開催。その場で最新の内燃エンジン車(ICE)である「Audi Q5」と、最新の電気自動車(BEV)である「Audi A6 e-tron」を同時に発表した。

【画像】Q5、A6 e-tron、A5 Avant、S5 Avant、Q6 e-tron、SQ6 e-tronが勢揃いした「Audi New Models Special Debut Show」(写真17点)

アウディAGは、2021年の段階で電動化戦略「Vorsprung 2030」を発表しており、2026年以降に登場するすべてのモデルは電気自動車に、内燃エンジンの製造は2033年にまで段階的に終了するといった方針を打ち出していた。

しかし、近年の世界的な電気自動車の販売台数の減少をうけ、早期に電気自動車への一本化を進めていたメルセデス・ベンツやボルボなども計画を変更。そしてアウディでも2033年までに内燃エンジン車を段階的に廃止する計画を変更し、電気自動車の需要変動に応じて柔軟に対応していくとしている。

先般、アウディAGのゲルノート・デルナーCEOは、今後も内燃エンジン車とプラグインハイブリッド車(PHEV)の新規ラインナップを展開し、市場の動向を見極めていく。しかし自動車の未来が電気自動車であることに疑いの余地はなく、最終的な電動化目標は変わらないと発言している。

今回、日本において内燃エンジン車と電気自動車の新型モデルを同時に発表するという試みはこうした本社サイドの流れをうけてのものだろう。日本市場においてはトヨタ自動車を筆頭に、脱炭素への道はBEV1本ではなく、ICEもPHEVもFCEVも水素エンジン車もという、”マルチパスウェイ”戦略を打ち出している。そういう意味では現在のアウディのようにICEもBEVもどちらもやりますよと言ってくれたほうが、日本人としては親近感がわくというものだ。

日本市場においては今後どのような戦略変更があるのか、フォルクスワーゲングループジャパンCEO兼アウディ ジャパンのブランド ディレクターであるマティアス シェーパース氏に話を聞くことができた。

「そもそもEU(欧州連合)では、2035年にICEの新車販売を禁止する方針を打ち出してきたわけですが、各社が戦略を変更している背景のひとつとして、その期限が延期されることがあります。アウディとしてもICEに対する規制が緩和傾向にあるなかで、いますぐにやめる必要はないよねと、そう判断したということです。ですから日本市場においてもBEVの普及を推進する方針はこれまでと変わりませんが、日本のカスタマーのニーズに対応するICEも引き続き導入し、バランスよくラインアップを拡充していきます」

――昨年の数字ですが、アウディのグローバルの販売台数が約170万台、そのうちBEVが16万4000台とおおよそ10%弱くらいになっていたと思います。以前、アウディジャパンとして掲げた目標として、2025年までに国内販売の35%をBEVにというものがあったと思いますが、現状と今後の展望をどのようにみておられるでしょうか。

「35%という目標はおよそ3年前に発表したものです。実際にこの数年のアウディジャパンのBEVの販売構成比は12%くらい。今年新たに導入したQ6 e-tronやA6 e-tronのセールスにもよりますが、冷静にみていきなり今年30%超えることはないと思っています。これから数年をかけて15%くらいまでが現実的な数字ではないでしょうか。現状にあわせて調整が必要です。

いま日本の乗用車市場全体におけるBEVの割合は2%にも満たないといわれています。これは日本政府も含めて誰も想像していなかったと思います。想像していた以上にのびていない。一方で欧州を中心にVWグループのBEVが売れはじめていてトップ10ランキングでも半数を占めています。そのあたりはようやくまいた種が芽を出し始めた段階にあります。日本の状況は少し異なるので、それに合わせた戦略が必要になる。そういう意味でわれわれのラインアップにあるICEモデルが重要な役割を果たします」

――思えば、シェーパース氏が日本に着任されたのはまだコロナ禍で、BEVのラインアップとしてもe-tronやQ4 e-tronしかなく、しかも売れ筋のはずのQ4 e-tronが半導体や部品不足で日本に届かない。そんな歯がゆい思いもされたと思うのですが、あれからBEVの環境はどう変わってきたと思いますか。

「半導体などの供給不足の問題はすでに解消されています。またQ6 e-tronやA6 e-tronがラインアップに加わったこともそうですし、e-tron GTのフェイスリフトやQ6 Sportback e-tronなどの新型の導入も控えています。せっかくいいモデルが出たのに本社の都合で日本では販売できないというケースもありますが、幸いなことにBEVに関しては本社から、今後出てくるすべての新型車を日本に導入するという約束をもらっています。

そして新型モデルがないなかでもまずBEVのインフラ整備に関しても着実に推し進めてきました。ポルシェとフォルクスワーゲンとの提携による各ブランドの正規販売店ネットワークを中心に展開している充電ネットワーク、PCA(プレミアムチャージングアライアンス)における急速充電器の数は全国で395基となり、さらに日本全国の海や山などの観光地に設置を進めているデスティネーションチャージャーも356基に達しました。今後はレクサスの急速充電ネットワークとの相互利用が可能になる計画も進行中です。またプレミアムブランドとして都心の充電スポットであるAudi charging hub紀尾井町に続いて日本で2拠点目となるAudi charging hub芝公園をオープンしました。さらにアウディジャパンとして初の経由地充電スポットであるAudi charging station厚木もできました。かなり使い勝手も良くなっていますし、まだBEVに乗ったことがないという人もぜひ正規販売店で試乗いただければと思います。また市街地だけでなく、高速道路からスポーツ走行までさまざまな体験ができるプログラム「Audi e-tron driving experience」も用意してありますので、ぜひご参加ください」

――今回発表されたA6 e-tronの一充電走行距離は769kmで、さらにオプションとなるレンジプラスパッケージを装着すると国内最長の846kmに達するという。BEVを取り巻く環境は間違いなく改善されている。近いうち、リアルワールドでA6 e-tronはどれほどの走行が可能なのか、検証してみたいと思う。

文:藤野太一 写真:アウディ ジャパン

Words: Taichi FUJINO Photography: Audi Japan