第46回将棋日本シリーズJTプロ公式戦は1回戦が進行中。7月26日(土)には広瀬章人九段―豊島将之九段の一戦が北海道札幌市の「札幌コンベンションセンター」で行われました。対局の結果、相掛かり空中戦の競り合いから抜け出した広瀬九段が101手で勝利。地元での対局を制して2回戦進出を決めています。

激しい相掛かり空中戦

札幌出身の広瀬九段は対局前のあいさつで「ここにくると帰ってきたという気持ち」と意気込みを語ります。振り駒が行われた本局は先手となった広瀬九段が相掛かりに誘導、オーソドックスな中住まいに組んで陣形を整備します。対して後手の豊島九段は中央に飛車を回る積極策を披露。敵の玉頭に狙いを定めて、場合によっては一気に踏み込む狙いを秘めています。

角交換の後、広瀬九段が敵陣に角を打ち込んだことであとには引けない戦いが始まりました。黙っていては香損となる豊島九段は桂の跳ね違いから攻め合いを志向、続いて角を銀と刺し違える猛攻で5筋を強襲します。急所に竜を作るなど指し手の勢いとしては後手が優るものの、戦いの中で広瀬九段も着実に駒得を重ねており形勢はわずかに先手よしで推移したまま終盤戦へともつれこみます。

攻めをかわして勝利

考慮時間を残しながらうまく辛抱の時間を抜け出した広瀬九段ですが、自玉にいつでも王手がかかる形とあって激しい反撃手を選べません。ここから始まった悪い流れはやがて豊島九段の勝負手を誘発。豊島九段からの意表の竜切りを「軽視した」と広瀬九段が局後に語ったように、形勢は急接近します。しかしこの直後、豊島九段に後悔の一手が出たことで広瀬九段が土俵際で耐えることになりました。

局後の検討で後手から見れば実戦の1マス右、6筋に香を据えていれば攻めが続いて形勢不明との結論に。実戦はわずかな違いで先手玉が8筋に逃げ出す形となって大勢が決しました。終局時刻は17時27分(対局開始16時6分)、最後は先手玉の詰みなしを認めた豊島九段が投了。中終盤の競り合いで踏みとどまった広瀬九段が何とか残した辛勝譜となりました。

勝った広瀬九段は次戦で永瀬拓矢九段と対戦します。

水留啓(将棋情報局)

  • 局後SNSを更新した広瀬九段、「大きなミスなく指せたのは自信になりました」とほっと一息(写真は第35期竜王戦七番勝負第1局のもの 提供:日本将棋連盟)

    局後SNSを更新した広瀬九段、「大きなミスなく指せたのは自信になりました」とほっと一息(写真は第35期竜王戦七番勝負第1局のもの 提供:日本将棋連盟)