便利屋としての開業が注目されています。少子高齢化、単身世帯の増加など、現代社会のニーズに合致していることが背景としてあります。また、未経験でも始めやすいこと、低資金で開業できることもメリットです。この記事では便利屋の仕事内容や開業準備、集客や成功の秘訣までわかりやすく解説します。
便利屋として開業することのリアル
まずは便利屋の仕事内容や、開業するメリット・デメリットを解説します。
便利屋の仕事内容と提供サービス例
便利屋とは、日常生活でのさまざまな頼みごとを引き受ける仕事です。
【主なサービス】 - 代行サービス(買い物代行、並び代行、家事代行、ペットの散歩など) - 代行作業(家具の移動、電球交換、ハウスクリーニング、草むしりなど) - 専門技術を要する作業(簡単なDIY、パソコン設定、各種代行申請など) - その他(話し相手、悩み相談など、人に寄り添うサービス)
少子高齢化で、買い物代行や電球交換・ハウスクリーニングなど、高齢者をサポートするニーズが高まっています。また共働き世帯が増加しているため、ペットの散歩や家事代行などのサービスも求められている傾向です。
上記を見てもわかるとおり、仕事内容は非常に多岐に渡るため、専門・得意分野を選ぶケースが多いです。
便利屋のメリット・デメリット
便利屋を開業することのメリット・デメリットをまとめます。
【メリット】 - 少ない資金で開業可能 - 特別な資格は不要(※一部サービスを除く) - 自分のペースで働ける - 多様なスキルが活かせる - 顧客から直接感謝される喜びを感じられる
便利屋は原則として資格は不要で、少ない資金で開業できます。参入するための障壁が少ないので、気軽に開業しやすいのが大きなメリットです。
また、サービス内容が非常に多彩なため、自分のスキルを活かせます。特殊な経験があれば、他社との差別化を図れる可能性もあります。
【デメリット】 - 収入が不安定になる可能性 - 集客の難しさ - 身体的負担や精神的負担 - クレーム対応のリスク - 幅広い知識・スキルが求められる
便利屋は競合が多いため集客は難しく、大きな金額を稼ぐのは簡単ではありません。身体を使う作業も多いため、体やメンタルの負担も重くなります。
便利屋の開業に向いているのは?
便利屋で開業するのがおすすめなのは、以下のような方です。
- 人に感謝されることが好きな人
- フットワークが軽く、行動力がある人
- コミュニケーション能力が高い人
- 様々なトラブルに対応できる柔軟性がある人
- 自己管理能力が高い人
便利屋は対人でのサービスが基本のため、コミュニケーション能力が高い人に向いています。テキパキ行動することが必要なため、行動力のある人、アクティブな方向けの仕事です。
開業のための準備
便利屋で開業するのに必要な資金、資格、事業計画などについて見ていきましょう。
開業資金はどれくらい必要?
便利屋で必要な初期費用、運転資金の目安は以下のとおりです。
【初期費用】 - 車両費(軽バンなど):中古であれば数十万円〜 - 工具・備品費:数万円〜 - 広告宣伝費:数万円〜 - その他(名刺作成、Webサイト作成など)
【運転資金】 - 当面の生活費 - ガソリン代、消耗品費など
便利屋でかかるのは、移動に使う車関連の費用、集客のための広告宣伝費用などです。すでに車を持っている方なら、初期費用も抑えられます。
低資金で始めるには、最初は車両なし、最低限の工具からスタートする方法があります。自転車でいける範囲の、近所の案件を獲得することから始めるとよいでしょう。
開業に必要な資格・許可
便利屋では、基本的に資格は不要です。ただし、以下のように提供するサービスによっては特定の資格や許可が必要な場合があります。
- 古物商許可(中古品売買)
- 探偵業届出(浮気調査・身辺調査など)
- 産業廃棄物収集運搬業許可(ゴミの処分)
- 電気工事士(電気工事)など。
たとえばハウスクリーニングなどでゴミの処分をする場合、産業廃棄物収集運搬業許可が必要です。自社のサービスで資格が必要かを事前に確認し、必要な場合は速やかに取得するようにしましょう。
事業計画を立てよう
開業する前に、事業計画を立てることも重要です。ある程度しっかりした計画を立てないと、途中で経営が行き詰まる可能性が高まります。
また、事業計画のもう1つの重要な役割が、金融機関から融資を引き出すことです。創業時などには日本政策金融公庫などから低金利で融資を引き出せますが、事業計画書を提出したうえで審査を受けなくてはなりません。
事業計画では、以下のような項目を決めて行きましょう。
- 目標設定(月間売上、顧客数など)
- サービス内容・料金プランの決定
- ターゲット顧客の明確化
- 競合調査
- 収支シミュレーション
誰に対して・どのようなサービスを・いくらで売るのか、毎月の売上はいくら見込めるのか、競合とどう差別化するのかといった内容を決めます。とくにターゲット顧客の明確化はマーケティングで非常に重要なため、ある程度の時間をかけましょう。
個人事業主としての手続きも必要
創業するときには個人事業主または法人として活動することになりますが、最初は個人事業主を選択する方が多いでしょう。法人と比べて手続きが少なく、費用もそれほどかからないためです。
個人事業主では、以下のような手続きが必要です。
- 税務署への開業届の提出
- 青色申告承認申請書の提出
- 屋号の決定
さらに、年に1回確定申告を提出します。事業の収益、納めるべき税金を明らかにするための重要な手続きです。
確定申告の書類を一から作成するのは大変ですが、クラウド会計ソフトを利用すれば比較的簡単に作成できます。
集客とリピート獲得の戦略
便利屋は開業しやすいですが、その分ライバルもたくさんいます。この章では代表的な集客の方法、一度利用してもらった顧客にリピートしてもらう方法を解説します。
地域のニーズを掴む!ターゲット設定の重要性
先ほどの事業計画でも触れましたが、どのような顧客をターゲットにするのかを明確にすることは非常に重要です。高齢者、共働き世帯、単身者、地域などによって、便利屋に求めるニーズはまったく異なるためです。
便利屋は提供できるサービスが多様なため、ニッチな分野に特化する戦略もあります。たとえば高齢で身体が不自由な方への専門サービス、大型犬を飼っている人への専門サービスなど。
サービスを提供して顧客の声をヒアリングしていくうちに、その地域のニーズを徐々に掴んでいけるでしょう。
低予算で始める!効果的な集客方法
低予算で集客ができる、オンラインとオフラインの方法を紹介します。
【オンライン集客】 - Webサイト・ブログの開設:SEO対策、地域名+便利屋などのキーワード、実績やお客様の声などの掲載 - Googleビジネスの活用:地域検索での上位表示、口コミの獲得 - SNSの活用:Facebook、Instagram、X(旧Twitter)などでの情報発信、現場写真の公開(許可を得たうえで) - 地域情報サイトへの登録 - 暮らしのサービスサイトへの登録(くらしのマーケット、タスカジ、ゼヒトモなど)
【オフライン集客】 - チラシ・ポスティング:ターゲット層に合わせた配布、デザインの工夫 - 地域のお店との提携(不動産屋、リフォーム会社など) - 口コミの促進:紹介割引、リピーター割引 - 地域のイベントへの参加
現在はネット上でサービスを探す方が多いため、まずオンライン集客に力を入れることがおすすめです。WebサイトやSNSアカウントの開設、地域情報サイトの登録などを進めていきます。
また、暮らしのサービスサイトで検索する方も多いため、くらしのマーケットやタスカジなどへの登録もおすすめです。
顧客満足度を高め、リピートにつなげる秘訣
リピートをしてもらうには、やはり顧客満足度を上げることが非常に重要です。便利屋の場合は、以下の点がポイントとなります。
- 丁寧なヒアリングと明確な見積もり
- 迅速で丁寧な作業
- 作業後の確認とアフターフォロー
- 利用していただいたことに感謝の気持ちを伝える
- 定期的な情報発信(ニュースレターなど)
便利屋開業を成功させるための秘訣
便利屋を成功に導くために大切なポイントを3つ解説します。
差別化戦略で選ばれる便利屋に
「何でもやる」では特色がなく、競合に埋もれてしまいます。特定の分野に特化して、専門性を追求する必要があります。
他ではあまり見られない独自のサービスを提供したり、地域密着型で勝負したりするのが王道です。
また、価格競争に巻き込まれないためには付加価値の提供も欠かせません。たとえば女性顧客には女性スタッフのみが対応する、高齢者や忙しい現役世帯を対象に夜間対応も行うなどの方法があります。
トラブル回避とリスク管理
顧客とのトラブルを回避するには、まず契約時に内容を明示することが重要です。サービス内容、料金、キャンセルポリシーを明確化しましょう。
作業中の事故・破損などに備えて、損害賠償保険への加入の検討もおすすめです。また便利屋は、個人のさまざまな情報を知る機会が多く、個人情報の取り扱いにも注意が必要です。
継続的なスキルアップと情報収集
人々のニーズは変化し続けるため、便利屋もそれに対応しなくてはなりません。様々な仕事に対応できるよう、常に新しい知識やスキルを学ぶ姿勢が求められます。
具体的には同業者との交流や情報交換、関連するセミナーや講座への参加などの方法があります。スキルや知識・経験を磨きながら、継続的に選ばれる便利屋を目指しましょう。