嵐の松本潤が主演を務めるTBS系日曜劇場『19番目のカルテ』(毎週日曜21:00~)を手掛ける岩崎愛奈プロデューサーがこのほど、原作との出会いからキャスティングの裏話、脚本の打ち合わせで涙がこぼれた理由などを語った。

  • 主人公・徳重晃役の松本潤

    主人公・徳重晃役の松本潤

富士屋カツヒト氏による連載漫画『19番目のカルテ 徳重晃の問診』を原作とするこのドラマは、医療における19番目の新領域である総合診療科を舞台にした新しいヒューマン医療エンターテインメント。松本演じる魚虎総合病院の総合診療医・徳重晃が、問診を通して病気を診るだけでなく、患者の心や生活背景などから最善を見つけ出し、生き方そのものにも手を差し伸べていく。

――原作に初めて出会った時、どのような点に惹かれましたか?

本当に優しくて柔らかい、でも芯のある物語だなと感じました。今までにないタイプの医療ドラマになると思いましたし、実は原作を読むまで「総合診療医」という存在を知らなかったんです。でも、こういうお医者さんがいてくれたら、救われる人はきっとたくさんいるだろうなと感じました。

私自身、入院や手術の経験があって、そういう時ってやっぱり不安やモヤモヤ、イライラといったネガティブな感情が心の中に押し寄せてくるんですよね。そして縋るような気持ちで医師を頼って病院へ行く。そういう心の部分まで見てくれる先生って本当にありがたい存在だと思いますし、総合診療医という存在を知って、「すごくいいな、身近にいてくれたらいいな」と思ったんです。

そして主人公の徳重晃先生の柔らかさと芯の強さを併せ持っている姿に触れた時、「こういう主人公の物語をドラマとして世に送り届けられたら、世界がもっと優しくなるんじゃないかな」と、そんな希望の光のようなものを感じて、すごく惹かれました。

――映像化するにあたって、大切にしたいと感じたテーマや視点はありましたか?

原作を読んだ時に受け取った「柔らかさ」や「優しさ」そして「芯」は、絶対に大切にしようと最初から決めていました。そして、徳重先生をはじめとする医師たちの人間味ですね。漫画の中の人物たちがすごく生き生きとしていて、人としてちゃんとそこにいる感じがしたので、ドラマの中でも「この人たち、どこかに実在するかも」と思ってもらえるような、リアルな人物像にしたいと思いました。

「この世界のどこかにいる」と感じてもらえるような存在として描くことで、医療の現場が身近に感じられたらいいなという思いがありました。

監修の生坂医師の「いくらでも協力します」に背中を押されて

――総合診療医を描くにあたって、どのような準備をされましたか? また、印象に残っている言葉などがあれば教えてください。

まずは、私たち自身がしっかりと勉強しなくてはと思い、たくさんの医療従事者の方に取材をさせていただきました。今回監修に入ってくださっている総合診療医の生坂政臣先生や内倉淑男先生をはじめ、さまざまな診療科の先生方からもご意見をいただいて、アンケートを実施したり、総合診療医に対するイメージを多角的に集めたりしました。

その中でも印象的だったのが、生坂先生の「ドラマで総合診療医を扱ってもらえることが、本当にうれしい。総合診療医の存在がもっと世の中に知られていったら、救われる人はきっと多いし、世の中の役に立てる。医療界が少しずつより良い方向に変わっていくことができると信じているから、総合診療医を広めてほしいし、そのためならいくらでも協力をします」という言葉に、心から励まされました。

私も原作を読んだ時に感じた、「総合診療科がもっと世の中に広まったら、世界はきっと今よりも優しく、温かい場所になるんじゃないか」という思いと合致したんです。だからこそ、生坂先生の言葉に深く共感しましたし、「先生方のお力をしっかり借りながら、ある使命を持ったドラマとして取り組まなくては」と思いました。

そして、総合診療科の先生たちに「このドラマがあって良かった」と思ってもらえるような作品にしたい。おこがましいかもしれませんが、「医療の未来は明るい」と感じてもらえるような、そんな希望を届けられる作品にしたい。そんなふうに強く心に誓ったことを覚えています。

――脚本は坪田さんが担当されています。脚本を読んでどんな印象を持ちましたか?

坪田さんが書いてくださる言葉は、温度があって、血が通っていて、優しさと強さがあって……気づかぬうちに心が解かれてしまうような力があるんです。台本の打ち合わせの時に、みんなが泣いてしまう瞬間もありました。それぞれが経験した病気や喪失の体験やその時の思いを話して共有する場面も多くて、そうした話を坪田さんが丁寧にすくい取って、言葉にしてくださっている感覚があります。坪田さんの中にも徳重先生を感じるんですよね。

坪田さんとは一緒に脚本を作っていく中で、徳重先生の「問診」のシーンを物語の肝としてすごく大切にしています。生坂先生が、「患者さんと向き合い問診するときに、患者さんが憑依するような感覚がある」と仰っていたんです。その言葉をヒントに、徳重先生が患者さんの世界に入っていくような描写を、どう映像として表現していくかを繰り返し話し合いました。