映画『夢売るふたり』(12)、テレビ朝日系ドラマ『スイッチ』(20)など数々の作品で共演を重ねてきた阿部サダヲと松たか子。7月17日スタートのテレビ朝日系ドラマ『しあわせな結婚』(毎週木曜21:00~※初回拡大スペシャル)で再びタッグを組み、今作では50年間独身主義を貫いてきた人気弁護士・原田幸太郎と、幸太郎と運命的な出会いを果たすミステリアスな女性・鈴木ネルラを演じ、夫婦役で出演する。
クランクイン前に行われた今回のインタビューでも、終始リラックスした様子の2人からは、互いへの信頼感が感じ取ることができた。そんな息の合った2人に「忘れられない運命的な出会い」「夫婦像」について聞いた。
松たか子が忘れられない出会い「生まれて初めて…」
――これまでも多く共演経験のあるお二人ですが、今回は“マリッジ・サスペンス”という新しいジャンルで夫婦役を演じます。
阿部:ネルラはミステリアスなので、そういう方を松さんがどういう風に演じるのかというのは楽しみですよね。まだ(作品について)お話したりはそこまでしていないので、どうやって撮影するのかも含めて楽しみです。しかも今回、監督さんが初めましての方で、松さんも初めてだとおっしゃっていて、松さんも真面目そうな方という印象だと言っていたので、うまくやってくれるんじゃないかと……(笑)。
――松さんから見た、阿部さんが演じる幸太郎で楽しみにしているところはありますか?
松:独身主義で自分の生活スタイルを持っている男性で、もしかしたら現代の男性から共感を呼ぶキャラクターなのではと思います。そういう人物像の阿部さんを見られるのも楽しみです。もちろんユーモアもあって、おもしろいんですけど、弁護士という仕事をして違和感のないかっこいい人なので、私が演じるネルラも、そこにうまく関わっていけるような女性にしないと、と思っています。
――ちなみに今作で幸太郎とネルラは、病院で運命的な出会いをきっかけに結婚をするというストーリーですが、お二人がこれまでに経験された、忘れられない出会いや思い出してしまう人はいらっしゃいますか?
阿部:中学のときの先生なんですが、たまに思い出します。不思議な人で、授業をせずに自分の話をして終わるみたいなこともあったり、しゃべり方も独特で、本当に変わった人でした(笑)。
松:女性ですか?
阿部:男の人です。当時から「変わってんな~」と思っていたので、今でも変わった人の役をやるときに思い出すんです(笑)。「不思議な人ってどういう人だろう?」と考えると先生を思い出します。
松:私は小学校低学年にピアノを習っていた先生。その時期の記憶がないくらいものすごく厳しい先生で、私が倒れて……生まれて初めて点滴を打つという経験をしました(笑)。
阿部:マジですか……!?
松:それでピアノをやめて。でも中学に入学してからやっぱりピアノを勉強したくて、違う先生に習い出したんですが、でもその厳しかった先生は今でも舞台とかを観に来てくださっていて、仲良くさせてもらっています。
私が練習をサボりがちだったので、“あのとき、その先生のもとでもっと頑張っていれば、ピアノを頑張れていたかもしれない”といつも思い出しますし、あの厳しいレッスンを乗り越えていたら、今のこの人生じゃないだろうなと思うぐらいすごい先生でした。
阿部:本格的な人なんですか?
松:そうですね……! 強いピアノを弾く方でした。でも、自分ではわかっていなかったんですが、私の音感とかをすごく買ってくれていた先生だったので、感謝しています。いろんな意味で非常にインパクトのある先生だったなと(笑)。
パートナーの秘密を知ったら? 阿部サダヲが妻に秘密にされたこと
――まさに忘れられない人ですね……! また、夫婦役ということで、“夫婦像”についてもお伺いできればと思います。今回ネルラが秘密を抱えており、その秘密が明らかになるというストーリーですが、もし、お二人がパートナーの秘密を知ってしまったとしたら、どうしますか?
阿部:秘密があったからといって、急に嫌いにはならないと思います。何か理由があるだろうし……秘密があるのかなんて考えるのも嫌だな(笑)。
松:確かに(笑)。秘密があったとして、すぐ嫌いになれるぐらいだったらパートナーになっていない気がします。解決に向かってどうするかということだけで、嫌いになるとか、そういう簡単なことでもない気がします。好きになったのが自分だから、そんな簡単に嫌いとは言えないかな……内容にもよりますが、“なぜそうなったのか”という方向に考えていくと思います。
阿部:難しいですけど、逆に簡単なときもありますよね? 実は最近怒られたことがあって、この間、回鍋肉を作ってもらったんです。「少し作り方を変えてみた」と言っていたのですが、僕が「辛い」と言ったら、どうやって作ったかを教えてくれなくなっちゃった(笑)。
松:秘密にされちゃったんですね(笑)。
阿部:そういうパターンでいうと教えたい秘密もあるでしょうね(笑)。ここが今回は違うとか、違う調味料を使ったみたいなことがあったのかもしれないけど、そこに触れずにただ「辛い」と言ったらもう教えてくれませんでした(笑)。
松:言わないことが賢明なこともありますね(笑)。
阿部:ありますね(笑)。共感してほしいこともあると思うので、秘密を聞いてあげるというのもありかもしれないですね。
阿部サダヲ&松たか子が語る“夫婦観”
――素敵なエピソードもありがとうございます。最後に夫婦として結婚生活を続けるうえで大事なことについてもお聞かせください。
阿部:なんでしょうね……今も続いてますからね(笑)。あまり考えなくてもいいかなとは思います。「これが大事!」と思ってしまうと、違う違う! と軌道修正したくなってしまうから。
ただ、うちは結構嫌いなことが似ていたりするんです。好きなもの・ことは合っていても、合っていなくてもいいと思うんですが、「これはちょっと嫌だよね」ということが合っているのが、いいのかもしれないです。
松:結婚生活を続けるうえで大事なこと……わかりません(笑)! でも、自分が健やかでいることじゃないかなと。自分が機嫌良くいれば、周りの人も機嫌が良くなっていくような気がします。
阿部:最近、“フキハラ”というのがあるらしいですよ。不機嫌ハラスメント。そんなこと言われたら、もうどうしたらいいか……。
松:不機嫌でいるとハラスメントになっちゃうってことですか? でもそうすると、関わりを持たない人が多くなってしまいますよね。触らないことがいいとなってしまうと、人に無関心になってしまうし、なんかちょっと寂しい気もします。フキハラにならないように機嫌良くいようと思います。
■阿部サダヲ
1970年4月23日生まれ、千葉県出身。1992年より松尾スズキ主宰の大人計画に参加。俳優としての活躍のほか、バンド「グループ魂」のボーカルとしても活動。単独ライブ「羽田で単発のバイト」 が9月10日(水)に東京・Zepp Hanedaにて開催。主な出演作は映画『シャイロックの子供たち』(23)、『死刑にいたる病』(22)、ドラマ『不適切にもほどがある!』(24/TBS系)、『スイッチ』(20/テレビ朝日系)など。7月17日スタートのテレビ朝日系ドラマ『しあわせな結婚』(毎週木曜21:00~)で主演を務める。スタイリスト:チヨ ヘアメイク:中山知美
■松たか子
1977年6月10日生まれ、東京都出身。1993年に歌舞伎座『人情噺文七元結』で初舞台を踏み、その後、様々な舞台、映画、ドラマに出演。1994年にテレビドラマに初出演し、1997年に『東京日和』で映画デビュー。同年「明日、春が来たら」で歌手デビュー。2009年に『ヴィヨンの妻 ~桜桃とタンポポ~』で第33回日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞。主な出演作は映画『ラストレター』(20)、映画『ファーストキス 1ST KISS』(25)、ドラマ『スロウトレイン』(25/TBS系)、『大豆田とわ子と三人の元夫』(21/カンテレ・フジテレビ系)など。スタイリスト:杉本学子(WHITNEY) ヘアメイク:中野明海