
「スペアタイヤ(応急タイヤ)、積んでますか?」
ここ半年ぐらいで友人2人のクルマがトラックで運ばれていった。理由はシンプルにパンクである。縁石や尖ったものにタイヤをひっかけたらしく、サイドウォールに大きな穴が開いて、パンク修理材ではなすすべもなかったのだ。
しかもスペアタイヤをクルマに積んでおらず、移動もできないのでJAFを要請したり、修理屋さんを呼ばなければ先へ進めなかったのだ。
ご存じかと思うが、パンク修理材は釘を踏んだりしたようなパンクなら活用できるが、大きな穴や裂傷にはまったく効果はない。それだけに、最近はパンクで立ち往生するクルマが増えているのである。
オイラは野生動物探しや綺麗な景色を見るために路面が悪いダート林道に分け入ることが多い。よりよい景色を求めると、山奥に分け入る傾向も強まり、そしてパンクの危険性も高まる。
そんなわけでオイラはクルマ選びのときの条件にスペアタイヤも入れていた。最近は、パンク修理剤が標準でスペアタイヤはオプションという場合も多くなっている。オイラが乗っているVWティグアンのTDI(ディーゼルモデル)にはスペアタイヤはなかったが、FFのグレードには装着されていた。写真などで見比べてみるとスペースは十分にあったので、自分で手配して積むことにしたのである。
(写真はティグアンTSI FF車)
しかし世の中、砂利道をSUVで軽快に走るTV CMなどをやっているけど、応急タイヤ(スペアタイヤ)設定がないクルマであんなことは絶対にできない。そういった使い方をアピールするなら、せめてオプションで用意するのが自動車メーカーの良心だと思うのだ。
積めばいいや、と簡単に考えていたのだが、これが意外と厄介だった。
TDIは4WDである。だから5本目に当たるスペアタイヤのサイズを、装着されている4本のタイヤサイズに極力合わす必要がある。当たり前の話のように聞こえるが、FF車の後輪ならタイヤサイズが多少違っても問題ないが、4WDで1本だけタイヤサイズが違うと引きずりが出るのである。
このスペアタイヤの外形サイズを装着タイヤと揃えるというのがなかなか大変だった。
ティグアンTDIの標準タイヤサイズは235/55R18。外形を計算すると約716mmである。まずホイールのPCDを考えるとVW純正かアウディのものが使えると判断。しかしスペアタイヤのサイズはT125/80R17なので、外形は約632mmと小さすぎて使えない。
そこで、タイヤサイズで探してみる。日産エクストレイルのものにT155/90D17というのがあり、外形を計算すると約711mm。
となればアウディのホイールにこのタイヤを組み込めばいい!
合わないホイールとサイズ違いのタイヤは無駄にはなるが、2個イチで組み合わせるしかないのだ。メルカリやヤフオクで探して、やっと見つけて購入した。
その昔、ラリーカーを作っていたころはテンパー応急タイヤは邪魔な粗大ごみでしかなかったが、欲しいときに手に入れるのにこんなに苦労するとは。今となってはパンク対策の大事なアイテムになっている。
買い揃えたそれぞれをバラして組み替えてもらうと、ちょうどいいスペアタイヤが完成。リヤスペースのパンク修理材などをどかしスペアタイヤを置くとドンピシャリ。いい感じで収まった。タイヤを止めるセンターロックはないけど、上から何かで押さえておけばガタつくこともない。
そして忘れてはいけないのが、タイヤ交換のための工具だ。スペアタイヤがないクルマにはこれらも載ってないから忘れずに。ジャッキ、タイヤレンチ、軍手があればOKだ。
さあこれで悪路を走っているときの恐怖感もだいぶ薄れる。パンク1本までは対応できるから移動制限がかからない。
今度はどこでどんな景色や動物に出会えるだろうか!
〈文と写真=三好秀昌〉