なかでも視聴者の涙を誘う出色の出来だったのが第5話。ぜひ見てほしいエピソードのため「病室前で親友へ向けた無言のエール」とだけ紹介しておくが、小林宙プロデューサーが重松清の原作小説を読んで「『最も映像化したい』と思っていた」と語り、「リハーサルからスタッフたちが涙をこぼしていた」という感動的な仕上がりだった。

そして当作を語る上でもう1つ見逃せないのが、毎回のように飛び出す名言の数々。“応援”にかかわるセリフはそのまま人生に置き換えられるようなものが多かった。

「人間には2種類の人間がいる。人のことを応援できる人間と応援できない人間だ。人のことを応援できない人間は、人からも応援してもらえない」

「応援というものは、そもそもごう慢なことなんです。精一杯頑張ってる人間に『もっと頑張れ』と言うわけですから。ですから我々団は応援される人間よりも、もっともっとたくさん汗をかくんです。人に『頑張れ』と言うからには、応援する我々がもっと頑張らなければ応援する資格なんぞ持てません」

「学ランはなあ、団の魂だ。学ランの襟が何でこんだけ高いか知ってるか? うつむかないようにするためだ」

「わしは団の人間だから、家族のことも人一倍応援したいと思うとるし、できているとも思うていた。でもいなくなって気づいたんだ。わしが応援していたんじゃない。家族が応援してくれてたんじゃ」

人間として生きていれば、思いのほか誰かに応援されている。周りに自分を応援してくれる人はいないか。自分の応援ばかりしていることに気づかされた……。そんな示唆に富んだセリフの効果なのか、序盤に多かった「今どき応援団?」「人の応援より自分らしく生きるほうが重要では?」などの声は中盤に入ると消えていた。

「推し活ブーム」の現在に合う感も

第1話で藤巻が齊藤と山下から「のどをつぶせや。『今のお前にはのどをつぶすことしかできんじゃろ』と言うとるんよ」「それが団の誠意っちゅうもんや」などと言われるシーンがあった。OBに限らず応援団のやり取りには理不尽なものが多い。しかし、そんな理不尽には必ず意味があり、それを強いる人物は率先するように全力で挑む姿を見せていた。

正直なところ、ハラスメントに敏感な人は「見ていられない」と思ってしまうかもしれない。ただ、その一方で自分ではない誰かを懸命に応援する「推し活ブームの現在に合いそう」という感もある。

不倫や復讐などドロドロの人間関係を描いたドラマが多い中、当作にあるのはそんな懸命に生きる人々の姿のみ。だからなのか当作は応援団員だけでなく、チアリーダー部や吹奏楽部、さらに応援される側の運動部、友人や家族なども含め、すべての登場人物が主役の群像劇に見える。

主演は柳葉敏郎だが、反町隆史、西田敏行ら助演も充実。チアリーダー部の部長・葉月玲奈に高畑充希、フェミニズム論研究室から派遣された応援団員・松下沙耶に剛力彩芽、一見チャラい応援団員・保阪翔に風間俊介、藤巻の娘・美紀に飯豊まりえ、今をときめく一ノ瀬ワタルと塩野瑛久がライバル大学の応援団長・副団長として出演していた。

さらに多少マニアックなところでは、『あなたの番です』(日本テレビ系)の不気味な演技で視聴者を震かんさせた大内田悠平も出演。イメージとは真逆のピュアな応援団員を演じていた。

「熱い」と「暑苦しい」は紙一重であり、どちらを感じるかはわからない。しかしそれでも間違いないのは、「とことん深く刺さる人がいる」ということ。もしあなたがそうなら、熱さと同時に心地よい爽快感も味わえる作品であることは確かだ。

日本では地上波だけで季節ごとに約40作、衛星波や配信を含めると年間200作前後のドラマが制作されている。それだけに「あまり見られていないけど面白い」という作品は多い。また、動画配信サービスの発達で増え続けるアーカイブを見るハードルは下がっている。「令和の今ならこんな見方ができる」「現在の季節や世相にフィットする」というおすすめの過去作をドラマ解説者・木村隆志が随時紹介していく。