JR東日本高崎支社は3日、信越本線(高崎~横川間)などで活躍中のSL列車を牽引するGV-E197系TS08編成の営業運転開始に先立ち、「信越本線『GV・SLぐんま横川』試乗会」を実施した。GV-E197系TS08編成を先頭に、試乗会の列車は高崎駅を発車し、横川駅へ向かった。

  • 「信越本線『GV・SLぐんま横川』試乗会」が行われ、GV-E197系TS08編成の牽引で高崎~横川間を走行した

GV-E197系は砕石輸送・砕石散布作業用に加え、入換作業や回送車両等の牽引用としても使用するために製造された電気式気動車。おもに工事用車両の役割を担うが、今夏から営業運転を開始するTS08編成(GV-E197-201・GV-E197-202)は、蒸気機関車の牽引用として使用できる唯一の編成になるという。高崎支社管内で活躍する蒸気機関車2機(D51形498号機、C61形20号機)の新たな「相棒」として、高崎~横川間(信越本線)および高崎~桐生間(上越線・両毛線)で運行される「のってたのしい列車」を牽引することになる。

蒸気機関車を牽引するにあたり、特別な改造が必要とされ、中でも安全性に直結するブレーキの調整は時間を要したとのこと。転車台がなく、蒸気機関車の進行方向を変えられない高崎~横川間・高崎~桐生間でのSL運行に向けて試運転を繰り返した結果、今夏から「GV+客車+SL」という編成による運転の実現に至った。

  • GV-E197系を先頭に、試乗会の列車が高崎駅2番線ホームへ入線

  • 12系客車の方向幕は「試運転」の表示に

  • この日の蒸気機関車はD51形498号機

  • 駅員らに見送られ、高崎駅を発車した

7月3日の「信越本線『GV・SLぐんま横川』試乗会」は、これまでSL運行を通じて地域の観光振興に尽力した地域の関係者へ感謝の気持ちを込めるとともに、新たに投入されるGV-E197系の魅力を広く知ってもらうことを目的として開催。信越本線高崎~横川間の沿線である高崎市と安中市の観光関係者・学校関係者が招待された。

試乗会の列車は、営業運転開始後の「GV・SLぐんま横川」と同時刻で運転された。9時33分、GV-E197系TS08編成を先頭に、12系客車3両(3号車「スハフ12 162」、2号車「オハ12 366」、1号車「スハフ12 161」)と蒸気機関車(D51形498号機)を連結した編成で高崎駅2番線ホームへ入線。9時47分、駅員らに見送られ、蒸気機関車の汽笛とともに高崎駅を発車した。その後、車内で高崎駅長の長谷川秀治氏が挨拶。「SLとともにこの客車を牽引していたEL(電気機関車)・DL(ディーゼル機関車)が昨年引退し、EL・DLに代わる牽引機はないかということで、工事用車両のGVを改造し、牽引できるようにして今日を迎えています。営業運転開始の前にぜひ、GV・SLで楽しんでいただきたい。その思いで試乗会を企画しました」と述べた。

  • 緑あふれる車窓風景の中を列車は進む。12系客車の車内に、高崎支社エリア内で活躍する蒸気機関車2機の説明も

  • 安中駅を発車した後、車内で地元高校生らがおもてなしを行った

高崎市内の住宅地を抜け、碓氷川に架かる通称「安中鉄橋」を渡ると、10時4分に安中駅へ到着。広い構内を有し、南側に工場(東邦亜鉛安中精錬所)が見える同駅で8分間停車する。10時12分に発車した後、列車は緑豊かな田園風景の中を快走。車内では安中総合学園高校の生徒によるおもてなしが始まり、太鼓部のパフォーマンスに続いて信越本線(高崎~横川間)沿線の魅力紹介などが行われた。磯部駅を過ぎると、やがて車窓に妙義山を望みながらの上り坂となり、松井田駅、西松井田駅を通過した。昨年までと比べて客車の車両数が少ないからという理由もあるだろうが、今回の試乗会を体験した限りでは、GV-E197系の牽引による走行は順調そのもの。25パーミルという急勾配の区間も、難なく走り抜けた様子だった。

試乗会の列車は10時49分、ほぼ定刻に終点の横川駅へ到着。降車後、ぐんま車両センター社員による車両説明が行われた。今回の牽引機となったGV-E197系TS08編成について、「2024年6月に新車として登録されました。大きな特徴として、他の編成は砕石車と一緒に走行していますが、TS08編成に砕石車は付いていません。SLの牽引を目的に作られた車両で、特別な改造が加えられています。(GV-E197系の中で)SLと一緒に走れる車両はTS08編成のみのため、貴重な車両になっています」とのことだった。TS08編成も含め、GV-E197系は「さまざまな車両を牽引できる」「電車と同じくモーターの力を利用して走る」「電車の免許で運転できる」といった特徴を持つ。一方で、牽引車が2両の理由を「安全に牽引するために、1両ではパワーが足らないという事情があり、2両で牽引しています」と明かす場面もあった。

  • 「GV・SLぐんま横川」の終点となる横川駅に到着。ぐんま車両センター社員によるGV-E197系の車両説明などが行われた

  • GV-E197系が12系客車3両と蒸気機関車を牽引する編成で運転された

今後、GV-E197系を先頭とする場合は「GV・SLぐんま」、蒸気機関車を先頭とする場合は「SL・GVぐんま」の列車名で運転されるという。「GV・SLぐんま横川」(高崎駅9時47分発・横川駅10時49分着)は7月19日から営業運転を開始し、同日に高崎駅で出発式を開催。横川駅到着後、蒸気機関車の牽引による「SL・GVぐんま横川」(横川駅14時15分発・高崎駅15時18分着)も運転される。両列車ともに今夏の運転日は7月19・20日、8月10・11日、9月13日とのこと。7月21日と8月9日に「SL・GVぐんま桐生」(高崎駅9時47分発・桐生駅11時55分着)、「GV・SLぐんま桐生」(桐生駅14時7分発・高崎駅16時4分着)の運転も予定している。

GV-E197系の営業運転デビューを盛り上げる各種イベント・企画も実施。9月13日まで行われる「ウェルカムGVキャンペーン」では、「GV・SLぐんま」または「SL・GVぐんま」への乗車で豪華賞品をプレゼントするほか、SNSへの写真投稿で「GVヘッドマークシール」のプレゼント(先着3,000名)も。「GV・SLぐんま横川」の撮影会(7月20日と8月11日に開催)や、ぐんま車両センターでのGV-E197系車両見学会(9月23日に開催)などのイベントも予定している。7月19日から11月中旬(秋のSL運行最終日)まで、駅周辺やSL列車内で楽しめる謎解きゲーム「SLぐんまミステリートレジャー ~石炭くんと三つの軌跡~」も開催される。