野球ファンにとって夏の一大イベントといえば、やはり高校野球全国大会、すなわち“夏の甲子園”でしょう。すでに沖縄や南北北海道では地区予選が始まっていますが、7月5日には東東京大会・西東京大会の合同の開会式が神宮球場で開催されることになっています。

既報のとおり、ジェイコム東京(J:COM)は東東京大会・西東京大会の開幕を一週間後に控えた6月28日18時に、J:COM チャンネル(地デジ11ch)において、高校野球をさまざまな角度から応援する特別番組「10年後の君へ ~Tokyo高校野球物語~」を放送します。この番組の収録現場にお邪魔して、出演者のお二人と番組制作チームの方に番組の狙いや見どころをお聞きすることができました。

出演者二人の立ち話が企画立ち上げのきっかけ!?

J:COMではこれまで、地区大会の試合や組み合わせ抽選会は生中継・ダイジェストで放送してきましたが、開会に先立って事前特番で盛り上げるというのは初めてのことになります。この番組の立ち上げには、長くJ:COMの「夏の高校野球 東京大会 ダイジェスト」のMCを務めている豊嶋彬さん、ベースボール専門メディア「Full-Count」のエグゼクティブディレクター・楢崎豊さんという出演者お二人の何気ない会話がきっかけとなったのだそうです。

  • 豊嶋彬さん、楢崎豊さん

    「10年後の君へ ~Tokyo高校野球物語~」に出演する豊嶋彬さん(左)、楢崎豊さん(右)

豊嶋「自分は10年近くダイジェスト番組に関わらせていただいてまして、それに加えて抽選会もJ:COMさんで生中継して番組をやらせてもらってるんです。そこに3年前くらいから、楢崎さんが解説としてきていただくようになったのがスタートです」

楢崎「僕は最初は一視聴者だったんです。それが3年前に解説のお仕事をいただいて。そこで、自分も東京の大会を盛り上げたいという思いもあったし、高校野球の番組を見て育って、他の県の高校野球番組もやっぱり好きですし、東京の高校野球の番組があると東京の子たちには刺激にも思い出にもなるから、そういうものが作れるといいなっていう話を、立ち話で豊嶋さんにしたんですね。そうしたら『そうなんですよ、そういうのやりたいんですよ』っていう話になったんです。それが2年前の夏。ただそこから1年間は何もできなくて、1年後にまた同じ形でお仕事をしたとき、帰りの電車で話が盛り上がって、『やっぱりやりましょう、巻き込んでいきましょう』と。それでJ:COMさんにお話をしたら、同じ思いを持ってくださってた方がすごく多くて、2人が3人になり、3人が4人になり、最後には10人になって、実現できたという流れなんです」

そんな豊嶋さんと楢崎さんの会話がされた2年前というと、コロナ禍の影響がようやく落ち着いてきた時期でした。

豊嶋「高校野球の番組も、コロナの時期には縮小しなければならないところがあったりしました。それから世の中の状況も変わって、高校野球の現場だけは熱が高まっていたんですけれど、周囲の盛り上がりの復活が追いついていなかったんです。そこに楢崎さんにそう言っていただいたので、ちょっと力を借りにきたというか」

楢崎「自分には会社の想いというのもあって、映像はJ:COMさんでやるとして、僕らは『Full-Count』というテキストの野球メディアで高校野球の情報を発信してきたいなというふうに気持ちも変わって、そちらでは豊嶋さんと一緒に連載を始めたりということもやっています」

  • スリーボンドスタジアム八王子 グラウンド

    この日の撮影が行われたスリーボンドスタジアム八王子(八王子市民球場/富士森公園野球場)。この球場も西東京大会で利用され、J:COMによる中継も行われます。左翼にはJ:COMのフェンス広告も見られます

関わるすべての人にストーリーがあることを伝えたい

そんなきっかけから始まった今回の番組。豊嶋さんにどんなことを伝えたいのかを聞いてみました。

豊嶋「伝えたいことがありすぎて困っちゃうんですけど(笑)。僕が見てきた高校野球は、グラウンドだけのものじゃなくて。選手がもちろん一番なんですけど、それもグラウンドに立ってる選手、グラウンドにまだ立ててないけどベンチに控えている選手、ベンチにも入れなかったけどスタンドで応援している野球部員がいる。そして、その親、同級生、兄弟やおじいちゃんおばあちゃん、そのほか地元の人とか、それぞれにストーリーがある。そこがいちばん伝えたいところ」

豊嶋「東京だと東西合わせて200校近くがあって、甲子園を目指すだけじゃない。甲子園に出るのはもちろんいちばん素晴らしいことで、ひとつ成し遂げたということになるとは思うんです。だけど例えば、いつも部員が足りなくて、連合チームを組んでそれでも出場するという学校があったりする。それでも野球部を選ぶ子って、それはやっぱりすごいこと。勝てないかもしれませんが、このグラウンドに立って夏の大会に出場したっていうのがもう素晴らしいことだと思います。で、そんな何年か連合チームで出場していた学校が単独チームで出てきたりすると、あ、部員を集めるのを頑張ったんだなって」

豊嶋「西東京の学校だと、準々決勝くらいになると神宮球場で試合ができるんです。だからそれを目指すっていう学校もありますね。世の中に大きく出るのは、甲子園に出たとか決勝まで行ったとかそういうところだとは思うんですけど、それに負けない素晴らしい目標をみんなが持っている」

  • バックネット裏での撮影シーン

    撮影は球場のあちこちを移動しつつ行われました

豊嶋「これは野球部員だけの話ではなくて。吹奏楽部にも、野球部の応援で吹きたくて入ってきたっていうような子もいるんです。でも、夏の大会の最初の時期って、テスト期間とかぶってて吹奏楽部は来れませんっていうことが結構あるんですよ。そこから一週間くらい進むと応援も入れるようになるから、野球部としても応援にきてもらえるところまでは勝ちたいということがあったりします」

豊嶋「話し始めるときりがないんですが、そういうみんなが知らない素晴らしいことがいっぱいあるんだというのを伝えたいとは思っています」

楢崎さんにも同じ質問をしてみました。

楢崎「最後の夏って、2年半かけてたどり着くんです。本人たちにとっては長いんですけど、それが永遠に忘れられない夏になるんですよね。いい思いをした2年半の人もいれば、もう思い出したくない2年半だったっていう人もいるんですけど、どちらもそれはその時の感情で、10年後、あるいはその先に変わっている可能性がある」

楢崎「やっぱり野球やっててよかったよね、高校野球やっててよかったよね、試合出てるメンバーもベンチ外も離脱しちゃった人も応援団もマネージャーも、みんなあのときあれがあったから、いろんなことを乗り越えられたよね、今のあれに生きてるよね――みたいな話になると思うんです。10年後に正解がわかる、というか。今やっていることが間違っていないよって伝わる番組にしたいと思っています。それで10年後とかに答え合わせをしてほしい」

楢崎「自分がずっと取材を続けてきた中で、数年前にJ:COMで取り上げられたことを今でも誇りに思っている先生やOBの方がいらっしゃったんですね。その当時は大変だったけど、その番組があったから今でも繋がっている絆があるという話を聞いたりしたので、そういうふうに携わっていければいいなと思っています」

  • スタンドでの撮影風景

    このスタンドも、大会が始まれば応援団でいっぱいになるはずです

最後にお二人から、番組を見る方へのメッセージをいただきました。

豊嶋「みなさんが目にするのは試合をやってるところだと思うんです。でも、野球部員は、遊ぶ時間を削って、勉強と両立させながら、毎日練習を積み重ねている。なかなか見られないその毎日の積み重ねの、ほんの一部の学校のほんの一部だけですけど、この番組ではご紹介できるので、そういうところを見てもらいたいです。高校野球、とくに夏の大会はすばらしい舞台だと思っていて、それを選んでくれたことがすごく嬉しい。ほんとうに大事な高校生活を一番捧げているところだと思うので、彼らの青春を見てほしいと思います」

楢崎「自分は、辛いときやくじけそうになったときに、この番組を観たり録画したものを観たりして『よし、明日頑張ろう!』って思ってもらえるようにしたいなと思っています。この番組が、活力剤みたいな存在として発信できればいいなと思っています」

「10年後の君へ」が含むもうひとつの意味

もうお一人、今度は制作チームから、J:COM プロダクション本部 映像制作部 東京制作グループ リージョナルマネージャーの関原真人さんにもお話をうかがいました。

  • 関原真人さん

    J:COM プロダクション本部 映像制作部 東京制作グループ リージョナルマネージャー 関原真人さん

関原「今回の番組は、一言で言うと『東京の高校野球のチーム紹介』ということになるんですけど、ただ野球部を紹介するというだけではなくて、野球部を支える人たち、団体、それから指導者、地域の人、そんな方たちも紹介していきます。野球部をフックとして広がっている、そういう繋がりみたいなものを紹介していきたいということで始めた番組です」

出演者のお二人からも番組企画の立ち上げのきっかけのお話を聞きましたが、制作側としても単に「提案があったから」というだけでない狙いもあるようです。

関原「過去にもチーム紹介というのはやっていたんですけれども、こういった特番でというのは初めてになります。東京の高校野球に関しては、1回戦から生中継をやるということにこだわって続けてきているんですけれど、抽選会から開幕までの間のブランクがあるんです。そこで機運を常に高めていきたいというのも、特番をやってみようかという理由のひとつですね」

番組タイトルについても聞いてみました。

関原「いろんな捉え方があっていいと思うんですけども、私としてはまず今この時点で高校野球に携わっている人たちや選手の皆さんが、10年後とかの近い将来、『あ、こういうとこに繋がったな』『やっててよかったな』というような思える日が来ると思うんですね。なので、今やってることが無駄じゃないんだよっていうことを伝えたいというのがひとつ」

関原「それからもうひとつ考えたのは、この先高校野球やるかもしれない小学生/中学生の子たちのこと。この番組を見たときに『高校野球っていいな』『僕もやりたいな』という思いを持ってもらいたいというのも『10年後の君へ』に含んでいます」

最後に関原さんにも、視聴者へのメッセージをお願いしました。

関原「この番組は高校野球を取り上げてはいますが、高校野球に限らず、スポーツに打ち込めるっていうのはいろんな人のサポートや応援があってのことだと思うんです。今スポーツに打ち込んでいるみなさんにはそういう思いを受け取ってほしいと思いますし、サポートする人たちにも選手の思いをくんでサポートしてほしいと思います。そんなきっかけになる番組だと思っています」


撮影現場を見ていても、番組に関わる皆さんから高校野球に対するなみなみならぬ思いを感じましたので、きっと熱意あふれる番組になっていることと思います。出演者のお二人も制作の関原さんも、グラウンドに立つ選手だけでなく、選手たちをとりまく人々に注目したいと語っていたのが印象的でした。

  • 撮影の合間にバットを手に取る豊嶋さん

    撮影の合間、豊嶋さんがバットを手に取ってスイング。とにかく野球好きが集まったという感じの現場でした

「10年後の君へ ~Tokyo高校野球物語~」番組情報

  • 放送エリア:東京都内のJ:COMサービスエリア
  • チャンネル:J:COM チャンネル(地デジ11ch) ※地域内のJ:COMネットワークに接続されている建物では有料サービス加入の有無にかかわらず視聴可能
  • J:COM チャンネル放送予定
    6/28(土)18時~19時 ※東京都町田市/稲城市では放送なし
    6/29(日)21時~22時
    7/01(火)21時~22時
    7/02(水)21時~22時
    7/03(木)18時~19時
    7/04(金)21時~22時
    7/05(土)11時~11時55分
  • インターネット配信:地域情報アプリ「ど・ろーかる」で配信 ※放送エリア外でも視聴可能
  • インターネット配信期間:6月29日(日)~7月29日(火)