※前編では、NO.9(第9問)までを掲載しています。N0.10(第10問)以降をお読みになりたい方は、後編をご購入ください。

  • 新手年鑑2025年版

    新手年鑑2025年版

はしがき

振り飛車党が頑張った一年でした。佐藤天九段は名人戦と棋聖戦で挑戦者になるまであと一歩のところまで迫り、升田幸三賞を受賞しています。西田六段は永瀬九段もイチ押しの振り飛車党で、王将戦でプレーオフに進出しました。今回の表紙は、王将戦でリーグ入りを決めた一番のものです。何とも強い三段玉でした。
本誌に連載している私の講座で取り上げたものは、割愛しています。その中では、棋士編入試験の最終局▲柵木四段―△西山女流三冠が印象に残りました。戦型は西山の三間飛車に、柵木の腰掛け銀急戦。実はこの急戦、明治生まれの「将棋学徒」こと小堀清一九段(1912‒1996)が得意にしていた形です。駆け引きや水面下の変化に違いはあれど、古豪の作戦が大一番で蘇ったのは驚きました。藤本六段も指しているのを見ると、その優秀性は21世紀生まれの棋士にも認められているといっていいでしょう。
古い作戦が新しいエッセンスを取り入れて進化しているのを見ると、改めて温故知新を実感します。今回は新手・新構想だけではなく、知る人ぞ知る「干瓢(かんぴょう)巻き」の謎にも迫りました。ご協力いただいた皆様に感謝申し上げます。
七段 勝又清和
編集協力 小島渉
本文中、一部肩書・段位を省略しました
※本文中の段位は将棋世界本誌掲載当時のもの

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NO.1

  • 第1問

    第1問

ヒント

相掛かりの序盤に▲3六飛のタテ歩取りに△8四飛と受ける展開から図に。玉の位置や端歩の違いを含めれば、類型はたくさんあるが、次の一手はいままでにない新感覚だった。
(R6/4/23・24 豊島―藤井聡 名人② 後手番)

第1問解答

  • 第1問解答

    第1問解答

△5五角(解答図)

豊島は相居飛車の最新形を主戦場にしていたが、2023年から振り飛車や力戦形を交えるようになった。多彩な作戦を名人戦でも披露している。第2局のタテ歩取りからひねり飛車を目指す作戦は戦後によく指され、22年に引退した師匠・桐山九段の得意戦法としても知られた。現代では使い手が斎藤明など、一部の棋士に限られている。
長い蓄積のある戦型ながら、解答図のように後手が中央に角を出たのは藤井聡ならではの柔軟な発想で、見たことがない。意味は△3三桂や△3三銀の発展を作ったこと。不安定な角のようでも妙に追いにくく、▲5六歩は△6四角で△7五角を狙われてしまう。

  • 第1問解答A

    第1問解答A

  • 第1問解答B

    第1問解答B

解答図の最善は▲8五歩で互角だったが、実戦は▲6八銀△9三桂で後手ペースに。今度は▲8五歩としても、△同桂▲8六飛△7七桂成▲8四飛△8八成桂(A図)▲同金に△7六桂が両取りになる。7九銀型ならA図の▲8八同金が▲8八同銀になって問題なかった。本譜は△9三桂以下▲8七歩△8五桂▲3九玉△7七桂成▲同銀△4四角▲2七歩(△2六桂の防ぎ)△3三桂(B図)で後手有利。先手は歩切れで、対して後手は1筋の端攻めが楽しみだ。結果も藤井勝ち。

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コラム 佐々木勇気の挑戦①

  • 佐々木勇気の挑戦①

    佐々木勇気の挑戦①

弟弟子の佐々木勇が竜王戦でタイトル戦に初挑戦した。綿密な準備でペースを握っていた将棋が多く、勝局から新構想を紹介しよう。