インテージは6月18日、猛暑に関する調査結果を発表した。調査は2025年5月22日~5月26日、15~79歳の男女5,000人を対象にインターネットで行われた。
夏の暑さ対策費用
2024年の記録的猛暑では、家庭の「暑さ対策」支出実績は平均26,250円だった。同様に2025年についても、昨年同様の猛暑と仮定した場合の平均支出予定額を確認すると、28,497円(前年比109%)と増加傾向に。電気代の高騰や、各種暑さ対策用品の値上げ、数年続いた猛暑を経験したことによる「備え」の意識の高まりなどが、支出増加の一因と見られる。
関連して「夏の生活費に対する不安」についても聴取した。注目すべきは世帯年収による差で、年収1,000万円未満では不安を感じる人が多く、夏の支出に頭を悩ませている人が多いことがわかった。一方、年収1,000万円以上では不安が比較的少なく、積極的な対策が可能な傾向が見られた。
今年の暑さ対策
今年の暑さ対策として最も多く挙げられたのは「エアコン(冷房)を使用」(64.8%)(以下、「エアコン(冷房)」は「エアコン」と表記)で、次いで「水分・塩分補給」(51.0%)、「扇風機を使用」(47.2%)、「冷感グッズを使用」(23.1%)など家電やアイテム活用に関する項目のほか、「涼しい時間帯に外出・買い物」(27.5%)、「火を使わないメニューを増やす」(12.2%)といった行動面での工夫も見られる。全体として、男性に比べて女性の方が対策率が高い傾向にある。日傘については、女性は過半数、男性も約10%近くが暑さ対策として使用予定だった。
エアコンの使用頻度
暑さ対策TOPのエアコン使用だが、使用頻度には年代や世帯構成、居住環境による差が見られた。昨年夏の年代別使用状況をみると、年代が上がるにつれ使用率は高くなっていた。メディアでの報道や、政府や医療機関の啓発活動により、高齢者のエアコン使用率が高まっている側面はあるかもしれない。
エアコンを使わない理由
一方、昨年自宅でエアコンを使わなかったもしくは使用頻度が低い人に、その理由を確認したところ、最も多かったのは「電気代が気になる」(28.5%)で、次いで「冷えすぎ、だるくなるなどで苦手」(18.7%)、「窓を開けたり扇風機で十分」(16.9%)などが挙げられた。エアコン使用率が相対的に高かった70代だが、不使用者においては体調への影響を懸念する声や扇風機で十分・暑さを感じないといった意見が多く、エアコン利用に対する意識が年代で大きく異なることがうかがえる。
暑さ関連の言葉・用語の認知度
最後に、暑さに関する言葉・用語(キーワード)の認知状況を見てみると、「熱中症警戒アラート」「熱中症特別警戒アラート」は認知度が相対的に高かったものの、他はすべて「意味まで知っている」人は2割に満たない結果となった。「暑さ指数(WBGT)」の意味を理解している人は17.5%、「暑熱順化」は17.0%、「クールシェア」は11.1%、「クーリングシェルター」は12.0%と、熱中症対策に関するキーワードの認知度は低水準にとどまっている。
・熱中症警戒アラート: 熱中症の危険性に対する「気づき」を促すものとして、府県予報区等内において、いずれかの暑さ指数情報提供地点における、翌日・当日の日最高暑さ指数(WBGT)が33(予測値)に達する場合に発表されるもの。
・熱中症特別警戒アラート: 都道府県内において、全ての暑さ指数情報提供地点における、翌日の日最高暑さ指数(WBGT)が35(予測値)に達する場合等に発表されるもの。
・暑さ指数(WBGT): 湿球黒球温度/Wet Bulb Globe Temperature。熱中症を予防することを目的として1954年にアメリカで提案された指標。 単位は気温と同じ摂氏度(℃)で示されるが、その値は気温とは異なる。 人体と外気との熱のやりとり(熱収支)に着目した指標で、人体の熱収支に与える影響の大きい(1)湿度、(2)日射・輻射(ふくしゃ)など周辺の熱環境、(3)気温の3つを取り入れた指標。
・暑熱順化: 体が暑さに慣れること。
・クールシェア: 涼しい場所にみんなで集まってシェアすること。
・クーリングシェルター: 指定暑熱避難施設。危険な暑さから避難できる場所として市町村長が指定した施設であり、熱中症特別警戒アラートの発表期間中、一般に開放される。
これらのデータからは、生活者自身の暑さ対策行動が進む一方で、科学的・生理的な知識に基づく対策や各種情報の浸透が追いついていない現状が読み取れる。