メタボ健診などにあわせて行われることの多い胸部レントゲン検査。その結果の通知書に「所見(陰影)あり」と書かれていると、不安に感じる人も多いでしょう。ここでは、胸部レントゲン検査の結果について主に肺がんに焦点を当て、正しく理解し適切に対応するためのポイントを解説します。

健康診断で言われる「肺の影」とは

  • ※画像はイメージです

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胸部レントゲン検査(胸部X線検査)は、症状があるときの診断だけでなく、職場健診や住民検診などでも広く行われている、胸部疾患の代表的な初期検査です。

この検査ではX線を体に当て、その透過の程度によって体内の状態を二次元画像として描出します。X線を通しやすい部分は黒く、通しにくい部分は白く映ります。

肺の内部は空気を多く含むため黒く映るのが通常ですが、本来黒く見えるはずの部分に白い影が映る場合、「肺に影がある」と表現されます。

「肺結節」と呼ばれることが多い

「肺に影がある」と言われた場合、その影が比較的はっきりした形をしていると「肺結節」と表現されることがあります。結節とは、比較的小さな丸い陰影を指す用語です。

ただし、「肺結節がある」という情報だけでは、その正体までは判断できません。過去の感染症の痕跡や良性の変化である場合もあれば、肺がんなどの可能性も含めて評価が必要になります。

経過観察になるケース

肺の影や肺結節が見つかった場合、その性状や過去画像との比較などをもとに、再検査(精密検査)の必要性が判断されます。まずは、経過観察とされる主なケースを見ていきます。なお、経過観察とされた場合でも、定期的な健診や検診を継続することが重要です。

前回も認められていた影

前回の検査でも同じ場所に同程度の大きさの影があり、変化が認められない場合は、急速に悪化する可能性は低いと考えられ、経過観察となることがあります。

悪性の可能性が低い

結節の輪郭が明瞭で、石灰化を伴うなど、過去の炎症や感染症の瘢痕と考えられる場合には、悪性の可能性が低いと判断され、経過観察となることがあります。

再検査が必要になるケース

一方で、一定のリスクが疑われる場合には、再検査が推奨されます。具体的には、以下のような場合です。

前回と比べて変化している

前回の検査では認められなかった新たな影や、以前より大きくなっている影がある場合は、原因を詳しく調べる必要があります。

がんの可能性を否定できない

胸部X線検査で認識される結節は、一般的にある程度の大きさ(目安として数mm〜1cm以上)であることが多く、その性状によっては精密検査が必要と判断されます。 がんであるかどうかは画像だけでは確定できないため、追加検査による評価が重要です。

より肺がんを疑う所見がみられる

輪郭が不整(ギザギザしている)な結節や、典型的な良性病変とは異なる形状がみられる場合には、精密検査が必要とされます。

CT検査で影の特徴を詳しく確認する

肺がんが疑われる場合の精密検査として、一般的には胸部CT検査が行われます。

CT検査でわかること

CT検査はX線をさまざまな方向から照射し、体の断面を重ねて三次元的に評価できる検査です。 これにより、胸部X線検査では把握しにくい重なりの影響を受けずに、結節の位置や大きさ、形状、内部構造などをより詳細に評価することができます。ただし、CT検査のみで確定診断に至ることは一般的ではなく、必要に応じて組織や細胞を採取する検査(生検)を行い、病理検査によって診断が確定されます。

手術が検討されるケース

肺がんと診断された場合、病期や全身状態に応じて治療方針が決定されます。早期であれば、手術によって根治が期待できる場合もあります。一方で、手術が難しい場合には、薬物療法や放射線治療などが選択されることもあります。

結果を見たときに大切なこと

胸部X線検査は、もともと結核などの感染症を見つける目的で広く普及してきた検査であり、現在では肺がんを含むさまざまな胸部疾患の早期発見にも役立っています。 そのため、「所見あり」と記載されていても、必ずしもがんを意味するわけではなく、実際には良性の変化であることも多くみられます。

ただし、「再検査」「要精密検査」といった判定は重要なサインです。特に精密検査が推奨されている場合には、自己判断で放置せず、早めに医療機関を受診することが大切です。

検査での肺がんの可能性の指摘について、呼吸器外科の専門医に聞いてみました。

健診のレントゲン検査で「要精密検査」となっても、必ずしもがんとは限りません。また「肺がん」と一言で言っても、レントゲンやCTに写る影の形や濃さは患者さんごとにさまざまです。「1年前は異常なしだった」という方でも今回新たに異常を指摘されることはありますし、画像上の影が小さく見えても、実際には意外と進行しているケースも存在します。

肺がんには進行が比較的緩やかなものもあれば急速に進行するものもあるため、毎年健診を受けていても全ての肺がんを早期に発見するのは難しいのが実情です。しかし、定期的に受診を続けることで早期発見の確率は高まります。もし早期の肺がんが見つかった場合、主な治療は手術になりますが、近年は小さな傷で行う胸腔鏡手術(VATS)やロボット支援下手術(RATS)が広く普及しており、体への負担は比較的少なくなっています。

「要精密検査」の判定は、ご自身の体を守る重要なサインです。自己判断で放置せず、必ず呼吸器の専門医が在籍する医療機関を速やかに受診しましょう。また、禁煙は肺がん予防のためにご自身でできる最も効果的な取り組みの一つです。ご自身の肺を長く健康に保つためにも、喫煙習慣を見直す良い機会にしていただければと思います。

大亀 剛(おおき たかし)先生

一宮西病院 呼吸器外科部長
資格:日本外科学会 外科専門医、呼吸器外科専門医合同委員会 呼吸器外科専門医