カゴメは6月10日、「全国一斉ナトカリ意識調査」の結果を発表した。調査は2025年4月18日~22日、血圧に関心のある全国の男女4,700名(20~69歳)を対象にインターネットで行われた。
「ナトカリ」とは
同社は「減塩」を続けながらも生活者に意識してもらいたいこととして、ナトリウムの排せつを促すカリウムを野菜や果実などから積極的に摂取する「ナトカリ」という考え方の普及に取り組んでいる。その一環として、減塩の継続の難しさを感じている生活者の実態と、それをサポートする1つの手段となる「ナトカリ」の認知度を明らかにするため、今回の調査を実施した。
「ナトカリ」の「ナト」はナトリウム、「カリ」はカリウムのこと。ナトリウムは、食塩の主成分であり、摂り過ぎは高血圧の原因となる。カリウムは、野菜・果物などの食べ物に多く含まれており、余分なナトリウムの体外への排出を促す。ナトリウムとカリウムの摂取バランス(ナトリウム/カリウム比)が「ナトカリ比」である。ナトカリ比と血圧は関連しており、ナトカリ比を低くすることが高血圧や循環器病の予防に有効であると言われている。食事のナトカリ比は、ナトリウムを減らすか、カリウムを増やすことで低くなる。食塩の摂りすぎに気をつけながら、カリウムを含む野菜や果物を積極的に摂ることで、ナトカリ比を意識した食生活を実践できる。
なお、腎機能が低下している人や、それらに伴う食事制限などでカリウム摂取を制限している人は医師との相談が必要となる。また、薬を服用中の人や通院中の人、あるいは栄養指導(食事指導)を受けている人も医師への相談が推奨されている。
減塩に取り組めていない人は約45%
全国47都道府県の4,700名を対象に、高血圧対策として推奨されている、減塩の取り組み経験についての回答を分析したところ、現在、減塩に取り組んでいる人は約30%と少数であることが分かった。さらに、「取り組んだ経験はあるが、現在は取り組んでいない」、「取り組もうと思った(思う)が、取り組んだ経験はない」という減塩"苦戦層"が、全体の約45%もいることがわかった。また、減塩の必要性について感じている人は約67%という結果になり、減塩に取り組む必要があると感じながらも継続できていない、あまり実行には踏み切れていないことが多い実情が明らかになった。
減塩に取り組んでいない理由
現在、減塩を意識した食事に取り組んでいない人にその理由を複数回答で尋ねたところ、上位には「味が物足りない」「塩分の計算が面倒」「食事制限でストレスがたまる」「味付けやレシピを考えるのが面倒」といった回答が挙がった。
これにより、減塩に対する味の不満や、減塩の食事を考えたり準備したりすることへの面倒を感じている人が多いことが分かった。
減塩が実践できない理由
減塩の取組経験がある2,068人に減塩を意識した食事を実施している(していた)タイミングを尋ねたところ、 「夕食時」が最も多く、朝・昼・夕の3食の中では、朝食時が最も少ない結果になった。
同時に、減塩を意識した食事ができない理由について、食事のタイミングごとに尋ねたところ、朝食・昼食では「時間がないから」、間食では「好きなものを食べたいから」という声が多いことが目立った。夕食は、他の食事と比べて減塩を実践している人が多い傾向にある。しかし実際には、「好きなものを食べたい」「美味しいものを食べたい」といった声も多く集まっている。減塩を意識しやすいはずの夕食でも、味付けの調整が必要だと分かっていながら、食事を楽しみたいという気持ちとの間で葛藤している様子がうかがえる。つまり、「減塩したいけれど、なかなか実践できない」という現実的な悩みが、日常生活の中に存在することが浮き彫りになっている。
また、食事の場面によって減塩が難しい理由は異なるが、全体としては「時間がない」「好きなものを食べたい」という理由が多く、この2つが減塩の実践や継続を妨げる要因となっていると考えられる。
「ナトカリ比」を知らない人は約8割
昨今、健康志向の高まりとともに、高血圧対策として「ナトカリ比」を意識した食習慣が注目を集めている。食塩の摂りすぎに気をつけながら、カリウムを含む野菜や果物を積極的に摂ることで、「ナトカリ比」を意識した食生活を実践する考え方が「ナトカリ」である。特に、減塩に苦戦しがちなタイミングにも意識しやすい高血圧対策として期待されている。
一方で、「ナトカリ比」の認知度を調査したところ、「知らない」と回答した人は全体の79.7%で、一方で「意味も知っている人」は6.7%とかなり少なく、認知度は低い結果となった。
今後「ナトカリ」を食生活に取り入れたい人は約77%
「ナトカリ比」を知った上で、これを意識した食習慣を今後取り入れていきたいかという質問に対して、76.9%の人が「取り入れたい」と回答した。さらに、減塩が難しいときに「ナトカリ」を意識した食生活を実践することで、減塩自体が続けやすくなると思うかという質問に対して、70.3%が「思う」と回答した。「ナトカリ」を取り入れたい理由としては、「手軽に実践できるから」「継続しやすそうだから」といった声が多く寄せられ、減塩が難しいと感じている層でも意欲的な姿勢が見られた。
摂り入れたいカリウム豊富な食材
カリウムは日常的によく使うとされる食材にも豊富に含まれていることがある。「カリウム摂取源として活用したい食材」を尋ねると、野菜では「トマト」、果物では「バナナ」、加工食品・飲料では「ヨーグルト」がトップとなった。いずれも、調理せずそのまま食べられる手軽な食材のため、減塩が難しい理由のトップである「時間がない」にも対応している。さらに、カリウムは水溶性であり、「茹でる」などの調理で流出されやすいことから、生食やそのまま食べられる加工食品を活用して生活に取り入れていくことも大切である。
「ナトカリ行動」の実践率
「ナトカリ比」を意識した食生活は普段の食事内で、少し習慣を変えることで実践することができる。カリウムの摂取量を増やすための行動、ナトリウムの摂取量を減らすための行動である「ナトカリ行動」の実践率を調査したところ、「ナトリウム減」行動としては、「味見をせずにむやみに調味料をかけない」「みそ汁は1日1杯とする」が多いことが分かった。「カリウム増」行動では、「野菜の付け合せを残さず食べる」の実践率が76%と最も高い結果となった。また、上位3つのうち2つが野菜に関する項目となっており、「カリウム増」行動の実践には、野菜摂取がポイントであることが伺える。
「ナトカリ」を意識・行動実践できている都道府県は?
日本国民の高血圧対策と食生活のつながりを明らかにするために、全国の食文化と健康意識の地域差に着目した。「ナトカリ比を意識した食生活を実践できているか」について尋ね、全国地域別に振り分けた結果、「実践できている」と回答した人の割合が最も高い県は、「長崎県」であることが明らかになった。
合わせて、「ナトカリ行動」(ナトリウムを減らす行動及びカリウムを増やす行動)の各項目のスコア平均を47都道府県で比較したところ、「ナトリウムの摂取量を減らすための行動」の場合1位は「北海道」、「カリウムを増やすための行動」の1位は「長野県」、という結果となった。さらに、総合結果として、最も「ナトカリ行動」を実践できている県民の割合が多いのは「長崎県」であり、「ナトカリ」を意識していることで、しっかり行動もできていることが分かった。
ご当地メニューや食材選びも影響か
さらに、「長崎県」の食文化についても尋ねた結果、ご当地メニューに「ちゃんぽん」や「皿うどん」が挙げられた。メイン料理や麺類、味が濃いものはナトリウムが多い傾向にあり、「ナトカリ比」も高くなりがち。その中でも「ちゃんぽん」や「皿うどん」はカリウムが含まれている野菜を具材として使用しているため、麺類の中では、比較的「ナトカリ」を取り入れやすいメニューといえる。地域のご当地メニューや普段のメニューにカリウムが多い食材である野菜をプラスすることで、「ナトカリ」を取り入れることができていることが伺える。
各地域での「カリウムが摂取できる食材」
カリウムを豊富に含む食材について、出荷量第1位の県別に紹介する。これらの食材の中には、郷土料理に使われるなど地域に根付いたものや、地元の人々に親しまれている食材も多く、住んでいる地域でよく作られている食材を知ることで、日々の食生活にも取り入れやすく、無理なくカリウム摂取の工夫をするヒントにもつながるとされる。