日本眼科医会が制定する6月10日の「こどもの目の日」記念日を前に、参天製薬は"小児近視"をテーマにしたプレスセミナーを開催。その対処法について眼科医が解説した。近視の進行抑制を目的とする参天製薬の「リジュセア ミニ点眼液0.025%」が有効な手立てのひとつとなるようだ。
子どもの将来のために
その冒頭、筑波大学の平岡孝浩氏が「小児近視とその治療選択肢」というテーマで解説した。文部科学省が発表している「学校保健統計 確定値」によれば、裸眼視力1.0未満の生徒の割合は年々増加している。「最新の令和6年度のデータでは、小学校では36.8%、中学校では60.6%、高等学校では71.1%という結果が示されています。また同省による令和4年度の実態調査によれば、近視の有病率は小学1年生で17.3%、小学3年生で31.2%、小学6年生で52.8%、中学3年生で62.6%と学年が上がるごとにその割合が増えています」と平岡氏。
小児近視の要因としては「遺伝」「近業」を挙げる。つまり親の近視と子どもの近視の関連性は高く、また読書、勉強、スマホ、ゲームなどで近くを見続ける近業が近視に関与している。逆に「屋外活動時間が長いと近視を発症しにくい」というデータも紹介した。平岡氏は「近視になるとQOL(生活の質、Quality of Life)が低下するだけでなく、大人になってから白内障、緑内障、網膜剥離などの合併症のリスクが増加する危険性もあります」と警鐘を鳴らす。
若くして近視を発症すれば、それだけ早く近視が進んでしまうが、早い段階で治療を施すことで「将来の近視の度数の軽減」および「眼合併症リスクの低下」が期待できる。「患者の個々の状況に合わせて、近視治療を選択する時代になってきました」と平岡氏。
ここで参天製薬の「リジュセア ミニ点眼液0.025%」(2025年4月21日発売)についても紹介した。同剤は、近視の進行抑制を目的とする日本初の点眼剤。通常1日1回1滴、就寝前に点眼する。有効成分はアトロピン硫酸塩水和物。ちなみに薬価基準未収載医薬品として販売するため、健康保険等の公的医療保険の給付は対象外となる(自由診療となる)。
同剤については「日本人の5~15歳の近視患者において近視進行抑制効果が認められた」と紹介。なお投与中止後、近視が急激に進行する可能性もあるため、近視の進行が安定する10代後半まで投与を継続することが望ましい、としている。
続いて、はら眼科 院長で日本眼科医会 常任理事の原信哉氏が「現在の近視を取り巻く環境と対策」について講演。小学校、中学校、高校の健康診断で「近視」と診断されても眼科を受診しない子どもたちが少なくないことに触れ、「どうせ近視でしょう、と放っておかれているのが現状です。私たちとしても近視の啓発の必要性を感じています」と原氏。
子どもが近視と診断されたとき、保護者は「どの程度まで近視が進むか分からない」「メガネ、コンタクトレンズがなければ日常生活で困るようになるかもしれない」ことに不安を感じているとし、「近視の進行を抑える治療法がない」と悩む親も多いと指摘。そこで4月に発売されたばかりの参天製薬「リジュセア ミニ点眼液0.025%」の効果に期待を寄せる。
このあと、眼科では近視を診断するために「屈折検査」のほか、「眼軸長検査」「眼底写真撮影」などを実施していると解説。また保険診療と自由診療の違いについても説明した。保険で認められる範囲内で診療する「保険診療」に対して、「自由診療」は医療機関と患者の間の契約に基づいて診察するもので、国内で未承認または保険適応となっていない薬剤や治療法を用いることができる。ただ同一の病気に対する一連の治療では、保険診療と自由診療を併用することは(原則として)禁止で、保険診療から自由診療に切り替える際は患者の同意が必要となる、と原氏。
日本眼科医会の活動についても紹介した。同団体では「はぐくもう! 6歳で視力1.0」をスローガンに、子どもの眼を守る啓発活動を展開中。保護者・教育者に向けて、あらためて目の大切さを伝えるとともに、健康啓発マンガ「ギガっこ デジたん!」、近視進行予防動画などを通じて、子どもたち自身にも目を大事にするよう呼びかけている。
最後に、しらね眼科 院長で日本眼科医会 会長の白根雅子氏が総括。まずは「近視はメガネやコンタクトレンズを使えば大丈夫、と思われている方も多いと思います。でも高い確率で、白内障、緑内障、網膜剥離などの合併症が起こり、将来の失明のリスクにつながります。地域で診療していると、10代でも眼底の視神経や網膜に変化が起きているお子さんをたくさん見かけます。人生100年時代を生き抜くため、子どもたちの近視の進行を防いでいく、これは眼科医の努めであり社会の責任でもあります」と話す。
そして「リジュセア ミニ点眼液0.025%」による治療がスタートしたことを喜ぶとともに、以下のように付け加える。「現時点では健康保険の適用に至らず、自由診療となっています。近視を矯正するためのメガネ、コンタクトレンズを処方する際にも自費となります。通常、子どもの医療費はほとんどが無料ですので、自由診療になるとご家庭の負担が増えます。こうしたことが治療の普及を妨げないよう、国民の皆さまには治療の有効性をお示ししていきますとともに、国に対しても理解を深めていただくよう活動を続けてまいります」。
日本眼科医会としては、6月10日の「こどもの目の日」にも様々なイベントなどを行い、引き続き近視治療、子どもの目を守る大切さについて啓発していく考えだ。