健康診断で「メタボ非該当」と判定されると、安心してしまう人は少なくありません。しかし、メタボリックシンドロームに該当しなくても、動脈硬化のリスクを高める状態が潜んでいることがあります。見逃されやすい“隠れ肥満”とその注意点について解説します。

なぜ“メタボ非該当”でも油断できないのか

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国内では40~74歳の医療保険加入者を対象に、特定健康診査(いわゆる「メタボ健診」)が実施されています。この健診は、内臓脂肪型肥満に着目し、動脈硬化に関連する疾患のリスクを早期に発見・予防することを目的としています。

ただし、メタボの判定は腹囲に加え、血糖値や血清脂質、血圧などの複数のリスク因子を組み合わせて行われます。そのため、メタボに該当しない場合でも、これらの異常が単独または複数存在すれば、動脈硬化のリスクが高まることがあります。

このように、「メタボ非該当」であっても安心できないケースがある点には注意が必要です。

BMIは万能ではない

肥満とは、体に脂肪が必要以上に蓄積した状態を指します。その判定にはBMI(体格指数)が広く用いられ、体重(kg)を身長(m)の2乗で割って算出します。日本では、BMIが25以上を肥満と定義しています。

ただし、BMIはあくまで統計的な指標であり、個人の健康状態を完全に反映するものではありません。BMIが25以上でも代謝異常がない人もいれば、25未満でも血糖や脂質に異常が見られる人もいます。

またBMIは筋肉量と脂肪量を区別できないため、筋肉質の人では過大評価される一方、筋肉量が少ない人では見逃されることがあります。こうした状態は「サルコペニア肥満」と呼ばれ、筋肉量の低下に加えて筋力や身体機能の低下を伴う点で注意が必要です。

内臓脂肪型肥満は見た目では分かりにくい

脂肪の蓄積部位によって、肥満は皮下脂肪型と内臓脂肪型に分けられます。このうち、血糖値や脂質、血圧に大きな影響を与えるのが内臓脂肪型肥満です。

内臓脂肪型肥満は見た目では分かりにくく、BMIが25未満でも該当する場合があります。日本の健診では、腹囲が男性85cm以上、女性90cm以上で内臓脂肪型肥満と判定されます。

さらに、境界型の高血糖や軽度の脂質異常などが重なると、動脈硬化が進行しやすくなり、心筋梗塞や脳卒中のリスクが高まります。

見逃されやすい肥満のサイン

BMIや外見から分かりにくい内臓脂肪型肥満やサルコペニア肥満は、“隠れ肥満”と呼ばれることもあります。

例えば、体重は変わらないのにウエストが増えた、疲れやすくなった、階段で息が上がりやすくなった、健診で「要注意」の項目が増えたといった変化が挙げられます。

特に「要注意」の項目が増えている場合は、健康リスクが高まっているサインと考え、早めの対策が重要です。

40代以降で起こりやすい体の変化

肥満の背景には加齢による変化が大きく関わります。加齢に伴い基礎代謝が低下し、身体活動量も減少することで、消費エネルギーが少なくなります。その結果、若い頃と同じ食生活でも体脂肪が蓄積しやすくなります。

また、女性では更年期におけるホルモンバランスの変化も体重増加に影響します。

さらに、加齢とともに筋肉量は減少し、筋肉内に脂肪が蓄積する「脂肪筋」の状態になることもあります。これらの変化はインスリンの働きを弱める(インスリン抵抗性)要因となり、糖代謝の悪化につながります。

重要なのは“体重”より“健康リスク”

肥満は健康リスクを高める要因ですが、肥満であれば必ず健康障害が起こるわけではなく、また肥満でなくてもリスクが存在する場合があります。

重要なのは、血圧や血糖値、血清脂質などの検査値を総合的に評価し、リスクに応じて適切に対応することです。健診で「要注意」や「受診勧奨」とされた項目があれば、早めに医療機関へ相談することが大切です。

「メタボ非該当=健康」ではない

特定健診・保健指導は2008年に開始され、日本人の健康管理に一定の成果を上げてきました。

一方で近年では、メタボに該当しないにもかかわらず、複数の動脈硬化リスク因子を持つ人の存在が課題として指摘されています。

そのため、健診結果が「メタボ非該当」であっても、異常値がある場合は「問題なし」と判断せず、生活習慣の見直しや受診といった行動につなげることが重要です。

「メタボ非該当」は、必ずしも健康であることを保証するものではありません。

注意が必要な肥満について、肥満症治療を行っている医師に聞いてみました。

メタボ非該当であっても安心できない理由は、見た目やBMIでは分かりにくい“隠れ肥満”があるためです。特に、加齢や運動不足で筋肉が減ると、体重が変わらなくても体の中では脂肪、とくに内臓脂肪が増えていることがあります。こうした状態は、血糖や脂質の異常を引き起こし、動脈硬化のリスクを高めます。

健診結果では、血糖値やHbA1c、LDLコレステロールや中性脂肪に加えて、肝機能のALTにも注目しましょう。ALTがやや高め(目安として30以上)の場合、脂肪肝や内臓脂肪の蓄積が隠れている可能性があります。

対策として大切なのは、体重を減らすというよりは、筋肉を保ちつつ内臓脂肪を減らし、体の中の状態を改善することです。甘い飲み物やお菓子などの間食を控えつつ、タンパク質を意識したバランスの良い食事と、スクワットなどの軽い筋トレを習慣にしていきましょう。体重だけでなく、体の中の変化に目を向けることが大切です。

伏見 宣俊(ふしみ のぶとし)先生

一宮西病院 内分泌・糖尿病内科部長
資格:日本糖尿病学会 糖尿病専門医 日本内科学会 総合内科専門医 日本消化器病学会 消化器病専門医