ビザ・ワールドワイド・ジャパンは6月4日、大阪エリアで実施している「大阪エリア振興プロジェクト」の1年間の現状に関する説明会を開催した。カードのタッチ決済が順調に増加し、特にスマートフォンを使ったタッチ決済では全国平均より大幅に増加。同社のシータン・キトニー社長は取り組みが成功していると強調した。
対面決済の半分以上がタッチ決済に
Visaは現在、日本でタッチ決済の普及に注力している。Visaカードを使った店頭での対面決済におけるタッチ決済の割合は、国によっては9割を超えている地域もあるが、日本ではこれまで4割超の普及状況だった。
しかし順調に拡大しており、2025年3月末の最新情報では、ついに利用率が52%に達し、5割を超えた。タッチ決済対応カードも1億4,900万枚を突破したこと、タッチ決済を利用できる人・場所が拡大したこと、認知が拡大したことなどが要因だろう。
特に日常で利用される加盟店でタッチ決済がよく使われており、2023年第1四半期と2025年同期を比較すると、コンビニエンスストアでは2.8倍、飲食店では5.5倍、ドラッグストアでは7.7倍、スーパーマーケットでは3.2倍と大幅に増えた。キトニー社長は、「タッチ決済が持続的に普及している」と強調する。
結果として、「普及率は今までになかったような成長率を実現した」(キトニー社長)。タッチするだけで決済できるという、シームレスで効率的な決済方法に利用者が移行していると話す。
大阪エリア振興プロジェクトの成果
そうした中で現在進められているのが「大阪エリア振興プロジェクト」。大阪・関西万博の開催もあって観光需要などで盛り上がる大阪エリアにおいて、タッチ決済のさらなる拡大を目指すという取り組みで、大阪を訪問する人たちの生活にタッチ決済を取り込んでいくことに加え、地域の利用者の心にも響く地域密着型のプロモーションによって、タッチ決済の手軽さと効率性をアピールして利用拡大を目指した。
すでに第6弾までのキャンペーンを実施しており、ジャンルごとのキャンペーンやイベントを実施。屋外広告キャンペーンも積極的に取り組み、大阪市内、主要駅、商業地域、ランドマークといったエリアに戦略的に展開。大阪地域限定のテレビコマーシャルも放映して認知度を高めた。
この結果、キャンペーンでVisa割に登録した人数は55万を突破。キャンペーンに2回以上参加したカード会員は、1枚あたりの決済金額が17%以上高くなり、「リピート利用や継続的なエンゲージメントを高めることができた」とキトニー社長。タッチ決済の取引は毎月300万件以上となり、キャンペーンによってタッチ決済ユーザーは平均2倍に拡大したという。
こうした取り組みによって、大阪エリアにおけるタッチ決済の利用率の伸びは全国平均より高くなった。タッチ決済対応のカードの利用率について、2024年4月と12月を比較した際に、全国平均が3%程度の伸びだったのに対し、大阪エリアでは109%となった(2024年4月を100とした場合)。また、モバイル端末での利用は、全国平均が146%だったのに対し、大阪では167%まで伸びた。
こうした利用拡大には、公共交通機関でのタッチ決済の利用拡大も貢献しているだろう。25年3月末までに41都道府県で170以上の事業者がタッチ決済対応について進めており、特に西日本での対応が進んでいる。公共交通機関におけるタッチ決済の件数は、全国平均では2倍ほどの伸びだが、大阪エリアでは7.5倍と劇的な増加になった、とキトニー社長。しかもその増加分の4割を大阪エリアが占めた。
インバウンド旅行者に対するアプローチも行っており、地方自治体と共同でのプロモーションも実施。大阪市以外の都市の魅力や名所などを紹介して誘客することで、観光促進に繋げ、地元事業者のビジネス支援や大阪市から観光客を分散させるオーバーツーリズムの軽減を図った。
こうした大阪エリアの振興プロジェクトで得られた知見は、今後のプロジェクトにも生かしていきたい考えで、キトニー社長は「大阪で貴重な気づきを得られた。将来的な取り組みに向けての底固めができた」と話す。こうした知見を踏まえて、地域への支援、地域再生などにフォーカスした次のプロジェクトに繋げていく計画で、近いうちに新プロジェクトも発表予定だという。