また、本作での役作りに関して、「19年間の空白を埋める作業」に難しさと面白さを感じたと語る。
「19年間どうしていたのか、どういったバックグラウンドがあってこのセリフにつながっているのか、そこを埋める作業にものすごく時間をかけています。自分だけでは難しいので、演出家や他のキャストと一緒に、毎回2~3時間、本読みという名の議論を何十回もやりました。その掘り下げは今も続けています」
続けて、「逆算的な考え方」で役を作るというのも、今までにない挑戦だったという。
「私は3年目からの参加で、作品として出来上がっていて答えがあるところから、私なりのハーマイオニーを作り上げていくという、通常はゼロから積み上げていきますが、今回はなんとなくゴールが見えているところから逆算して作っていきました。普段は自分の役を中心に考えていきますが、今回は俯瞰的、客観的な視点が必要で、その視点は今後の作品にも生かせるのではないかなと思っています」
本作では、ダブルキャストあるいはトリプルキャストで一つの役を演じているが、酒井は「自然とそれぞれのオリジナリティが出る」と感じたいう。
「最初は戸惑いがありましたが、稽古をしていく中で、通常通り、役を構築していけばいいと思うようになりました。もちろん見た目や声が違いますし、セリフは同じでも、ちょっとした解釈が人によって違って、そこでもオリジナリティが出るんだなと。ハリーもロンも、同じセリフを言っているのに皆さん違って面白いです」
キャストの組み合わせによる化学反応も本作の魅力だという。
「何通りも組み合わせがあって化学反応が生まれる。同じ作品でも違うものになるので、いろんな組み合わせを見る面白さもあると思います」
『ハリー・ポッター』を一緒に見ていたという長男は、今年の4月で高校1年生に。まだ本作を観劇していないそうで、「息子の方が『ハリー・ポッター』大好きなので、絶対見たいはずなんですけど、ちょっと反抗期で、母親が出演しているというのが恥ずかしいのだと思います。『お母さんのじゃないバージョンもあるよ』とは言っているんですけど」と笑い、「まだ上演は続くので、どこかのタイミングで見てもらえたら」と話していた。
1978年2月21日生まれ、静岡県出身。1993年に歌手デビュー。1995年公開の映画『Love Letter』で女優デビューし、日本アカデミー賞新人賞を受賞。1996年にフジテレビ系ドラマ『白線流し』で主演を務め、注目を集める。以降、数々のドラマや映画、舞台に出演。また、レギュラーラジオやナレーション、コラム連載、不二家の社外取締役など幅広い分野で活躍している。
『ハリー・ポッター』シリーズの作者であるJ.K.ローリングが、ジョン・ティファニー、ジャック・ソーンと共に舞台のために書き下ろした『ハリー・ポッター』シリーズ8作目の物語。小説の最終巻から19年後、父親になった37歳のハリー・ポッターとその息子・アルバスの関係を軸に描かれる新たな冒険物語は、世界中で多くの演劇賞を獲得している。2022年7月8日に開幕し、今年ロングラン公演4年目に突入する。