小泉今日子と中井貴一が主演を務めるフジテレビ系ドラマ『続・続・最後から二番目の恋』(毎週月曜21:00~ ※TVer、FODで配信)の第8話が、2日に放送された。

鎌倉の古民家へ越してきたテレビドラマプロデューサーの千明(小泉)が、その隣家に住む市役所職員の和平(中井)と出会い、和平の家族とともに恋や友情を育んでいく大人のロマンチック&ホームコメディ。第3シーズンとなる今作は、還暦間近の千明に定年を迎えた和平という、さらに円熟味を増した彼らの“今と未来”が丁寧に描かれていく。

今回は第1シーズンからずっと続いてきた真平(坂口憲二)の死と向き合う描写に区切りが打たれ、安堵する結末となった。ただ、よくよく振り返ってみると、この結末はそうであるに違いないと予想できていたはずなのに、どうしてここまで心を打ったのだろうか――。

  • 『続・続・最後から二番目の恋』第8話より (C)フジテレビ

    『続・続・最後から二番目の恋』第8話より (C)フジテレビ

一旦の終着点としてのエピソード

真平は幼い頃に脳腫瘍が見つかり、再発の可能性もあっていつ倒れてもおかしくないという“爆弾”=“死”を誰よりも身近に感じていた。それによって主人公を含む周りの大人たちが自由に自分らしく“生きる”ことがより強調され、真平はある意味このドラマにおける支柱のような存在だった。

だが、スペシャルドラマを挟んだ第2シーズンでは、真平の“死”の描写は残りつつも、第1シーズンと比較すれば鮮明ではなく、油断はできないことには違いないが、“何も起こらない”今作の世界観へと埋没していくようにも思えた。つまり真平の“死”は誰にでも起こりうることとして真平のプロフィールの一部としてだけ残り、そこから大きく展開されることはないのではないかと思ったのだ。

しかし、今回の第3シーズンでは、千明と和平の年齢が大きく上昇したことで、否が応でも真平と共に“死”は描かざるを得ず、その一旦の終着点として今回のエピソードが用意されたのだ。

テレビドラマにおける“死”とは、お涙頂戴の道具になりがちだ。にもかかわらず、このドラマではすんなり、自然と心を打たれてしまった。それができたのは、やはり先に述べた通り自由に“生きる”大人たちとの対比があり、そして第3シーズンにおける“死”の描写が必然となったことで大きな説得力をもたらしたからだろう。

登場人物たちがクライマックスへ動き出す

このシーンでは、真平の告白を見せる前段階で深刻さを煽ることもなく、むしろ真平と妻・知美(佐津川愛美)を除いた長倉家と千明が“パーティー”を待たされる。そして、ここで楽しい会話劇が交わされるという粋なワンクッションが挟まれることで、ここまで意味深につないできた真平の“何か”がきっといい報告に違いないと思わせる…という道筋も清々しかった。

何より、このドラマの登場人物たちと視聴者は家族のようなものだ。だから、それが物語だと分かっていても、真平から死の影が消えたことは、自分事のようで、シンプルにうれしい。その土壌が13年というシリーズの歴史の中で育まれてきたのだ。

そして、真平の一区切りによって登場人物たちそれぞれがクライマックスへ向けて大きく動き出した点も巧みだった。典子(飯島直子)は本当の自分を見つめ直したことで新しいチャンスが舞い込み、万理子(内田有紀)はようやくこん身の企画書を書き上げ提出することを決意。和平は市長打診の答えを持ち、千明もまた万理子の企画書を読み終え何かを思い…と、それぞれの事象は小さいけれど、大きなうねりのようにも感じさせるドラマがまだまだ満載だ。

最後までどうなってしまうのか、やはり予想ができない。

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