映画『父と僕の終わらない歌』(公開中)で寺尾聰とともに主演を務めた松坂桃李にインタビュー。寺尾の息子役を演じて得たかけがえのない経験について語ってもらった。

  • 松坂桃李

    松坂桃李 撮影:辰根東醐

本作は、アルツハイマー型認知症を患い記憶を失っていく父・間宮哲太(寺尾聰)と、父を支え続ける息子・雄太(松坂桃李)の日々を描いた物語。世界中を感動させたイギリスの実話を元に、日本の横須賀に生きる父と息子に置き換え、父が若き日に諦めたレコードデビューの夢を再び叶えようとするまでを描く。

寺尾と松坂はこれまでも共演はあったが、親子役は初めて。雄太としての役作りについて、松坂は「寺尾さんの息子役として、ちゃんと自分がその空気に馴染めるようにということはすごく心がけました」と明かす。

「寺尾さんのお芝居に対して、ちゃんと僕自身も呼応するような柔軟さを身につけていかないといけないなと。親子役だからこそ、パーソナルスペースまで飛び込めるぐらいの感情の振れ幅をしっかりと持つように意識しました」

そして、「現場の空気は寺尾さんが作られていた印象があります」と振り返る。

「本当に穏やかに、フランクに、どの人にも分け隔てなく、俳優部以外の人とも接していて、その柔らかさがどんどん現場全体に広がっていくような、温かい空気がずっと流れていました」

寺尾との歌唱シーンも本作の見どころだが、松坂は「真横で寺尾さんの歌声を聞けるなんて本当に贅沢でした。寺尾さんが役者として歌を歌う姿を見るのも僕は初めてだったので、すごく貴重な時間でしたし、新鮮でした」と感激した様子だった。

また、寺尾演じる父・哲太、松坂慶子演じる母・律子について、「あんな両親に育てられたら、それはもう幸せだろうなと思います」と笑顔を見せる。

「遊び心を忘れない父親と、それを包み込んでくれるような寛大な温かさを持った母親という、その2人に育てられた子供というのは、清らかな心を持つと思います。このお2人だからこそ、心配にもなるし、寄り添いたくなるような、そういう愛嬌のある2人だなと思います」