テレビ画面を注視していたかどうかが分かる視聴データを独自に取得・分析するREVISIOでは、18日に放送されたNHK大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(総合 毎週日曜20:00~ほか)の第19話「鱗の置き土産」の視聴分析をまとめた。

  • 『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第19話より (C)NHK

    『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第19話より (C)NHK

「ああいうのが大奥で毒盛ったりするんだろうな」

最も注目されたのは20時39分で、注目度77.7%。誰袖(福原遥)が今際の際をさまよう大文字屋市兵衛(伊藤淳史)に、蔦重(横浜流星)による身請けを許す遺言書を強引に書かせるシーンだ。

桜が舞う九郎助稲荷で、蔦重は鱗形屋孫兵衛(片岡愛之助)の店がうまくいくよう願っていると、背後から誰かが手を重ねてきた。誰袖だった。神聖な場所で戯れる誰袖を非難する蔦重だが、九郎助稲荷(綾瀬はるか)は蔦重が瀬川(小芝風花)と逢瀬を重ねていたことを知っている。

「だってわっちら、夫婦になりんしたゆえ」誰袖が胸元から取り出した証書には、蔦重が500両で誰袖を身請けを許す、と大文字屋市兵衛の名で記されていた。誰袖は死の床に伏せる市兵衛を無理やり起こして書かせたようである。あきれた蔦重をよそに、「500両…500両…500両」とつぶやく誰袖を残して、蔦重はその場を去った。「ああいうのが、大奥で毒盛ったりするんだろうな」女の情念の恐ろしさを垣間見た蔦重であった。

  • 『べらぼう』第19話の毎分注視データ推移

「かわいいのにやってることがエグい」

注目された理由は、目的のためには手段を選ばない誰袖に、視聴者がドン引きしたと考えられる。

蔦重に猛烈アプローチをかけたり、花魁道中で堂々とした風格を見せつけたりと、その言動が何かと話題となる誰袖だが、今回は危篤の大文字屋市兵衛にムチを打って遺書を書かせるという暴挙に出た。

振り切った誰袖の行動にSNSでは、「誰袖ちゃん、かぼちゃさまの寿命短くしてない?」「かわいいのにやってることがエグい」「強引すぎて笑えるけど笑えない」といったコメントが集まった。また、「これ真田丸でも何回か見たやり方だ…」「石田三成みたいな真似してるやん」と、2016年の大河ドラマ『真田丸』の豊臣秀吉に遺言を書かせるシーンを思い出した視聴者も多かったようだ。

突然背後から抱きついてきた誰袖を、「お稲荷さんの境内でこんな!」と蔦重はたしなめたが、実は九郎助稲荷は、五穀豊穣、諸願成就のほかに縁結びのご利益もあるといわれており、女性の様々な願いをかなえてくれると伝えられていた。なので誰袖の今回の振る舞いは、むしろ理にかなったものであると言える。

吉原でもっとも下級の河岸見世から一代で吉原有数の大店へとのし上がった市兵衛だが、惜しくも今回で退場となった。史実では大文字屋は市兵衛の姪・まさを妻に迎え養子となった二代目・市兵衛が後を継いだ。天明期に狂歌が流行すると、狂名「加保茶元成」を名乗り、蔦屋重三郎「蔦唐丸」、扇屋宇右衛門(山路和弘)「棟上高見」、りつ(安達祐実)の夫である大黒屋庄六「俵小槌」とともに吉原連を結成し、自ら主宰として、逍遥楼と名付けた別宅で狂歌会を催した。歌集として『上餡集』を残している。また、初代は園芸を好んだが、二代目は古銭の収集・鑑定家として有名だった。