伊藤園お~いお茶杯第66期王位戦(主催:新聞三社連合、日本将棋連盟)は、藤井聡太王位への挑戦権を争う挑戦者決定戦の永瀬拓矢九段―佐々木勇気八段戦が5月22日(木)に東京・将棋会館で行われました。対局の結果、角換わり腰掛け銀の研究勝負から抜け出した永瀬九段が125手で勝利。懐深い指し回しで藤井王位との6度目のタイトル戦にたどり着きました。
最先端の研究勝負
公式戦14局目となったライバル対決(これまで永瀬九段の10勝3敗)は振り駒で先手となった永瀬九段が主導権を握る展開に。相腰掛け銀に進んだのち単騎の桂跳ねで局面を打開したのは角換わりにおける主流な定跡のひとつで、ハイペースな指し手からは両者の研究の深さがうかがえます。昼食休憩に入った段階でその指し手は73手を数えていました。
初めてまとまった時間を使ったのは後手の佐々木八段。9筋の端攻めに手段を求めたのは前例のある手で、直後の永瀬九段の香打ちをきっかけに二人の戦いが始まります。佐々木八段の持ち時間がみるみる減っていくなか、永瀬九段が金頭に歩を叩いた場面がハイライトとなりました。叩きに対して金を引かれる手が永瀬九段の想定手で、感想戦ではこれなら難解だったとの結論に。
懐深い快勝譜
実戦で選ばれた金上がりは手番を取りつつ反撃に期待するものですが、佐々木八段は局後この構想を後悔することに。数手後に先手の方から玉を上がって銀取りを受ける力強い受けの好手が待っており、これを軽視した格好の佐々木八段は「手がないんですね、形勢判断が悪かった」と振り返って肩を落とします。ここからは永瀬九段の独擅場となりました。
終局時刻は20時0分、最後は自玉の詰みを認めた佐々木八段が投了。佐々木八段をして「研究不足だった」と言わしめた永瀬九段の深い研究とその後の手厚い指し回しが光る一局となりました。挑戦者決定リーグから数えて6戦全勝で挑戦権を獲得した永瀬九段は七番勝負に向け「拮抗したスコアになるよう頑張らないと」と謙虚に語りました。第1局は7月5日(土)・6日(日)に愛知県小牧市の「合掌レストラン大蔵」で行われます。
水留啓(将棋情報局)